Eugene ROUSSEAU


アメリカでもっとも有名なサクソフォン奏者といってよいでしょう。アメリカはイリノイ州のブルース・アイランド生まれ、シカゴ音楽大学・ノースウェスタン大学・パリ国立音楽院、アイオワ大学で学び、1964年からインディアナ大学で教鞭をとります。翌1965年にはカーネギー・ホールにデビューし、1969年にはポール・ブロディと共にワールド・サクソフォン・コングレスを主催します。最近ではウィーンの音楽アカデミーにも度々招かれています。また「サクソフォンのためのメソッド」(Kjos社)や「サクソフォンの高音域」(Etoile社)といった著作も発表しています。以上のように、演奏面はもちろんですが、サクソフォンの普及や後進の指導にも特に力を入れており、現在のアメリカでルソーの影響を受けた奏者は数え切れません。

ヴィヴラート過多にならない、抑制されたニュートラルな美しい音色が印象的で、表現力の幅も抜群です。マウスピースやリガチュアの開発にも積極的で、「ルソーモデル」といったブランドもあります。ルソー自身は、ソプラノは YAMAHA YSS-875をルソーモデルのマウスピースR3で、アルトは YAMAHA YAS-875 をルソーモデルのマウスピースNC4で吹いています。

下記にご紹介したアルバム以外では、G.ダノヴィッチSQのアルバムに参加したもの、およびザグレブSQのアルバムに参加したものを確認しています。他に、以前 Cornet レーベルからLP数枚がリリースされていました。

2001年、ルソーは門下のオティス・マーフィにインディアナ大学のサクソフォン教授の座を譲りました。下記の公式ページによれば、その後もクリニックやソロを中心に演奏活動を続けているようです。

Official Site(英語)


主なアルバム


「Saxophone Concertos」

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Grammophone 453 991-2
1971/4 Notre Dame du Liban, Paris (アナログ録音)
  1. サクソフォン室内協奏曲 (イベール)
  2. サクソフォン協奏曲 (グラズノフ)
  3. ファンタジア (ヴィラ=ロボス)
  4. サクソフォン協奏曲 (デュボワ)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)/ Paul KUENTZ 指揮 室内管弦楽団

やや古い録音ですが、ガレリア・シリーズとしてCD化されました。上記のカタログナンバーは輸入盤ですが、国内廉価盤としても流通しています。グラモフォン・レーベルとして初めてのサクソフォンものの録音ですが、演奏はオケがどうも腑抜けでいただけません。中でもアンサンブル的な要素の強いイベールなどは、オケの弱さが露呈します。寄せ集めのオケなんでしょうか。若かりしルソーが気合を入れて吹いているのに、残念です。ソロだけとれば、ファンタジアなんかかなりの出来だと思うのですが。

オススメ度:


「Saxophone Colors」

Delos D/CD 1007
1984/5/27 ヤマハ・エピキュラス・スタジオ、東京
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  1. フルート・ソナタ第3番 BWV.1035 (バッハ)
  2. ラプソディ (ドビュッシー)
  3. ファンタジア (ヴィラ=ロボス)
  4. 「ポーギーとベス」メドレー (ガーシュウィン)
  5. 小品 (ヘイデン)
  6. エレジー (フェルド)
  7. 4つの哀歌 (オレゴ=サラス)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)/ Hans GRAF (piano)

バッハのフルート・ソナタをソプラノ・サクソフォンで吹き、次のドビュッシーはルソー自身の編曲によるピアノ伴奏版という、なかなか気合の入ったアルバムで、伴奏は指揮者としても有名なハンス・グラーフ氏(東京佼成WOも振りました)。もうひとつ"ゆとり"とつややかさ、そして曲に対する思い入れがほしいとも思いますが。。。DelosレーベルからリリースされたCDですが、同社の Web ページで search をかけてもこのCDがひっかからない、ということは、廃盤でしょうか。通信販売のメーカのカタログにはまだ残っているようなので、今のうちですよ!

オススメ度:


「タイスの瞑想曲」

コジマ録音 ALCD-7021
1990/1/29-30 入間市民会館、埼玉県
  1. ヴォカリーズ (ラフマニノフ)
  2. 愛の悲しみ (クライスラー)
  3. 美しい夕暮れ (クライスラー)
  4. ハバネラ形式の小品 (ラヴェル)
  5. 組曲形式による性格的小品より パリジェンヌ風 (デュボワ)
  6. トスカ・ファンタジー (プッチーニ)
  7. オーボエ協奏曲より アンダンテ (マスネ)
  8. 「ポーギーとベス」メドレー (ガーシュウィン)
  9. メディテーション (カウフマン)
  10. 夢のあとに (フォーレ)
  11. 美しきロスマリン (クライスラー)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)/ 服部真理子 (piano)

タスキに「古今の名曲小品集」とあるように、小品が多く集められています。音色は美しいのですが、淡々と吹いているせいか、あまり面白みが感じられないのが残念。ヴォカリーズトスカ・ファンタジーなど、もっと切々と、感情的に吹いてほしいと思う反面、メディテーション美しきロスマリンのような、あまり吹き過ぎるとくどくなってしまうような曲はそれなりに楽しめました。

