1961年生まれの須川氏は、今や日本を代表し、そして世界でも屈指のクラシカル・サクソフォン奏者。ザ・トルヴェール・クヮルテットのソプラノ・サクソフォン奏者であり、東京佼成ウィンド・オーケストラのアルト・サクソフォン奏者兼コンサート・マスタでもあり、CMにも出演したり、と八面六臂の活躍ぶりですが、後進の育成、アマチュア奏者との共演も積極的です。
経歴その他詳しいことについては、須川氏の公式のページをご覧下さい。
CMや映画の中でも「おっ、これは須川さんの音だ」とわかる独特の美しい音色こそ、須川氏の最大の武器であると思います。特に高音の弱音の美しさは息をのみます。実演では茶目っ気や大胆な表現もみせて(いや、聴かせて)くれます。次にどんな音楽表現で私たちを魅了してくれるのか、常に要注目です。
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須川氏のデビュー作。「サクソフォンを普段聴かない人にも聴いてもらえるようなものを」という本人の希望により、耳になじみのある小品が収められています。冒頭の抒情的小品集よりの切々とした息遣いは印象的ですし、ラグタイム・ダンスの軽妙さも聴きものです。最後の3曲も、妙にコブシが入ってなくていいですね。伴奏の奥さんの小柳美奈子女史も、好サポートを聴かせてくれます。アポロン・レーベルからバンダイ・ミュージックへ移行後、入手困難になっていましたが、2003年7月にアート・ユニオンから再度プレスされました。うれしい限りです。
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楽譜とタイアップ企画で出されたブックレットつきCDで、CDショップではなく楽譜屋に並んでました。ところで、この楽譜ってまだ売ってるんでしょうかね? 模範演奏を意識したのか、楽譜に素直な演奏、というかあまり遊び心がないんですが、これは須川氏のせいではないのでしょう。ブックレットの解説がさらに充実していればなおよいのですが、、
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アルバム2作目はオリジナル曲でガッチリかためられてます。なかでもファジーバード・ソナタはスバラシイ! 後に「メイド・イン・ジャパン」で再録音してますが、私はこのアルバムの方が挑発的でエロティックで好きです。特に第3楽章のアドリブのところとか、サイコーですね。デニソフの響きもいたずらに難解になってませんし、須川氏が高校の頃から吹いていたというクレストンの演奏からはいとおしみが感じられます。そして最後のスカラムーシュはハヤいハヤい! 特に、Vif のスピード感やドライヴ感はピカ一です。この曲を録音したアルバムは20枚近く持ってますが、須川氏の演奏が一番と思ってます。これに対抗できるのは、須川氏の悪友?ボーンカンプ氏くらいかな?
このCDも、2003年7月にアートユニオンからの再プレスされました。
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レーベル移籍第1作目は、弦楽器を主体に、ハープやギターを伴奏にしたアルバム。全体にイージーリスニング調に近く、録音が残響だらけなのはナンですが、聴き心地よい仕上がりです。私はこの路線はきらいではなく、実際このアルバムはよく聴いてます。このアルバムの中では夢や亡き王女のためのパヴァーヌなどは、須川氏のサクソフォンが原曲にはない別の魅力を引き出していますが、なんといってもソプラノの演奏によるイベールの間奏曲は絶品。ドライブのBGMとしてもオススメします。もっとも、最後の方で眠気を誘ってもシリマセン(笑)
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弦楽器をバックに、主にポップス曲でまとめたアルバム。えー、手厳しいことをいってしまうと、私はこの路線は全然評価してません。たしかに、須川氏自身の思い入れは感じられますし、技術的にもまったく難なくめちゃくちゃ美しく吹いています。しかし、それ以上ではないのです。どうしてこれらの曲を、クラシカルなスタイルで演奏して発表したのでしょう? おそらく答えは、曲が好きだから、なのでしょう。それはそれでいいと思いますが、それならば私はもっとエンターテイメントに徹した演奏の方を選んで聴きます。美しいだけでなく、ある時は意図的に音程をはずし、音色を汚し、クラシックという枠を本当に打ち破った時に、もっとすばらしいアルバムができると思うのですが。
私事ですが、今回アルバムを再度引っぱり出したら、弦のメンバにお世話になった方の名前を発見して、ちょっとうれしくなりました。
