オランダで活動する若手サクソフォン奏者。9歳でサクソフォンをはじめ、1992-93年にはアメリカにもわたり、ノースカロライナのスクールバンドに参加していました。アムステルダム音楽院でアルノ・ボーンカンプに師事、ストックホルム王立音楽院ではクリステル・ヨンソンに、2002年にはジャン=マリ・ロンデックスに師事しました。このほか、ジャン=イヴ・フルモー、須川展也、ジョン=エドワード・ケリー、クロード・ドゥラングルなどのレッスンを受けています。アムステル・サクソフォン4重奏団のソプラノ奏者として活動するほか、2004年には Friends of the Concertgebouw and the Concertgebouw Orchestra の称号を得、ソロ、オケへの客演など多彩な活動を行なっています。最近では師匠ボーンカンプと、ヒンデミットのデュオを録音しています。
伴奏者のファン=クラヴェレンの作品を含むリサイタル・アルバム。プーランクやラヴェルのソナタが含まれているのが目新しいところでしょうか。シュリンクスは無伴奏ではなく、ピアノが入った珍しい演奏。ボノーではことさらアクロバティックな面を強調せず、肩の力が抜けた自然体の演奏になっています。どの曲も奇をてらわず、正攻法の音楽作りに徹しており、ヴィヴラートの少なめな音色とあいまってやや地味に聴こえますが、その裏に演奏への自信が感じられます。デビューアルバムにありがちな気合先行型ではなく、内容を伴ったアルバムであり、次のアルバムが早くも楽しみです。
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サクソフォンのソロまたはテープを伴奏にした曲を集めたアルバム。なかでも、最近欧米で人気が高まっているフェルドハウスの曲が3曲含まれています。人間の肉声をコラージュしたテープにあわせて演奏されるこれらの曲は、師匠であるボーンカンプも演奏しており、ポップでキャッチーな、ロックのようなジャズのような不思議な躍動感をこの演奏からも感じることができます。2曲含まれているグラスの作品やローバの作品では、音形の積み重ねが無限に変化していく様子を十二分に表現しており、聴いているうちに鏡の迷路に入り込んだ気分。ポップなフェルドハウスとの対比が見事です。一方で、ターネジのメロディの奥に、深い感情の動きを感じることもできました。
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2008/4に右手を怪我するという、サクソフォン奏者にとっては致命的ともなりかねない事故に見舞われたメレマ氏だが、リハビリを続けられたのでしょう、復活されての録音がこのアルバム。ジャケ内には痛々しい包帯姿もありますが、それでもこのようなアルバムを出すことができるまでに回復されたのは、おそらく相当にリハビリに励まれたのでしょう。
メレマとピアノのエイサッカーによるインプロヴィゼーションを挟んで、メレマまたはこのコンビに捧げれらた曲が小品が多く収録されています。しかも作曲が2008年のクレジットが多いのは、手の負傷の後、演奏活動のために委嘱した作品なのでしょうか。比較的平易な曲もありますが、音の一つ一つに深みを感じます。
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