Claude DELANGLE


1957年フランスのリヨン生まれ。リヨンでセルジュ・ビションに師事し、パリ国立音楽院に入学してダニエル・デファイエに師事し、1977年にサクソフォン科を、1979年には室内楽科を1等賞で卒業します。1986年には指揮者ピエール・ブーレーズの主宰するアンサンブル・アンテルコンタンポランのサクソフォン・ソリストに選ばれました。1992年以後ベルリン・フィル、世界各地でソリスト・客演奏者として活躍しています。一方、1988年にデファイエの後任としてパリ国立音楽院の教授に任命されて以来、現在もそのポストにあり、後進の指導やレパートリの開拓にも積極的です。

ドゥラングルのレパートリの大きな部分を占めているのが現代音楽で、フランス流の、いやミュール流の、ヴィヴラートを多用した伝統的な音色とは一線を画し、サクソフォンそのもののストレートかつ不思議な丸みを帯びた音色が印象的です。また現代作曲家と親交があり、デニソフの「サクソフォン協奏曲」やベリオの「セクエンツァIXb」などは、当初サクソフォン以外の楽器のために書かれた作品であったのを、作曲者とドゥラングルのコラボレーションによってサクソフォンのための作品に生まれかわりました。

現在はスウェーデンのBISからリリースされたCDが入手しやすいですが、他にもフランスのレーベルに吹き込んでいるようです。また、アルミン・ジョルダン指揮モンテカルロ・フィルと、ドビュッシーのラプソディをレコーディングしたものもあります(レーベルは Erato、未聴)。また、Grammophone レーベルの ブーレーズによるウェーベルン作品集 では、作品22 に ドゥラングルが(IRCAMのメンバとして)テナー・サクソフォンを吹いていますが、アルバムにドゥラングルのクレジットが記載されていないのでここではご紹介を省きました。

1998年に来日で演奏したイベールの小協奏曲は、生演奏を聴いた友人の話では、それは素晴らい演奏だったということです。ドゥラングル=前衛、ととらえられがちですが、一方で "良き" 伝統を継ぐのも実はドゥラングルなのではないかと思うこのごろです。

長いこと入手不能となっていた、アルミン・ジョルダン指揮モンテカルロ・フィルと録音したドビュッシーのラプソディの録音が、まもなく再プレスされるという情報もあります。ますます今後の活動が気になります。

Official Site(フランス語/英語)


主なアルバム


「Solitary Saxophone」

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BIS CD-640
1993/7/1-5 Furuby Church, Växjö, Sweden
  1. 友情に (シュトックハウゼン)
  2. セクエンツァVIIb (ベリオ)
  3. マクノンガン (シェルシ)
  4. イグゾル (シェルシ)
  5. 4つのエピソード (ベチェ)
  6. 3つの小品 (シェルシ)
  7. セクエンツァIXb (ベリオ)
  8. ディスタンス (武満徹)

"前衛"ドゥラングルを代表する一枚。難解でありながら、しかし聴きこもうとすると奥の深さを感じさせる曲を、正確無比に演奏しています。大げさですが、もはや人間業を超えているのでは? いくつかの曲はケンジーのアルバムと重複しているので、聴き比べてみるとオモシロイでしょう。ドゥラングルの凄さがあらためて実感できるかも。

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オススメ度:


「Denisov - Concerto for Alto Saxophone etc.」

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BIS CD-665
1994/1/31-2/1 Brangwyn Hall, Swansea, Wales [a,b]
1995/7/11 Auditorium de l'Espace Culturel Dispan de Floran de l'Hay-les-Roses, Paris, France [c]
  1. サクソフォン協奏曲 (デニソフ)
  2. 管弦楽のための「絵画」 (デニソフ)
  3. ソナタ (デニソフ)

Claude DELANGLE (saxophone) [a,c]
尾高忠明 指揮 BBCウェールズ・ナショナル交響楽団 [a,b]
Odile DELANGLE (piano) [c]