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前半にピアソラ、後半にヴィラ=ロボスとデュボワを組み合わせたアルバムで、前半に気を取られがちですが後半が素晴らしいです。特に性格的小品は、各楽章を勢いにまかせずキッチリ吹き分けててさすが。タンゴの歴史はもう少し攻撃的になってほしい気もしますが、若きバンドネオン奏者 啼鵬 とのコラボレーションはなかなかのものだと思います。中でも、プレパンセや孤独の月の軽やかさは心地よく、数あるサクソフォンによるピアソラ演奏のなかでもお気に入りです。
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文化庁芸術作品賞受賞アルバム。なんとフィルハーモニア管をバックに協奏曲集を録音してしまいました。吉松氏の作品はこの録音のために書き下ろされたそうで、須川氏を始めソリストはかなり熱くなっているようです。ただ、曲に込められた要素がそれぞれに浮遊して感じられて居心地悪く、他の曲に比べると私は楽しめませんでした。残りの、すでにサクソフォンのための古典とでもいうべき3曲は、どの曲も高水準の出来ではありますが、須川氏の腕をすればさらに意欲的な、踏み込んだ表現を聴くことができるはず、と思うとちょっと残念です。
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オケをバックにラテンものを集めて吹き込んだアルバム。前作よりはかなりアツくなってますが、しかし実演のグラナダにはまだまだ程遠いなー。(それだけ実演がすごい、ということです。)このアルバムの中では、エストレリータや粋な娘の踊り、想いのとどく日といったスローで歌い上げるような曲が印象的です。バックのOE金沢は、音の処理や音色に不満がのこります。
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邦人による作品集、しかもすべて須川氏のためにかかれた曲というアルバム。実際、無伴奏の1曲目ランサローテの冒頭を聴いた瞬間に、この曲が須川氏の音色を前提に書かれていることがわかり、背筋がゾクッとしました。エキゾチック・ダンスとラメントも、曲・演奏とも気合いを感じます。このアルバムのために書き下ろしたという本多俊之のジャズ・エチュードは、私はあまりおもしろいとは思いませんでした。
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いやあ、久々で佼成ウィンドが燃えてます! 須川氏のソロもよいですが、これだけやる気をだした佼成も久々に聴く気がします。おかげで、英雄の時代はかなりおもしろく聴くことが出来ましたが、繰り返し聴くと伴奏の強奏が多くてちょっと疲れるのも事実。後の3曲はサクソフォンのレパートリとしては有名ですが、この録音はもちろんすべて吹奏楽伴奏版。須川氏のソロは頑張ってますが、プロヴァンスの風景ではピアノ伴奏で聴くことのできる鋭角的なリズムはここにはなくなってしまってますし、グラズノフで弦楽器の醸す弦の響きとソロ管楽器の対比は、原曲と比べると2段も3段も聴き劣りするように感じました。これは演奏のせいでも編曲の問題でもないでしょう。トマジも同じ傾向ですが、原曲が胃にもたやすい分、管楽器版はすっきりしていて愉しめました。ボーナスCDに収録されているグラナダはまさに熱演。同じ指揮者(と同じ編曲者)によるオケ伴録録音より、須川氏も指揮者もはるかに愉しんで、悪ノリすれすれのところまで燃焼してます。
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最新譜はジャズ界の大御所ベーシスト、ロン・カーター氏との共演作。この共演のために編曲され、二人が演奏されることを前提にした音楽が繰り広げられます。そのせいか、また選曲のせいかどの曲もトゲがなく、落ち着いてバランスのとれた演奏が繰り広げられます。言い方を変えれば全体にやや大人しい演奏のようにも感じます。全体にロン・カーター氏の懐の深さと、それに臆せずしかし端正さを崩さない須川氏という印象が残りました。ごく個人的に言えばロン・カーター氏のベースを聞いてるだけで幸せなのですが、録音のせいなのか他の楽器とのバランスがちょっと気になりました。
なお、東京セッションではピアノに島健氏、パーカッションに山口多嘉子氏が参加していることを附記しておきます。
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なんと3枚組、すべて新録音という気合の入ったアルバム。選曲も意欲的で、まったくごまかしの効かない有名曲ばかり。こういった企画ができ、もちろん完成度が高く、しかもイヤみにならないのは、須川氏だからこそ、といえるでしょう。
