フルモーは、ミュールの流れを汲む現役奏者として、日本でもっとも知名度が高い奏者といって過言ではないでしょう。ソリストとして、またジャン・イヴ・フルモー・サクソフォン4重奏団のリーダとして、世界中で演奏活動を行っています。ミュールのヴィヴラート奏法を現代的にした、明るい音色が特徴で、どんな曲を吹いてもその驚異的な技術力は揺るぎありません。
17歳でパリ国立音楽院を主席で卒業してしまったという経歴を持ち、その後ラジオ・フランスのソリストとなり、現在ではフランスのみならずアメリカの大学で客演教授として迎え、後進の育成にも余念がありません。たびたび来日しており、以下にご紹介するアルバムは日本人の伴奏者によるものです。
なお、現在ヤマハのサポート・ミュージシャンとして、主に同社の YAS-875 を使用しています。
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1991年来日時に録音したCDで、フランスの作曲家によるオリジナル作品を集めています。フルモーによる演奏を聴いていると、これらの作品がどういう音色を想定して書かれていたかがわかるような気がします。もっともセクエンツァは、ドゥラングルに采配があがるかな。しかし、どの曲も模範演奏としても立派で、サクソフォン奏者は一度はこのアルバムを聴くべきでしょう。また、長尾洋史による伴奏も特筆もの。
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Rene Gailly レーベルからリリースされたソロCDで、比較的軽めの曲が並んでいます。が、演奏の方も軽いかといったら大間違い、みごとなテクニックで吹いてます。あ、もちろん軽さやエスプリもしっかり。バスクはだんだん難しくなるフレーズも顔色一つ変えずに(もちろん顔は見えないですけど)吹ききってますし、浜辺の歌など、小細工せずに歌い上げていて感動的です。
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アメリカ、フランス、カナダの作曲家による作品を集めたCD。パスカルやサンカンの録音は、ありそうでなかなかないだけに、貴重です。演奏の方も相変わらずの内容で、技術的に不安を感じるところはまったくありません。クレストンは、もう少し力を抜いてもよかったのでは、と思いますが、サンカンやベーダルの不思議な和音進行をきっちり表現している点は舌を巻きます。
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Coreliaレーベルからリリースされたアルバムは、収録曲をみておわかりのとおり気合の入った内容。録音のせいか、Rene Gailly のものよりやや鋭い、切れ味のよいサウンドが印象的です。演奏そのものも切れ味がよく、グラズノフの中間のカデンツァでは聴いたことのないような速さに驚かされました。イベールではさらに軽やかさが欲しい気もしますが、もしかしてオケに脚を引っ張られている?リュエフの録音ははじめて聴きましたが、私はおもしろいと思いましたが、実演では苦労のわりに演奏効果が薄い(報われない)気もします。
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久しぶりのソロアルバムですが、選曲もドビュッシー、デクリュク、フランクと徹底してフランスの香りを感じさせる内容。もちろん、演奏は期待を裏切らない華やかな音色と正統的な解釈で、安心して聴くことができます。目新しい内容はありませんが、アグレッシヴに音楽を追求する姿は健在。やや知名度の低いデクリュクのソナタを、夢見るような美しい響きで満たして聴き手を幸せな気持ちにさせてくれますし、フランクのソナタでは音の選び方は慎重なようですが、サクソフォンによる演奏でこの曲のほろ苦さを感じて、新鮮でした。上手に齢を重ねているフルモー氏、この先の活躍をまだまだ期待できそうです。
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2008年の来日の際の、東京公演のDVD化です。この公演、諸事情により聴きにいけなかったので、こうしてリリースされ当日の様子をうかがうことができるのは実にありがたいです。華やかでときに甘い音色、確実なテクニックは、おそらく日本の多くのクラシカル・サクソフォン奏者にとって、理想のあり方に現在最も近い位置ことは間違いないでしょう。特にパスカルやデザンクロのような、確実なテクニックに加えてフランス系の曲独特のテンションを必要とする曲では、フルモー氏の雄弁な演奏は替え難い存在感、平たく言ってしまえばオーラがあります。
後半は日本人の弟子たちを従えての演奏になりますが(弟子といっても上記のとおり日本で大活躍中の若手奏者ばかり)、なんといっても圧巻はイベールでしょう。ロンデックス編のサクソフォン・アンサンブル伴奏による演奏ですが、クラシカル・サクソフォン奏者にとってバイブルというべきこの曲、当然ソリスト以外のメンバーもこの局を熟知しているだけあって、曲の持っている精緻でメカニカルな部分が細部まで表現されきっています。小アンサンブルによる原曲版の伴奏部分、かなり難しくてたいていどこかがぐじゃぐじゃになってたりするんですよね。。完璧な伴奏の上で、さらに自在に展開されるフルモー氏のソロ、きっとイベールはこういう曲を書きたかったんだろうな、と思わせる、曲の核心に迫った演奏と感じました。
アンコールは、1曲目は映画音楽らしく、2曲目はジョアン・ジルベルトとスタン・ゲッツを意味すると思われるタイトルどおり、ボサノバ調の軽い響きが印象に残りました。
個人的な意見としては、一般的な音楽の鑑賞には映像は不要と思っているのですが、自ら楽器を手にする身としては演奏映像は参考になる点も多くあります。いろいろな意味で、クラシカル・サクソフォンに携わる方には見ていただきたいDVDです。
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DENONレーベルからリリースされた、クリヴィヌ指揮リヨン管によるドビュッシーの管弦楽作品第3集。サクソフォンのソリストは、と見てみると、日本語で「ジャン・イヴ・フルノー」と記載が。うーん、フルモーの「M」が「N」と原語表記されているのを、そのまま間違って日本語にしてしまったらしい。知人のT氏も web 日記で書いていたが、ライナーにはソリストの紹介がなく、まったくもって残念。フルモー以外にも、ピアノのフィリップ・コラール、ハープのアンナ・ジュス、クラリネットのスゾーと、現役フランスの一流どころが集まっているのに。。。(もうひとつ、録音からリリースまで6年近くもかかったのは、なぜ??)
気を取り直して聴いてみると、全体にオケの響きはインターナショナルなサウンドになりつつも、指揮にスマートで華やかな、良心的現代風フランスを感じ取ることができ、演奏としては予想どおりの高いレベル。ただ、ワタシ的にはドビュッシーはマルティノン+ロンデックスの華やかでダンディ、しかもスタイリッシュな演奏がインプリントされてしてしまっているせいか、クリヴィヌ+フルモーの演奏はまだまだ物足りなく感じてしまうのでした。なんというか、どうもマルティノンの演奏を水で薄めたように聴こえてしまって。いっそ、トルトゥリウエ+マクリスタルのような、まったく異なる透明感のある演奏に興味がひかれてしまうのです。。。