協奏曲はヴィオラのための作品からの改作ですが、サクソフォンのために書かれた作品といっても違和感のない曲です。4楽章ではシューベルトの旋律が現れては消え、形を変えて再現される様が、夢うつつの世界を行き来しているようなリアリティを感じさせます。尾高氏のサポートも、難解なデニソフ・ワールドを純粋な音楽に帰化させていて、好感をもちます。ドゥラングルの演奏の質からいえば、このアルバムが最高かもしれません。

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オススメ度:


「The Russian Saxophone」

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BIS CD-765
1995/7 Auditorium de l'Espace Dispan de Floran de l'Hay-les-Roses, Paris, France
  1. ソナタ (デニソフ)
  2. パ・ドゥ・ドゥ (ラスカトフ)
  3. 2本のバリトン・サクソフォンのためのデュオ・ソナタ (グヴァイドリーナ)
  4. Causus in terminus (カラシコフ)
  5. アルト・サクソフォンとチェロのためのソナタ (デニソフ)
  6. 天使のための音楽 (ヴァスティン)

Claude DELANGLE (saxophone)
Odile DELANGLE (piano) [a,d]
Elena VASSILIEVA (soprano) [b]
Damien ROYANNAIS (saxophone) [c]
Vérène WESTPHAL (cello) [d,e]
Jean GEOFFROY (perc) [f]

難解な響きの曲が続きますが、ドゥラングルのしなやかな音色のせいで聴き飽きません。グヴァイドリーナの作品はバスーン作品からの改作ですが、アヤシく低音が重なりうごめく響きは、思わず引き込まれてしまいます。また天使のための音楽は、タイトルにそぐわず(笑)やはり難解な曲ですが、それでも他の曲に比べると調性が感じられ、不思議な響きがして楽しめました。なおデニソフの録音は、Denisov - Concerto for Alto Saxophone etc.同一テイク、Pierre Verany レーベルのものとは別テイクです。。

オススメ度:


「Japanese Saxophone」

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BIS CD-890
1993/7/1-5 Furuby Church, Växjö, Sweden [e]
1997/10/7 Danderyd Grammar School, Sweden
  1. 西、または秋の夕暮れの唄 (夏田昌和)
  2. アラベスクIII (野平一郎)
  3. ミステリアス・モーニングIII (棚田文紀)
  4. ヴァーティカル・タイム・スタディII (細川俊夫)
  5. ディスタンス (武満徹)
  6. 大陸移動説VI (平義久)
  7. 私でなく、風が… (湯浅譲二)
  8. ナイト・バード (田中カレン)

Claude DELANGLE (saxophone)
Odile DELANGLE (piano)
Jean GEOFFROY (percussion)

どの曲もゲンダイオンガクで、真剣に耳を傾けざるをえないのですが、なぜでしょうか、不思議と疲れないのです。西、または秋の夕暮れの唄は、冒頭のパーカッションの響きから、日本的というより凡アジア的な印象を持ちました(解説によれば、韓国ということですが)。また、最後のナイト・バードは、作曲者が女性だから、というわけではないのでしょうが、響きに色気を感じてゾクッとします。そのほかでは、奇妙な朝III私でなく、風が…が新鮮に聞こえました。

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「Saxophone For A Lady」

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BIS CD-1020
1998/10 Danderyd Grammar School, Sweden
  1. ラプソディ (ドビュッシー)
  2. クラリネットのための小品 (ドビュッシー)
  3. 伝説 (カプレ)
  4. コラール・ヴァリエ (ダンディ)
  5. 伝説 (シュミット)
  6. コペリウスの歌 (シュミット)
  7. ピアノのためのソナチネ (ラヴェル)

Claude DELANGLE (saxophone)
Odile DELANGLE (piano)

現代音楽ものから一転、フランスの印象派期の作曲家による作品を集めたもの。アルバムタイトルの "For A Lady" は、今世紀はじめにフランスの主要作曲家に多くのサクソフォン作品を委嘱したエリザ・ホールを意味していて、このアルバムでも a,c,d,e は彼女の委嘱による作品です。(しかし、こんなそうそうたる作曲家陣が曲を書いてくれるなんて、すごいですねぇ)

このアルバムの聴きどころはカプレ伝説コラール・ヴァリエの2曲を、20世紀前半にアドルフ・サックスの工場で生産されたシルバー・プレートのサクソフォンで演奏している点です。現代の楽器が息づかいにきっちり反応して明るく輪郭のはっきりした音色なのに対して、この楽器は渋めのやや地味な柔らかい音色がします。抵抗が強いのかな? 音の立ち上がりがあまり鋭くありません。好みの問題ですが、私はこの曲にこの音色の組み合わせはとても気に入りました。また、この音色ならドゥラングルのようなノン(またはごく控えめな)ヴィヴラートの奏法は合理的なように思います。願わくば、ピアノも当時の楽器を使うとさらにおもしろかったのでは?

