1959年12月、オランダのアムステルダム生まれ。1982年、ローマでイベールの小協奏曲を吹いてソロ・デビューしました。以来、グラズノフ、ミヨー、ドビュッシーといったサクソフォンのベーシックなレパートリから、現代作曲家の委嘱作品まで吹きこなしています。アウレリア・サクソフォン4重奏団のテナーとしても有名です。
アムステルダムのスウェリンク音楽院でエド・ヴォガートのクラスを1986年に卒業後、ダニエル・デファイエやJ=M.ロンデックスに師事する一方、野田燎、ベリオ、シュトックハウゼンといった作曲家を訪ねて親交を深め、現代音楽を積極的に理解しようとつとめています。現在、オランダ・エンシードのトゥエンテ音楽院でサクソフォンを教えており、1995年にはスウェリンク音楽院の教授に招かれています。
日本へも何度か訪れており、須川展也とのジョイント・リサイタルを行なっています。1997年の来日の際には、サクソフォン・フェスティヴァルでローバの作品を演奏して聴衆を圧倒しました。どの曲も愛着を持って演奏し、その結果派手なポルタメントをかけたり音を割ったりする場合もありますが、それはあくまで表現意欲の結果であって、無個性な演奏よりもよほど前向きです。
以下にご紹介したアルバムの他、ワールド・サクソフォン・オーケストラのアルバムにソリストとして参加した録音、クリスチャン・ロバの作品集があります。
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ボーンカンプ27歳の録音。写真も若くて、まだかわいいです(笑)。最近のアルバムに比べて、やや音が堅いようにも感じますが、しかしどの曲も完成度が高く仕上がっています。初録音とされる伝説が、特に気合の入った演奏。ガヴァンボディはロンデックスの演奏がカンロク充分なのに対して、ボーンカンプは果敢に挑む青年、という演奏。鮮烈さではボーンカンプに軍配。デニソフは、もう少し切れの鋭さがほしかったな。
現在はこんなCDジャケットになっています。
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BVHAAST からリリースされた、サクソフォン・ソロのための現代曲集。国内ではなかなか入手が難しく、見つけたら即ゲットをお薦め。作曲者との親交も深いインプロヴィゼーションが 1から3まですべて収録されいて、この作品の「日本らしさ」を適度にアピールしつつこれはかなり聴きごたえあります。一方、ベリオや友情にはさらに研ぎ澄まされたテクニックがほしかったです。圧巻は、最後のハード。曲のタイトルどおりハードなパッションに圧倒されまくり、最後まで息つく暇もありません。
なお、このCDの入手にあたっては、小野沢氏にお世話になりました。ありがとう!
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Vanguard レーベルからの1作目は、オーケストラをバックにしたアルバム。アルバムタイトルは An American in Paris のモジりです。定番曲だけでなく、ケクランやカプレの珍しい曲も収められてますが、中でもグラズノフの協奏曲とイベールの小協奏曲は完成度が高く、他の数多い録音と比べても素晴らしい。ケクランのソナタも地味な曲ですが、なかなかいいな。クラシック・ファン向けオススメアルバムであります。他のアルバムに比べると、ややおとなしい気もしますが、随所に個性も感じられます。私はアウレリアSQのリサイタルで、このCDにサインをしてもらいました<自慢(笑)。
なお、2003年にこの音源他を転用したCD「Classic Saxophone」が廉価盤Brilliantレーベルからリリースされました。市場価格は2枚組で\1,000以下と思われますので、まだこのCDを未入手の方はこの機会に是非!ジャケットはこちら。
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再び、相棒イヴォ君とのコンビでのレコーディング、ジャケの写真も悪ガキ2人が楽しそう、って感じです。12の小品をほぼ作曲年代順に並べてます。どの曲も文句ない出来ですが、中でもヴィドーフのはかないワルツ、イトゥラルデの小さなチャルダッシュ、アルバムタイトルにもなっている悪魔のラグは絶品です。小さなチャルダッシュはや武藤氏やジャクミーン・ルクも録音していますが、ボーンカンプの演奏を聴くと他の演奏はちょっと聴けません。悪魔のラグに至っては茶目っ気全開! 来日時にもアンコールピースに演奏してましたが、絶好調でとばすボーンカンプ氏に某伴奏氏が大汗かきながらついていった(結局おいつかなかった)のを思い出しました。
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シュルホフ、ミハロヴィッチ、タカーチといった比較的珍しい作品を取り上げたアルバムですが、選曲はあくまでボーンカンプ君が吹きたくて選びました、という雰囲気がよく出ています。アルバムタイトルになってるシュルホフのホット・ソナタや最後の2つの幻想曲は特に演奏に気合が感じられます。響きは現代的ですがとてもわかりやすく演奏されており、ゲンダイオンガクがキライな方も、聴いてみてはいかがでしょうか。ただひとついただけないのは、ジャケの写真。使い回しの写真の、楽器の部分から火を噴き出ているというモノ。このセンスはなぁ…
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フランスの定番曲を集めたアルバム、と思いきや、ケクランのエチュードやガロワ=モンブランの6つの練習曲などちょっとひとひねりのある選曲になってます。物語やスカラムーシュは、もっと暴れてくれるかと期待したのですが(笑)、彼にしてはあまり小細工をせず、ストレートな音楽表現になっていて、好感を持ちました。これが、猫をかぶってるせいなのか、それともひとかわ剥けたのか?