1枚目はクラシックからの編曲。パリのアメリカ人、展覧会の絵とも長生淳氏の手によるもので、サクソフォンとピアノという編成の制約を逆手にとって、原曲にはないフレーズを交えたりした大胆なものになっています。とはいえ、聴き進むうちにオクターヴ跳躍による解決が繰り返し目立つようになってきて、ちょっと飽きてしまった、というのが正直な感想です。あと、せっかくなら原曲のピアノ版からの編曲であってほしかった、とは個人的な願望。もちろん、演奏そのものはすばらしく、編曲上の困難さを軽々クリアした上で遊び心にあふれています。
2枚目はフランス系のやや軽めのオリジナル曲。既録音と重複する曲は少なからずありますが、さらに遊び心を加えつつ、それが音楽そのものの品位をまったく落とさずにまとめあげている点は本当に驚異的です。特にスカラムーシュやプロヴァンスの風景など、今までいろいろな演奏を何度も聴いてきましたが、この演奏をきくたびにさらに新しい発見があり、他の奏者にはないオリジナリティとクオリティを見出します。他の曲も然り。3枚のCDの中では最も須川氏のサクソフォンそのものが堪能できました。
3枚目はさらに技巧を要するオリジナル曲。とはいえ、技術的になんの問題もなく演奏されていることは当然。須川氏の演奏は、そんな技術的な問題を突き抜けてしまった、高い次元の演奏であることは間違いありません。ヘイデンにしろリュエフにしろ、いとも難なく音楽の本質が須川氏によって語られてしまい、その価値が聴く側に無理なく委ねられてしまい、真剣に対峙せざるをえません。なんというオソロシイことでしょう(笑)。
ないものねだり的に気になった点といえば、サクソフォンとピアノのバランス。須川氏の音楽のスパイスになっている小柳氏の伴奏をもうすこし前面に出してほしかったと個人的には感じました(EMIレーベルの録音ポリシーとも関係してるような気がしますが)。とはいえ、これはアルバムの完成度が極めて高いからこその感想、これだけ「やりたい」音楽をさらりと(しかも大量に)披露してくれる須川氏、次に何に「挑戦」するのか、またそのパワーをどんなカタチでみせてくれるのか、実に楽しみであります。
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須川氏のプロ活動20周年を記念したコンサートのライヴ盤。SACDハイブリッド仕様です。最初と最後はコンサートマスターとして、それ以外はソリストとしての演奏。しかしアルメニアン・ダンスもグレインジャーも、アルト・サクソフォンがいい意味で目立つ曲であり、須川氏の音色を堪能することができます(もちろん、それはソリスティックに目立つというのではなく、有機的なアンサンブルをリードするという意味において)。どの曲も渾身の、しかし遊び心をけして忘れない演奏ですが、なかでもグラナダと追憶のテーマでは、須川氏自身もバックの東京佼成ウィンドも感情の昂ぶりを抑えきれないのが聴こえてとれます。グラナダの最後のグリッサンドが決まったあとの、須川氏の嬉しそうな顔が目に浮かぶようです。
ここ数年の須川氏の演奏を聴いていると、デビュー当時の颯爽とした音色に加えて、特にクラシック系の曲で少しづつ音色の濃密さを感じることが多くなってきました。ライヴならではの傷もありますが、須川氏の活動の「句読点」に相応しいすばらしい内容で、ぜひ次は25周年に何かやらかしてほしい!です。
本当は、ピアソラのナンバーよりも、コンサートで演奏されたグラズノフやアンコール最後に演奏されたアメージング・グレースを収録してほしかった(笑)
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前のCDのコメントで「コンサートで演奏されたグラズノフやアンコール最後に演奏されたアメージング・グレースを収録してほしかった(笑)」と記したら、DVDにはしっかり収録されていました(驚)。演奏についてのコメントは前のCDと同一なのですが、やはりファンとしては、演奏が映像とともに楽しめることはありがたいかぎりです。汗だくになってニコニコしながらタクトを振る山下氏と、「幸せ」が体からにじみ出ているような須川氏の映像からは、須川氏が東京佼成ウィンド・オーケストラとの関係を非常に大切にし、それがこれまでいい結果を生み出しているかを感じることができます。また、一アマチュアサクソフォン奏者としては、須川氏がどんな表情で楽器を演奏しているか、奏法を確認できるのが嬉しいです。
なお、特典として須川氏へのインタビューが(あまり長くはありませんが)収録されています。