一方、このアルバムには2曲の編曲ものを含んでますが、元がクラリネット曲の小品は、この奏法で聴くとなるほどサクソフォンでも効果的な響きがします。またもとがピアノ曲のソナチネは、ラヴェル独特の玲瓏な響きが原曲とは違った視点から感じることができ、楽しめました。

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「A la francaise」

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BIS CD-1130
1999/7 Danderyd Grammar School, Sweden
  1. ソナタ 嬰ハ長調 (デクリュク)
  2. クロカンブッシュ〜アルト・サクソフォンとピアノのための6つの小品 (デルヴァンクール)
  3. ラメントとロンド (サンカン)
  4. プロヴァンスの風景 (モーリス)
  5. 練習曲より[7曲抜粋] (ケクラン)
  6. 前奏曲・カデンツァとフィナーレ (デザンクロ)

Claude DELANGLE (saxophone)
Odile DELANGLE (piano)

2002年春のリリースは、フランスの比較的古典的な、しかし前作よりはやや新しい時代のレパートリを集めたアルバム。ここでもドゥラングルはヴィヴラート少なめの音色で驚異的なテクニックを聴かせてくれます。特にケクランの練習曲ではそのテクニックがこれでもかとキッチリ聴こえて、この曲がさまざまなテクニックを織り込んでいる練習曲だという一面を再認識させられました。ちなみに1、2、3、8、9、10、13番が収録されています。またクロカンブッシュは6曲それぞれにお菓子の名前がつけられていて、曲に含まれている(お菓子の名前にちなんだ)仕掛けがおもしろいほど浮き彫りにされています。多くの奏者がレパートリとしているラメントとロンドデザンクロでは、余計なハッタリをかまさずストレートに吹ききっていて圧巻。ある意味、これは自信のなせるワザでしょう。ただメロディや和音が親しみやすいプロヴァンスの風景になると、もうすこし開放感のある、ほっとするような気持ちになりたいとも思います。アルバムタイトルの A la francaise がちょっと皮肉に感じてしまうのは、既に私の耳が固定観念に染まってしまっているからでしょうか?

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「Historic Saxophone」

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BIS CD-1270
1998/10 [a-c,g,j,k,n], 1999/10 Danderyd Grammar School, Sweden
  1. オリジナルの主題による幻想曲 (ドゥメルスマン)
  2. 「魔弾の射手」の主題による変奏曲 (サヴァリ)
  3. スペインの主題による変奏曲 (ジュナン)
  4. ソロ第2番「カヴァティナ」〜バリトン・サクソフォンとピアノのための (ドゥメルスマン)
  5. カプリス〜ソプラノ・サクソフォンとピアノのための (サンジュレ)
  6. ファンタジー〜ソプラノ・サクソフォンとピアノのための (サンジュレ)
  7. 綺想曲と変奏曲 (アルバン)
  8. ソロ第1番〜テナー・サクソフォンとピアノのための (ドゥメルスマン)
  9. 協奏曲〜テナー・サクソフォンとピアノのための (サンジュレ)
  10. チロルの主題によるソロ曲 (チック)
  11. 音楽院のコンクールのためのソロ曲 (ジュナン)
  12. 演奏会用ソロ曲〜バリトン・サクソフォンとピアノのための (ドゥメルスマン)
  13. 劇的幻想曲「ダニエル」 (クローゼ)

Claude DELANGLE (saxophone)
Odile DELANGLE (piano)

