キャトゥル・ロゾーSEのバリトン奏者である服部氏は、ご夫人の服部真理子氏と「デュオ服部」として、1981年以来リサイタルを行なっています。吉之氏は1976年に東京芸術大学音楽学部を卒業、1979年に大学院を卒業後フランスに渡り、パリ市立音楽院に学び、同年審査員全員一致の一等賞で卒業しました。この間、故阪口新、秦賢吾、ジャック・テリーの各氏に師事しています。1975年から1978年までは、東京佼成ウィンド・オーケストラの首席を務めたということですから、下地氏や須川氏の大先輩にあたります。現在は後進の指導に力を入れていて、北鎌倉女子学園、洗足学園大学、コンセルヴァトワール尚美などで教鞭をとっています。また自身の活動のプロデュースのみならず、海外の盟友や後進のリサイタルも積極的に企画・運営しており、最近ではファブリス・モレティ氏やケネス・チェ氏日本でのプロデュース役をかってでています。東京サクソフォーン・ソロイスツの録音にも参加しています。
服部氏がソプラノからバリトンまでをあやつってます。バリトン・サクソフォンで演奏したヴォカリーズの"うた"は落ちついて聴くことができ、チャルダッシュの高速パッセージをバリトンで吹きまくるところは、服部氏の面目躍如という気がします。一方でソプラノで演奏された、ファンタジアのような曲では、やや音色が金属的に感じ、さらに柔らかな包み込まれるような音色を聴きたかった、とも感じました。ピアノの服部真理子氏は、「こんにゃく座」をはじめとする舞台音楽のピアノを手がける他、管楽器奏者の伴奏者としても知られ、ユージン・ルソーや雲井雅人氏のアルバムでもピアノを担当しています。
10年ぶりに発表されたソロ・アルバムは、日本のモモンガ・レコードレーベルからファブリス・モレティ氏のアルバムと同時リリース。お互いのアルバムにゲスト参加しており、モレティ氏は"エンブレイサブル・ユー"ヴァリエーションでソプラノ(服部氏はバリトン)を吹いており、また服部氏はモレティ氏のアルバムで2重奏を披露しています。服部氏はどの曲でも確信をもった音楽造りを行なっており、いい意味で年輪を重ねた奏者にしかできない貫禄を感じました(服部氏って、上手に歳をとられてますね!)。特にソナチネとフェルドのソナタにこめられた真摯な姿勢には頭が下がります。演奏者の息遣いをストレートに捕らえつつ、適度な残響も収められた録音もすばらしい!
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