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「ビールを飲みながら聴いてもらえるようなCDを作りたかった」というタスキに引用されたコメントに偽りなく、肩肘こらずに楽しむことのできる内容です。オリジナル曲あり、サクソフォンの名曲の吹奏楽伴奏バージョンあり、ジャジーな曲あり、と曲の出典は様様ですが、一貫しているのは須川&山下&TOKWOのコンビでしかなしえない良質のエンターテーメント性です。
このアルバムの目玉である、委嘱初演作品ウズメの踊りは、しかしサクソフォンの楽器特性を熟知しているスウェルツらしい効果的かつ技術的に非常に高度なフレーズを駆使しており、ウィンド・オーケストラのパートを含めてけして安易に演奏できる作品。これをまったく破綻なく、余裕すら感じる演奏で聴かせるのはソロ・伴奏ともさすがとしか言いようがありません。ヴィードーフ(このCDではアメリカ読みでウィードフトと表記)の3曲中2曲は、シュラーによる「ヴィードーフに捧ぐ」と同一の編曲で、アメリカのヘグヴィクやスピナッツォラらがヴィードーフ当時の演奏スタイルを多分に意識した演奏になっているのに対して、須川氏は一度音符をからだに取り込んだ上で須川氏なりの表現を盛り込んだ現代的な演奏を繰り広げています。中でもサクソフォビアの最後の仕掛けは大胆にして効果的。パントマイムは青木健氏の録音もありますが、これも個性の方向の違いが演奏に顕れていて、聴き較べるとおもしろいところです。最後をアディオス・ノニーノで締めくくるところが、須川氏らしいですね。超絶技巧を平気な顔をして余裕で吹きこなす須川氏もすごいと思いますが、個人的にはこういう抒情的な曲を品位を落とすことなく自在に演奏してしまうところが須川氏の真骨頂なのではないかとあらためて思いました。東京佼成WOもいつもどおりアンサンブルはカッチリしていますが適度にリラックスしたサウンドでサポートしています。
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よくコントロールされた美しい音色と、歌いこみながらも品を保つ(あるいは意図的に崩す)そのバランス感覚が須川氏の天才的な一面だと思うのですが、アリア=歌は須川さんの長所を十二分に発揮できるはず、という期待を裏切らない、すばらしいアルバムです。もちろん、よく聴いてみると技術的には相当難しいことをしているのですが、それを全く感じさせないというのも、須川氏ならでは。どこまでもポジティヴで、サービス精神にあふれた歌は、サクソフォンやクラシックという枠を超えて多くの聴き手が楽しむことができるでしょう。日本人による3曲の作品は、きわめてテクニカルに書かれたスロヴァキアン・ラプソディ、抒情的に徹したセレナード、その中間路線のトスカの接吻とそれぞれの作曲家のスタイルがよく出ています。そのカラーをすべてきっちり吹き分けているのが、また見事。。。
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シャンドス・レーベルからの2枚目のリリースは、佐渡裕指揮のBBCフィルハーモニックとの協奏曲集。解説は、緒方英子さん・吉松氏・本多氏の日本語の解説が英語他に訳されています(シャンドスのサイトから、ブックレットのpdfファイルがダウンロードできます!)。邦人の2作品は初録音で、アルビレオ・モードでの歌心が特に印象的です。イベールは原曲指定の11人の奏者との演奏で、早すぎずちょうど良いテンポの演奏から、カラフルなボールが坂道を転がっていくようなイベールの筆致が見事に紡ぎだされていて、圧巻です。高音の連続で難曲とされるラーションも、けして難しさを感じさせずむしろ控えめにおさえ、曲そのものの渋い色合いの魅力を描きだしていて、新鮮な印象を受けました。ほぼ同時期の発売となったアリアとある意味対照的ではありますが、どちらもクラシカル・サクソフォン奏者須川氏の卓越した実力を目のあたりにすることができる内容です。
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ロンドンを中心にアクティヴに活動している作曲家、エドワード・グレグソンの協奏曲集。なんせ、1曲目のトランペット協奏曲から好きな奏者であるオーレ・アントンセンがこれでもかと吹きまくってくれるので、嬉しくなってしまいます。しかし、いつ聴いてもパワフルで、元気がでるなぁ<アントンセン。。ピアノ協奏曲も多彩な表情を持つおもしろい曲でしたが、やはりサクソフォン協奏曲、、カッコイイ曲です。須川氏の、ニュートラルで機動的なサクソフォンが炸裂。効果的に使われているピアノやパーカッションも印象的でした。この曲のおもしろさは、須川氏以外で表現できるのか、、??