2003年末のリリースは、サクソフォン黎明期の1850〜70年代に作曲されたオリジナル曲を、1900年頃に製造された楽器で演奏しています。同様な企画はボーンカンプショウラキのものが既にあって、当然収録曲もかなり重複しており、聴き比べるのも一興でしょう。ドゥラングルの録音はその技術的な完成度。緩急どんなパッセージも自由自在、サクソフォンの長所のひとつである機能性を存分に発揮したこれらの曲を、アクロバティックな面を含めてきっちり一つの音楽として体現したところにこのアルバムの価値があります。

ところで、ドゥラングル氏がこれらの曲を録音したのが1998〜99年(録音期日からすると、一部はSaxophone For A Ladyと同時の録音かも)、リリースまでに4年近く経ってしまいました。その4年の間に、サクソフォンによるピリオドアプローチを試みる演奏・録音も少しづつ増えてきました。もっと早くこのドゥラングルの演奏がリリースされていたら、また状況は変わっていたのではないか、と想像してしまいました、、

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「Under the Sign of the Sun French Works for Saxophone & Orchestra」

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BIS CD-1357
2004/8 Victoria Concert Hall, Sigapore
  1. 室内小協奏曲 (イベール)
  2. サクソフォン協奏曲 (トマジ)
  3. 亡き王女のためのパヴァーヌ (ラヴェル)
  4. プロヴァンスの風景 (ラヴェル)
  5. 伝説 (シュミット)
  6. スカラムーシュ (ミヨー)

Claude DELANGLE (saxophone) Lan SHUI / シンガポール交響楽団

これまた録音から3年経ってのようやくのリリース。うーん、こんな見事な演奏、早く世に送り出してくださいよ>BISレーベルさん。見てのとおり、サクソフォンとオーケストラのための定番曲がずらり。もちろん、ドゥラングル氏の演奏は見事なもので、フランス風の華やかな音楽を期待すると若干肩透かしにあいますが、例えばイベールでの超高音域でさえまるで鼻歌でも歌っているかのごとくさらりと演奏し(あまりにさらりとしていて、カタルシスを感じないのはやむをえないところでしょう)、トマジの細かい音符も見事に吹きこなし、伝説ではシュミットの濃厚なロマンティックさを浄化し凝縮したような音楽作りを展開します。定番曲ばかりということで、おそらくはドゥラングル自身が何度も繰り返し演奏してきた曲なのでしょう、どの曲も非常に完成度の高い演奏です。あとは趣味の問題ですが、オーケストラの表現がさらに潤いがあるといいな、と感じました。

なお、亡き王女のためのパヴァーヌは、野平多美さんのソプラノサクソフォンとオーケストラのための編曲が使われています。

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「Japanese Love Songs」

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BIS CD-1630
●2004/8 Victoria Concert Hall, Sigapore
  1. 良寛による2つの詩 (夏田昌和)
  2. 恋歌 I-III (細川俊夫)
  3. アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌 (伊福部昭)
  4. サクソフォンとメゾ・ソプラノのための2重奏 (棚田文則)
  5. インプロヴィゼーションI (野田燎)
  6. 舵手の書 (野平一郎)
  7. 松風 (ラルビ)
  8. Ça va commencer, Ça commence (デュベドゥ)
  9. 君がこころは (島崎藤村詩)

Claude DELANGLE (saxophone) 小林 真理 (vocal) / Jean GEOFFROY (percussion)

各奏者それぞれに、高い技巧とセンスが要求されるにもかかわらず、まったく不安を感じない完璧な演奏は、恐ろしいほど。ドゥラングル氏の、ストレートで全く躊躇のない、それでいて不思議な色気を感じさせる音色は相変わらずです。それぞれの曲における、間合いや音空間の端々に日本的なセンスを感じたりするのは確かですが。。これだけ音を抽象的に扱うにも関わらず、言葉がストレートに耳に入ってくると、その言葉の意味と抽象的な音との関係の理解に苦しむ(わからなかった)という状態でした。つまり、コンテンポラリーすぎて、残念ながら、演奏者と作曲者(曲)・聴き手(私)の3者で同一の感情、思いを共有できるレベルではありませんでした。かろうじて、打楽器のアクセントが曲の進行を感じさせるアイヌの叙事詩…と、この中では古典的な作品というべきインプロヴィゼーションで、曲のおもしろさに入り込めたくらいです。