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クラリネット、ホルン、ヴァイオリンの作品からの編曲集。どの曲も、あたかもサクソフォンのために書かれた曲のように響きます。クラリネットの作品は、音域を原曲よりオクターヴ下げていますが、フィスターの演奏が、あくまで原曲がクラリネットことを念頭に解釈されているのに対して、ボーンカンプの演奏は作品を再構築して新しい作品として解釈しているようです。私としてはフィスターの方が好きなのですが、まあこれは好みの問題でしょう。フランクのソナタは演奏時間が30分近くにもなる大曲ですが、古典的な曲の構成感をしっかり保ちながら、熱いパッションがじわじわ伝わってきて、感動的。サクソフォン・ファン以外の方にも、積極的にオススメしたいアルバムです。
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Ottavoレーベルからのリリースとなったアルバムは、1867年にアドルフ・サックスにより製作された楽器を用いての録音で(ちなみに伴奏のピアノはターベルグ製1846年のものです)、プログラムも当時の曲またはファン=クラヴレンによる当時にちなんだ曲を揃えています。ジャケットの色彩がセピア調なのも、当時をイメージさせようとする効果かな? ノンヴィヴラートで演奏されており、Devil's Ragに現代の楽器を用いて収録されているオリジナルの主題による幻想曲や間奏曲の響きの差を比較するとおもしろいでしょう。今の楽器より音が素朴で、サクソフォンは金属製木管楽器であるという認識をあらたにしました。楽器の開発者であるアドルフ・サックスは、はたしてサクソフォンが現在のような雄弁な楽器になることを想像していたのでしょうか??
ボーンカンプの演奏は構成感と音楽の愉悦感を両立したすばらしいものですが、一部を除いて曲そのものに魅力が満ち溢れてるとは感じなかったのも確かです。資料的側面の強い好事家向けのアルバムといえるでしょう。もちろん、ボーンカンプのチャレンジ旺盛かつ完成度の高いアルバムを世に問う姿勢には感服です。
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1920〜30年代のドイツの曲を集めたアルバム。同様なアルバムはルンテによる3枚の録音がありますが、こちらのアルバムでは多彩な編成でヴァラエティ豊かな選曲になっています。7年ぶり2度目の録音となるホット・ソナタは、1回目ほどの暴れん坊ぶりはありませんが、しかし随所に飛び出すいたずらっ気は相変わらずで、聴いていて嬉しくなってしまいます。3重奏曲は、ヒンデミットのコンチェルト・シュテュックは弟子でもあるティエス・メレマとの2重奏。さすが師弟、よく息が合っており、飄々としたヒンデミットの雰囲気がよく出ています。アルバム最後にヴァイルのこの曲を配置したのは、一種の皮肉でしょうか(笑)、曲の隅々に仕掛けられた毒を、悪ノリ寸前で演奏しているのは、さすがボーンカンプ。しかし一番聴き応えがあったのは、このアルバムで諧謔的な要素の薄い5重奏曲でしょう。弦楽4重奏+サクソフォンというフォーマットを使って、ブッシュがサクソフォンをクラシックの楽器として位置付けようと一生懸命になっているのに、ボーンカンプとユトレヒト弦楽4重奏団が応えようとしている様子が伝わってきます。
Ottavoレーベルに移ってから、華やかな音色から幾分落ち着いた音色に変わったような気がするのですが、前作はともかく、今回は楽器が変わったのでしょうか。ブックレットには、ボーンカンプ氏のアンティーク・サクソフォン所有リストなども載っていたりするのですが、実際に楽器を使用しているのかはわかりませんでした。。
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20世紀初め、サクソフォンのレパートリー開拓のスポンサーであったエリザ・ホール夫人の委嘱によって書かれた作品を集めたアルバム。オーケストラをバックにしたアルバムはA Saxophone in Paris以来10年ぶりですが、意外にもカプレの伝説が重複しているだけで、他は初の録音になります。おそらくヴィンテージの楽器を使っており、以前のような輝かしい音色とは若干方向が違いますが、それでも音楽に対する思い入れ/表現とテクニックの両立は相変わらずで、さらにこのアルバムでは、さらに音楽としての安定感、様式感が増したように感じます。どの曲も100年を超えて生命力溢れるこれらの曲に、ボーンカンプは魂を空に解き放つようなみずみずしさを添えて演奏しています。スペイン風嬉遊曲あたりではもう少し軽快さを前に出してもよかったのでは、とは思いましたが、これはあくまで個人の趣味。カプレやシュミットの曲で感じることのできる、エキゾチックさを秘めたしみじみとした音色では、思わずため息をついてしまいました。