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サクソフォンと吹奏楽という編成では、2005年以来4年ぶりのアルバム。前のアルバムがやや規模の小さい曲が中心だったのに対して、今回は本格的な協奏曲3曲と実質的なアンコール1曲と、気合を感じる入った内容になっています。須川氏のソロにも佼成ウィンドにもその気合がみなぎっていて、曲の隅々まで張り巡らされた毛細血管にまで生命力が脈づいているのを感じます。吹奏楽とのバランスのよさが際立っているのがジョン・マッキーのアメリカ人作曲家らしい実にタフな協奏曲。ソロと他の管打楽器のフレーズの受け渡しやアクロバティックなフレーズの応酬、ゆっくりした部分でのバランスのよさに思わず息をのみます。BIRDSはいかにも真島氏らしい都会的で美しいメロディとモダンジャズを思わせる和音の流れが印象的。ライナーノーツで須川氏は「午後の寛ぎ」をイメージと書かれてますが、私はどちらかといえば仕事が終わって帰宅する通勤電車の中で聴きたいかな。マーティン・エレビーの協奏曲は、ブルージーなフレーズ満載の2楽章、ノリノリの3楽章といった曲調ですが、熱く歌いつつけして野暮や下品に聴こえないのは須川/山下/佼成のセンスなんでしょうね。よく聴くと正統的な様式で書かれている曲であることもわかってきます。でも、やはり一番心に染みたのは、美しい響きが淀みなく色を変えて流れ、まるで空を漂う雲をゆっくり眺めているような気持ちになるバラードでした。
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東芝EMIの 新・吹奏楽名曲コレクション アンサンブル・スタンダーズ シリーズの Vol.1 としてリリースされました。八重奏のアルバムというのも珍しいですが、せっかくこういう企画を出すなら、楽譜は入手できるようにしてほしい! 演奏内容そのものはやや練り込みが不足ぎみと感じましたが、さすが若き名手、高い水準です。しかし苦言を呈せば、選曲は大いに疑問。旋律そのものと、音のからみ合い妙味が魅力のホルベルク組曲は、サクソフォン・アンサンブルでも充分楽しめました(ラッシャーSQによる前例もあります)が、古典組曲のようなそれぞれ楽器特性を駆使した曲を、サクソフォンに置き換えてしまってはどーもピンときませんでした。ラ・ヴァルスは私の好きな曲なので期待していたのですが、原曲のもつ妙にフランス化されたウィンナ・ワルツのエレガントはどこへいってしまったの? ちょっと悲しかったです。ところで、このアルバムで一番不満なのは「須川展也と若き名手たち」という表現です。須川氏の知名度はいまさらですから、せっかくなら「名手たち」をもっとクローズアップしてほしかった、、 文句ばかり書いてしまいましたが、ソリスト級の方々による演奏のレベルはすばらしいです。ハイ。
須川氏がコンサートマスタを担当してる東京佼成ウィンド・オーケストラの邦人作品集から。協奏的幻想曲はブックレットにも書いてありますが、伊藤康英氏・須川氏の母校、静岡県立浜松北高校の委嘱で書かれた作品で、伊藤氏の指揮・須川氏のソロで初演されました。実は知人から初演のテープを聴かせてもらったのですが、演奏者が若いせいか?パワフルでいいですねー。最後の大見得のところなんか、パーカッションがすごくて、(何がすごいかは、ここでは言えませんー。)須川氏の気合も入りまくり。その印象が強かったので、このCDの演奏は残念ながら生ぬるいです(笑)いや、それは比較の問題で、この演奏も充分テンションの高い世界が繰り広げられています。 他の収録曲も隠れた名曲揃いで、吹奏楽ファンは必携のアルバムといってよいでしょう。
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東京佼成ウィンド・オーケストラの初欧州ツアーのライヴ録音で、スイスのレーベルからリリースされていますが、ブレーン(株)扱いで入手できます(ちなみにカタログNo.BOCD-7303「展覧会の絵」)。展覧会の絵の 古城 はソリストがクレジットされてませんが、須川氏の音ですね。エア・ノスタルジクはマイクのせいか、ソロの音量がちょっと小さめですが、実演ではピアニシモの綺麗な音色が響いただろうと想像できます。他の収録曲では太神楽の軽妙さが印象的でした。行進曲は典型的フェネル節で、ちょっとズッコけそうなところもありましたが、まあ御愛敬。