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「Paris - Buenos Aires Tango Futur

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BIS CD-1170
2001/10/29-11/2 Ecole Nationale de Musique et de Danse, Aulnay-sous-Bois, France
  1. フーガと神秘 (ピアソラ)
  2. モンマルトルの小さな独身寮で (セナネス)
  3. 力強い手 (ストラスノイ)
  4. 私の祖父母の家 (ヴィエラ)
  5. 音楽のあるカフェ〜クロードのためのタンゴ (ガンディーニ)
  6. 月並みな褒め言葉 (ナオン)
  7. グリセータ (ヴィエラ)
  8. 変わった人 (ヴィエラ)
  9. (ヴィエラ)
  10. 苦労の熱意 (ナオン)
  11. 絶壁 (ストラスノイ)
  12. タンゴをとりまく3つの歌 (ベイテルマン)
  13. トランスムタンゴ (グレッツェル)
  14. 白い婦人 (ボッサーニ)
  15. 高いヴォルタンゴ (ナオン)
  16. チキリン・デ・バチン (ピアソラ)

Tango Futur [Claude DELANGLE (saxophone) / Odile DELANGLE (piano) / Max BONNAY (bandoneon) / Eric CHALAN (contrabass) / Jean GEOFFROY (percussion) / Susanna MONCAYO (mezzo-soprano)]

ドゥラングルが中心となって結成された団体。実際には、サクソフォンとピアノだけの編成からほぼ全員による演奏まで、曲によってフレキシブルな編成となっています(がサクソフォンは必ず加わっています)。演奏は技術的には文句なくとても洗練された仕上がりになっています。ただ、私の趣味からすると、曲や演奏者に本場のメンバが多数参加していながら、血の流れるようなタンゴの精彩さ、毒々しさをあまり感じ取ることができなかった点、ちょっと残念でした。ドゥラングルの目指す方向はわかるのですが、この演奏を聴く限りあまり共感できていない、という状況ゆえかもしれません。この団体、これから息長く定常的な活動を続け、目のさめるような演奏を展開してほしいと望んでいます。


「MUSIQUE FRANÇAISE POUR SAXOPHONES」

Vandoren V001 (P)1986
  1. スカラムーシュ (ミヨー)
  2. ファンタジア・アンプロンプチュ (ジョリヴェ)
  3. 伝説 (シュミット)
  4. 練習曲より[6曲抜粋] (ケクラン)
  5. ジーン・ハーローの墓碑銘 (ケクラン)
  6. 民謡風ロンドの主題による前奏と変奏曲 (ピエルネ)
  7. サクソフォン4重奏曲 (シュミット)

Claude DELANGLE (saxophone) / Odile DELANGLE (piano) [a-e]
Pieere=Yves ARTAUD (flute) [e]
Quatuor Adolphe Sax (Claude DELANGLE, Jean=Paul FOUCHECOURT, Bruno TOTARO, Jacques BAGUET) [f.g]

以前 Chant du Monde レーベルからリリースされていた (LDC 278 878) ディスクを、1994年に Vandoren からリリースし直したもの。そう、Vandoren とはリード・メーカのヴァンドレンです。サクソフォンのCDを聴き始めた初期にこのCDを買いのがして非常に後悔していただけに、ようやく入手できてとてもウレシイです。以前のCDを持っていらっしゃる方によれば、ジャケットは変わっているということです。

さて演奏の方ですが、とても抑制の利いた知的な演奏ともいえるでしょうか。イケイケになってしまいがちなスカラムーシュは、伴奏さえも手綱で押さえながら演奏を繰り広げていて、興味深いです。他ではケクランの2曲が特に印象的で、ドゥラングルの端正なサクソフォンとフルートがすがすがしく寄り添い、ムードミュージック的なケクランとは一線を画した仕上がりになっています。

最後2曲は4重奏による演奏ですが、一度聴いただけではあまりピンときませんでしたが、何度か聞き直しているうちに、曲そのものの妙味が感じられて楽しめました。なかなか渋い演奏です。

オススメ度:


「Jardin Secret」

Vandoren V002
1996/4/18-20 Paris Conservatory
  1. バスク (マレイ)
  2. タンブラーン (ラモー)
  3. 白鳥 (サン=サーンス)
  4. コンチェルティーノ (サンジュレ)
  5. 小さな羊飼い (ドビュッシー)
  6. 小さな黒人 (ドビュシー)
  7. 「物語」より (イベール)
  8. サックスの置物 (ホルシュタイン)
  9. 棍棒を持った男 (エスケッシュ)
  10. 秘密の庭 (エスケッシュ)
  11. 獅子の像のある噴水 (エスケッシュ)
  12. シャンソンとパスピエ (リュエフ)
  13. ラテン小組曲 (ノレ)
  14. (ミシャ)

Claude DELANGLE (saxophone) / Odile DELANGLE (piano)

上記同様ヴァンドレンから出ている、教育目的のCD。サブタイトルに「Standards francais pour les saxophonistes de Second Cycle」とあり、前衛的な曲はまったくなく、中級者レベルで吹くことのできる曲が録音されています。しかも、大半の曲は後半にピアノ伴奏のみのトラックも収められていて、これをバックに練習できる、という親切な内容。演奏の方は、いつもより少しヴィブラートがかかってるようですが、このスタイルでこの手の曲を吹くのはちょっとつらい気もします。まあ、模範のための演奏なので仕方がないのでしょうが、ファンの勝手な意見ですがやはりドゥラングルはもっと前衛的な曲をバリバリ吹きこなしているほうが似合うと思います。とはいえ、ドゥラングルが後進の教育の面でも優れた顔を持つことを伺わせる演奏です。


「Marius CONSTANT 4 CONCERTOS」

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ERATO 4509-94815-2
1990/4 Salle Poirel, Nancy, France
  1. ホルンと管弦楽のための「コーラスとインターリュード」 (コンスタン)
  2. ストリートオルガンと管弦楽のための協奏曲 (コンスタン)
  3. サクソフォンと管弦楽のためのコンチェルティーノ (コンスタン)
  4. トロンボーンと管弦楽、2本のホルンのための協奏曲「四大元素」 (コンスタン)

Claude DELANGLE (saxophone) [c]
Jérome KALTENBACH 指揮 ナンシー交響楽団 [a]
Jean=Jacques JUSTAFRÉ (horn) [a]
Pierre CHARIAL (barrel organ) [b]
Michel Becquet (trombone) [d]

指揮者としても有名なマリウス・コンスタンの作品集。現代音楽バリバリかと思いきや、作風は多彩なようで、このアルバムにおさめられた4曲もかなり趣向の違った曲に感じられました。ドゥラングルはこの中でコンチェルタンテを吹いていますが、正直なところ私にはこの曲はつかみどころがなく感じました。もう少し聴き込むと感想が変わってくるかもしません。

1曲目のホルンの(実質的な)協奏曲は、伴奏にピアノやサクソフォン、エレキベースにドラムも加わったジャズ・オーケストラのサウンドで、ジョリヴェに似た生命力あふれるジャズのエネルギーが「上品なホルン」のイメージを見事に打ち砕いてくれて痛快。2曲目のストリート(電子?)オルガン協奏曲は、タイトルをみたときはどんな音がするのか想像できませんでしたが、電子オルガンならではのピコピコピュンピュンという音色がうまく音楽に生かされていて、これまたなかなか楽しめました。最後のトロンボーン協奏曲も、トロンボーンの超絶技巧を盛り込みつつ複雑な響きが脳天を刺激します。サクソフォン以外の点では、このアルバムはかなりのおすすめCD。


「EDISON DENISSOV Percussions de Strasbourg

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Pierre Verany PV.790112 (c)1990
  1. ソナタ〜アルト・サクソフォンとピアノのための (デニソフ)
  2. 黒い雲〜ヴィヴラフォンのための (デニソフ)
  3. 出現と消滅〜2人の打楽器奏者のための (デニソフ)
  4. 遥かなる星の光の、湾にきらめく〜金属打楽器のための (デニソフ)
  5. 3つの小品〜ピアノ連弾のための (デニソフ)
  6. 小さな協奏曲〜持ち替え4種のサクソフォンと6人のパーカッションのための (デニソフ)