オススメ度:


「Saxophone Vocalise」

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Delos DE 3188
1994/9/12-14 St.Mark's Methodist Church, Bloomington, Indiana, USA
  1. 「ポーギーとベス」メドレー (ガーシュウィン)
  2. アルト・サクソフォンと吹奏楽のためのディヴェルティメント (ヘイデン)
  3. コル・ニドライ (ブルッフ)
  4. トスカ・ファンタジー (プッチーニ)
  5. ファンタジア・コンチェルタンテ (ヘイデン)
  6. タイスの瞑想 (マスネ)
  7. アルト・サクソフォンと吹奏楽のための協奏曲 (ムツェンスキ)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)/ Frederick FENNEL 指揮 ウィンズ・オブ・インディアナ

吹奏楽団をバックに吹いたアルバムで、指揮は大御所フェネル氏。吹奏楽団のメンバは、インディアナ大学の教授クラスの人たちだそうで、ウマいわけです。メンバ表を見てたら、チューバは名手ペラントーニ。サクソフォンにはトーマス・ワルシュの名前もあります。で、うますぎて爽やかに終わってしまっているフシがなきにしもあらずですが、ルソー自身は盟友に囲まれてリラックスして吹いているようで、東京佼成WOの木村牧麻氏の編曲によるコル・ニドライや、タイスの瞑想は、響きの中にルソーの余裕が感じられます。

オススメ度:


「Saxophone Masterpieces」

RIAX RICA-1001
1992/10 Czech Radio Studio 1, Prague
  1. ソナタ (クレストン)
  2. ソナタ (ムツェンスキ)
  3. サクソフォン・ソナタ (ヘイデン)
  4. 組曲 (カベラシュ)
  5. ファンタジア・コンチェルタンテ (ヘイデン)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)/ Jaromir KLEPAC (piano)

最近のルソーのアルバムはRIAXレーベルから出ており、どれもなかなかのレベルのCD揃いですので、興味ある方は同レーベルのページをのぞいてみてください。このレーベル、プロデューサが Hideaki Isoda という日本人らしいというのがちょっとアヤシいです。冗談はともかく、このアルバムは曲・演奏ともたいへん質が高く、ルソーのアルバムの中でも一番のオススメです。上品ですがけしてクールにならない、円熟した音色が堪能できます。中でも、私はルソーが好んで演奏するヘイデンソナタの端正な響きにハマりました。

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オススメ度:


「The Undowithoutable Instrument」

RIAX RICA-1002
1997/2 Budapest, Hungary
  1. オーボエ協奏曲 (マルツェッロ)
  2. 協奏曲 (チマローザ)
  3. オーボエ協奏曲 (伝ハイドン)
  4. フルート協奏曲第2番 (モーツァルト)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)/ The Budapest Strings

なんだかアヤシゲな造語がアルバム・タイトルになってますが、弦楽器をバックに管楽器の古典的な協奏曲をサクソフォンで吹く、という、ありそうでなかったアルバム。と聞くとギョッとする方もいるかもしれませんが、ルソーのソプラノ・サクソフォンは肉厚なオーボエの響きを現代的にしたような音色でこれらの曲を奏でます。適度に残響をとらえた録音とあいまって、音色がけして鋭くなり過ぎず、あたかも曲がサクソフォンのために書かれたものであるかのように錯覚してしまいます。と、ここまで書いていて気づきました。タイトルに偽り無し。。。伴奏の弦楽器にもう一工夫ほしい、というのはゼイタク?

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オススメ度:


「Eugene Rousseau and The Haydn Trio of Vienna」

RIAX RICA-1003
1997/5 Vienna
  1. カンティレナと舞曲 (アイシエンヌ)
  2. ピアノ3重奏曲 (ベートーヴェン)
  3. トリオ・コンチェルタンテ (スタイン)
  4. パルティータ (オレゴ=サラス)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)/ The Haydn Trio of Vienna

Riaxレーベルからの3作目はピアノトリオとの共演。CDを聴くまでは、どんな響きが飛び出してくるのかおっかなビックリでしたが、これはこれでサロン的な響きを愉しめました。ただ、この響きが世の中一般の室内楽ファンの人に受け入れられるかどうかといえば、ちょっとキビシイかな。ちょっと変わったサクソフォンの響きを楽しみたい方にオススメ。

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オススメ度:


「Eugene Rousseau performs music of Jindrich Feld」

RIAX RICA-1004 (P)1999
  1. アルト・サクソフォンとピアノのためのソナタ (フェルド)
  2. ソプラノ・サクソフォンとピアノのためのソナタ (フェルド)
  3. エレジー (フェルド)
  4. アルト・サクソフォン協奏曲 (フェルド)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)
Jaromir KLEPAC (piano)
Otakar TRHLIK 指揮 ヤナーチェク・フィルハーモニク管弦楽団