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東京佼成WOが、アメリカの教育音楽界の最大のイベント、毎年シカゴで行なわれるミッドウェスト・バンド・クリニックに参加した記念すべきイベントの実況録音盤です。ある意味、アメリカの吹奏楽の粋が集うこの場所で演奏することはステータスであり、紆余曲折の後、2002年の冬にようやく実現しました。演奏場所はボールルーム(舞踏会場)であり、けして音響は良くない会場なのですが、熱気と集中力はこのCDからも充分伝わってきます。須川氏にとってトマジの協奏曲は、既に何度も演奏しているレパートリで、ここでも余裕を感じさせつつも内面からの高揚感に溢れる佳演。とはいえ、やはりこの音響では生の感興を充分に伝えていない気が、、ないものねだりでしょう。また、ユーフォニウムの名手ボウマンの演奏する幻想的変奏曲も、まったく隙のない完成度の高い演奏であり、聴きものです。
はからずも、これがフェネル氏が東京佼成WOのタクトをとった最後の録音となってしまいましたが、そのフェネル氏が指揮したのがパーシケッティ、グレンジャー、フィルモアであったことは意味深いことですね。
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イギリスのChandosレーベルからリリースされた、若手の日本人指揮者藤岡幸夫による吉松隆作品集の第3弾。須川氏はもちろん、指揮者・オケもかなりの気合いの入れようで、サイバーバードはEMIのアルバムよりもこちらの演奏の方がお気に入り。EMI盤では、オケと須川氏の体温の違いが少々気になりましたが、この演奏は適度に抑制された部分と熱くなる部分がソロ・伴奏でうまく同期がとれていて、一つの大きな音楽を創り上げるのに成功しています。交響曲第3番は4楽章形式の古典的な構成の形をとった交響曲ですが、どうも私は吉松氏独特の節まわしが生理的にダメらしくて、途中から飽きてきました。ごめんなさい。2番はかなり好きなのですが。しかし藤岡氏の演奏解釈は明晰でスバラシイ! 作品を好意的に解釈していて思わず納得させられます。 これからもますます優れた録音を創り上げてほしいものです。
なおChandos社のオンラインカタログでサンプル音源をチェックすることができます。(英語)
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木五の世界は詳しくないのですが、ルヴァンヴェール木管五重奏団は国内の木五の団体としてはかなり頑張ってる方ではないのでしょうか。1982年に結成、途中メンバの交代はあるもののコンスタントにリサイタルを行なっています。このアルバムの春に、須川氏が参加していますが、下手をすると浮いてしまうサクソフォンの音色が他の楽器の音色とよいバランスに入っていて、感心しました。これは、ルヴァンヴェールと須川氏の両方の腕によるものと思います。この曲は、音楽、というより四方八方から鳥のさえずりを感じるような錯覚に陥るようで、ヒーリング・ミュージックといってもいいでしょう。他の曲も木五という編成のハンディを感じさせない、それでいて無理なく押しつけがましくない演奏で好感を持ちました。
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湯山氏の作曲活動50周年を記念したアルバムはこちらでも紹介しましたが、このアルバムはタイトルどおりガラ・コンサートのライヴ録音。尖がったゲンダイオンガクサッキョクカではなく、サトウハチロー、中田喜直の各氏に続いて日本童謡協会の会長である湯山氏の創り出す音楽は、人間に向けられた暖かい眼差しを常に感じます。「作曲という仕事は、作曲家が曲を書いただけでは終了いたしません。その曲を理解する優れた演奏家の協力と、その演奏を通して作曲家の心情を理解する暖かい聴衆の皆様がいらして、初めて作曲という営みが完成すると私は思っています」という作曲家自身の言葉が、氏の音楽のすべてを物語っています。
2枚組のうちかなりの部分が声楽曲で占められているのは、湯山氏ゆえのことですが、しかしディヴェルティメントを須川&山口という、おそらく日本でこの曲を演奏されたら最強であろうというコンビを起用した企画に拍手! 予想にたがわず、オリジナリティを感じさせつつも全体の調和や丁丁発止といったこの曲の醍醐味も感じさせるすばらしい演奏を繰り広げています。しいて気になったのは、マリンバの音量がちょっと大きいかな、という点。これは録音のせいでしょうね。まあ、結果として須川氏と山口氏の一騎打ち!ともいえるような迫真の演奏が、いっそう生々しく聴こえました。