Claude DELANGLE (saxophone) [a,f]
Odile DELANGLE (piano) [a,e]
Percussiondes de Strasbourg

Pierre Verany レーベルが入手困難な状況の今、このCDの入手はちょっと苦労しました。1990年に録音されたこのCDは、もちろんBISの音源とは異なるもので、ドゥラングルによるソナタに加えてソプラノからバリトンまで4種のサクソフォンを持ちかえる小さな協奏曲(Concerto Piccolo)を含んでおり、ここでもドゥラングルの切れ味のよい演奏を楽しむことができます。もちろんサクソフォン作品もおもしろいのですが、他の打楽器作品も興味深い作品で、ヴィヴラフォンによる黒い雲はタイトルにもかかわらずきらめくような響きが印象的ですし(だからこそ黒さをも想起させる)、遥かなる星の光の、湾にきらめくでもさまざまな楽器の打音が幻想的な響きを醸し出しています。けしてやさしくない音楽ですが、不思議と繰り返し聴きたくなるアルバムです。

オススメ度:


「Thierry ESCAICH」

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Chamade CHCD 5638
1995/4/16-17,26 Rosny-ss-bois et Boulogne-Billamcpirt, France
  1. サクソフォン協奏曲「暗黒の歌」 (エスケッシュ)
  2. 暁の子供〜フルート、チェロ、ピアノのための (エスケッシュ)
  3. 忘れられたアンティフォン (エスケッシュ)
  4. 3つの間奏曲〜フルート、クラリネット、サクソフォンのための (エスケッシュ)
  5. アド・アルティマス・ラウデ〜12声のための (エスケッシュ)

Claude DELANGLE (saxophone) [a]
Jean=Sébastien BÉREAU 指揮 管弦楽団 [a]
Jean=Pierre BARAGLIOLI (saxophone) [d]
Yves QUEYROUX (flute) [d]
Sylvain FRYDMAN (clarinet) [d]
Christel RAYNEAU (flute) [b]
Philippe PENNANGUER (cello) [b]
Yann OLLIVO (piano) [b]
Ensemble Erwartung [c]
Bernard FABRE 指揮 A Sei Voci [e]

1965年生まれの若い作曲家、ティレリー・エスケッシュの作品集。アルバムJardin Seceretにもエスケッシュの小品が収録されていますが、こちらは比較的大きな作品が中心です。ドゥラングルは1曲だけの参加ですが、この協奏曲1992年にドゥラングルが委嘱し同年イタリアで行われたワールド・サクソフォン・コングレスで初演した曲です。若手の作曲家を大切にするドゥラングルの姿勢が現れたような、愛着を持って演奏しているように聴こえます。他は室内楽作品が収録されていますが3つの間奏曲のサクソフォンはバラグリオリが担当しています。


「Hugues Dufourt The Watery Star ...」

Accord 465 715-2 1995/5, 1996/6
  1. 水の惑星〜8つの楽器のための (デュフール)
  2. クロノス (デュフール)
  3. サクソフォン4重奏曲 (デュフール)
  4. 陰のある場所〜16人の奏者のための (デュフール)

Claude DELANGLE, Daniel PETITJEAN, Daniel GREMELLE, Jacques BAGUET (saxophone) [c]
Ensemble Fa [a,d]
Dminique MY (piano) [b]

1943年生まれで、現在フランスで精力的に活動を続けている作曲家、ヒュー・デュフールの室内楽作品集。IRCAMのメンバでもあるデュフールの作品は現代的ですが音群が迫ってくるような暑苦しい響きではなく、室内楽作品ゆえか理路整然とした響きに感じました。演奏メンバも現代音楽を得意とする奏者がそろっているようですが、ドゥラングルやグレメーユらによるサクソフォン4重奏曲の演奏も技術的にはすばらしい内容であることは確かなのですが、私の力で充分理解できる内容の音楽ではないというのが正直なところ。4重奏曲はXASAXによる演奏も入手可能なので、比較して聴くとアプローチの違いが楽しめるでしょう。

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