ルソーの盟友ジンドリッヒ・フェルドの作品集。ほとんどはルソー自身が初演した曲で、唯一ルソーの初演でないエレジーもアルバムSaxophopne Colorsに続いて2度目の録音で、愛着の深さが感じられます。どの曲でも技術的にはもちろん共感を伴った高い完成度の演奏で、ここでもどの音域でもニュートラルな音色で、必要以上の緊張を強いることなく、安心して音楽の流れに身を任せることができます。作品自体はどれも聴きやすいものではありませんが、このCDにおさめられた演奏はどれも模範たりえるものと言えます。

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オススメ度:


「Eugene Rousseau & Alain Crepin The Air Band of the Belgian Air Force

Jeanné JDR2271 (P)2005
  1. セレナーデ (ベンクリシュートー)
  2. ダホメー狂詩曲 (デ=ボエク)
  3. サクソフォンと吹奏楽のためのコンチェルティーノ (ビリク)
  4. サクセマ (ヴィードーフ)
  5. ハーレム・ノクターン (ハーゲン)
  6. サックスに捧ぐ (クレパン)
  7. 王子の誕生のための音楽 (クレパン)
  8. サニー・サンデー (ペーターズ)
  9. ライフ (ヴァイニェイン)

Eugene ROUSSEAU (saxophone)
Alain CREPIN (cond/saxophone[f])
ベルギー空軍吹奏楽団

サクソフォン奏者としてソロや4重奏のメンバーとして活動し、作曲家でもあり、そしてベルギー空軍吹奏楽団の指揮者でもある、多芸なアラン・クレパン氏。そのクレパン氏とルソー氏による、サクソフォンと吹奏楽のアルバムです。アメリカの曲からヨーロッパの曲まで、協奏曲から小品まで多彩なプログラムを、ソロもバンドも濁りのない美しい音楽を聴かせてくれます。バンドの響きは楽器内のアンサンブルが整ったヨーロッパの暖かい音。ベンクリシュートービリクのような曲は、やっぱりアメリカの豪快なバンドの音で聞きたかったな、とも思いますが、クレパンヴァイニェインのようなヨーロッパ系の曲ではそのサウンドの効果は絶大です。もちろんルソー氏の演奏は、どの曲でも吹き崩しなどのない、真面目でよくコントロールされた美しい響きに徹しています。

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「Brahms/Mozart」

Jeanné JDR2272 (P)2006
  1. クラリネット5重奏曲 op.115 (ブラームス)
  2. クラリネット5重奏曲 K.581 (モーツァルト)

Eugene ROUSSEAU (saxophone) / The New Budapest Quartet

クラリネット5重奏曲の超定番曲といえる2曲を、ルソー氏はサクソフォンで演奏してしまいました。曲の持っている構造や美しいメロディはサクソフォンでも十分楽しめますが、これはルソー氏の卓越した楽器のコントロールによるところが大きいようです。クラリネットによる演奏が諧謔さや渋さを含んだ大人の演奏としたら、サクソフォンによる演奏は溌剌として健康的な色気さえ感じる若い演奏といえるでしょうか。70歳近いルソー氏の果敢な挑戦、まだまだ期待できそうです。

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オススメ度:


「Bernhard Heiden Chamber Music」

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Cadenza 800 920 DDD
  1. クラリネットと弦楽のための5重奏曲 (ヘイデン)
    James CAMPBELL (clarinet), Corigliano Quartet
  2. ピアノ4手のためのソナタ (ヘイデン)
    Cordula HACKE, Leonard HOKANSON (piano)
  3. 前奏曲、主題と変奏 (ヘイデン)
    Eva LEG&ering;NE (recorder)
  4. アルトサクソフォンとピアノのためのソロ (ヘイデン)
    Eugene ROUSSEAU (saxophone), Cordula HACKE (piano)
  5. フルート、コントラバス、ハープのための前奏曲 (ヘイデン)
    Carol WINCENC (flute), Ann YEUNG (harp), Bruce BRANSBY (contrabass)
  6. 木管5重奏とアルト・サクソフォンのためのイントラーダ (ヘイデン)
    Eugene ROUSSEAU (saxophone), Thomas ROBERTELLO (flute), Nicholas DANIEL (oboe), James CAMPBELL (clarinet), Kim WALKER (basson), Amy SMITH (horn)

ルソーがフェルドとならんで積極的にとりあげる、ヘイデンの作品集。木管楽器による室内楽作品が集められており、演奏者もクラリネットのジェイムス・キャンベルやオーボエのニコラス・ダニエルなど有名な奏者が参加しています。どの曲も、難解とまでいわなくても、けして耳あたりのよい音楽ではないのですが、ルソーの演奏をはじめ、技術の確かさと音色の美しさゆえに、つい惹きこまれてしまう音楽に仕上がっています。技術的に難があったり思い入れの激しい解釈による演奏だと、こういったきっちり作られた曲の魅力がまったく伝わらなくなってしまいますよね。そんなことを考えさせるアルバムでした。

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