もちろん、他の演奏も、曲に対する温度差は若干感たものの、湯山氏の世界を愉しむに十分な水準の演奏(まさに理解を得た優れた演奏家たち! あとは聴き手に委ねられてますネ)、中でも女性合唱曲の定番「愛すること」の透明感を失わない豊かな色のパレットが印象的でした。
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西村朗氏の作品集の中に、須川氏がソリストとしてクレジットされている、サクソフォン協奏曲魂の内なる存在があったので購入しました。西村氏の音楽にはいろいろな音楽が取り入れられており、それが高い次元で消化され音楽として組み立てられているのですが、残念ながら私自身はその音楽の魅力を十分に理解できていないのが現状です。しかし、ここでの須川氏のソロは、超絶技巧がこれでもかと続く楽譜を、あまりにすらすらとこなしてしまい、微塵の困難さも感じさせない、ある意味で超越してしまっている演奏、と言うことができるでしょう。他の2曲でも、ソリストの毅然たる演奏姿勢が目に浮かぶようでした。
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オーケストラのアルバムではあるものの、実質的に管楽器が主役の曲ばかり。もちろん、チェロの協奏曲はメインは弦だけどバックがブラオケ。グノーは9本の管楽器のための曲。
小交響曲、これまでにも何度か聴いたことがあります。しかしこういう演奏で聴くと、フレーズの取り方や楽器の重ね方など、やっぱりグノーっぽいチャーミングで端正な曲だな、と思いつつ、どことなくアグレッシブに聞こえるのはグノーにイギリスのテイストが混じっているから、井上氏のバトンゆえか。
サクソフォン協奏曲は、コンポーザ・イン・レジデンスだったロジェ・ブトゥリー氏の委嘱初演作品。フレーズがあまりメロディらしくないことを除けば、曲の構成、和音など、これはまっとうなクラシックの作曲技法を用いた作品。弦楽器が激しく刻む上を木管楽器が動きまわるようなオーケストレーションは、どことなく吹奏楽曲を思い浮かべておもわずニヤリとしてしまいます。須川氏のソロはライヴということもありもちろん大熱演。後半、やや技術的に苦しくなるところもありますが、それは須川氏のせいというよりは「そんなにソリストをいじめないでよ!」と作曲者に言いたくなるような (^^;
しかし、グルダの協奏曲の演奏にはぶっとびました。1楽章最初からドラムセット、エレキベースなどがビートを刻み、弦楽器はおらず(正確にはコントラバス1名)基本的にオーケストラの2管編成(フルートとバスーンは1本、当然サクソフォンはいない)。こんな妙な編成でロックやジャズがビッグバンドばりに赤面なく演奏され、かと思うと室内楽的な響きになったり、民謡やバッハをパロってみたりとハチャメチャな怪作。この曲、他にも何枚かCDを持ってるのですが、これまでは単に変な曲としか理解できていませんでした。が、今回のこの演奏は、それぞれの音楽的特性を徹底的に表に出しながら、場面転換がみごと。聞いていてなるほど、と目からウロコな演奏でした。チェロのソロにはまるでエレキギターの速弾きのようなフレーズが求められたり、超高音の高速フレーズが多用されたり、これまたソリスト泣かせ。最後の楽章は、村の楽隊の行進曲! もう、あまりに想像通りの行進曲、ピッコロのトリル、エンディングは、じゃ><<<<<ん|じゃん!とお決まりのパターン。。さすがグルダ、クラシックを壊してくれます。なんでも演奏会では、ソロのルドヴィートさん、ジーンズで登場して演奏したとか(ミラーボールがまわったとかまわらないとか)。演奏後のオベーションもすごい(録音されてます)。すみません、この強烈な演奏を聴いてしまうと、その前のサクソフォン協奏曲の印象なんか完全に吹っ飛んじゃいます。。グルダさん、きっと天国でほくそ笑んでるんだろうなぁ、それとも苦笑いかな。。
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以下は、ここまででご紹介していない、須川氏のアルバムです。(ジャケット紹介が可能なもののみです。)
「モリコーネ」 | 「バラード・コレクション」 | 「シンシアリー・フォー・ユー」 |
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「ニュー・サウンズ・イン・ブラス フィーチャリング須川展也」 | 「夢- 須川展也 クラシカル・ベスト」 | |
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