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オランダの演奏家によるイベールの室内楽作品集をご紹介。このアルバムに、ボーンカンプが1曲参加しています。イベールといえば、サクソフォン奏者にとっては小協奏曲があまりに有名ですが、他にも室内楽の小品を数多く書いていて、このアルバムでは有名な間奏曲をはじめ、イベールらしさがあふれる弦楽4重奏曲や即興曲といった隠れた名曲がおさめられてます。演奏がもう少しよければ、という個所もありますけどね。ボーンカンプの演奏する黄金時代は、ルビンシュタインの委嘱で書かれたバレエの音楽を作曲者自身が抜粋編曲したもので、もともとドンキホーテがギターにあわせて踊るシーンで演奏されます。メロディラインの美しさに、ボーンカンプの音色がマッチしていて、いい雰囲気。とはいえ、小品1曲のみの参加なので、熱烈ボーンカンプ・ファンか、フランス音楽大好きな方にのみおすすめ、としておきましょう。
なお、私が持っているのは Vol.2 と題した一枚ですが、最近は Vol.1・Vol.2 をセットにして安く売られているようです。
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赤い鳥(ガチョウ?)のジャケットが鮮やかなCD。1952年生まれのポール・テルモスは、作曲家であると同時にサクソフォン、特に即興を得意とする奏者でもあり、このCDにおさめられているサクソフォン協奏曲では無理なく楽器の特性を効果的に発揮できるように書かれています。どの曲でも限られた音や音形が執拗に繰り返され、耳に焼きつきます。ボーンカンプの演奏は録音のせいかやや音色がふだんと異なるような気もしますが、一本筋の入った力演であることは確かです。
テルモスは、このほかにもテナー・サクソフォン、ピアノとパーカッションのための「1991」という作品も書いており、これからもサクソフォンのための興味深い作品を生み出していくのでは、と期待されます。
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もうひとつおまけに、ボーンカンプの名前がソリストとしてクレジットされているアルバム。メッツマッハーの振ったハルトマンの交響曲集は国内盤でセット売りにもなっていますが、カップリングのおもしろさからドイツ盤を購入しました。ハルトマンの2番はバリトン・サクソフォンの目立つソロがあるという珍しい作品。ボーンカンプがバリトンの中音域で奏でる、淡々としかも切々としたメロディは、時間も場所も超えた不思議な響きがして、思わず惹きこまれてしまいました。ちなみに5番は管楽器を主体とした編成で演奏されており、管楽器ファンにはなかなかたまらないアルバムといえるでしょう。メッツマッハーの明晰な指揮ぶりはカップリングのツィンマーマン、ストラヴィンスキーでも冴えまくっており、バラ売りを買ってよかった、と思う一枚でした。
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1951年オランダ生まれの作曲家、ヤコブ・ター=フェルドハウスの1990年代後半の作品を集めたアルバム。ゲットー・ブラスター(=テープ)による言葉やサンプリングを駆使した、楽音と絡ませて生まれる独特のエネルギーに満ちた作品ばかりです。クラシックというよりは、ロックやジャズに近いかも。1曲目のボーンカンプによる Glab It ! から、そのパワーは炸裂。なんでも、ボーンカンプの演奏するクリスチャン・ローバのハードを聴いて、さらにハードな曲を作ろうとしたのだとか、、もう、この1曲のグルーヴ感にやられました。最後のアウレリアSQが参加したピッチ・ブラックも、独特のパワーに支配されています。最後にジャズ・プレーヤだったチェット・ベイカーの肉声がサンプリングされ、不思議な感覚に襲われました。ほかの曲も、作曲者の強烈な個性に裏打ちされたものばかり。
なお、作曲者名を当初ベルデュースと記していましたが、数箇所でフェルドハウスとの表記を確認したため、書き改めました。オランダ語って、難しい。。
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