1986年東京藝術大学を卒業。喜田賦、阪口新、冨岡和男の各氏に、室内楽を大室勇一に師事しました。在学中からアルモ・サクソフォン・クァルテットのメンバとして活躍しました。1988年にはバリトンサクソフォンによるソロ・リサイタルを開いています。2004年からは東京佼成ウィンド・オーケストラに入団、またカラーズ、トリオ・クリスタル・ピラミッドなどのグループにも参加しています。武蔵野音楽大学、聖徳大学および聖徳大学付属聖徳高校、昭和音楽大学の非常勤講師を務めています。
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2005年9月リリースの、日本人初のオール・バリトン・サクソフォンによるアルバム。海外では既にヘンク・ファン・トゥイラールト、トッド・オクスフォードがオール・バリトンのCDをリリース、またLP時代にもあることはありましたが、日本人では初めてでしょう。栃尾氏は早くからバリトン・サクソフォンをソロ楽器として積極的に紹介しようとしてきた経緯があり、既にバリトンでのリサイタルも開いていますので、このCDは満を持しての発表といえるでしょう。そんな意気込みを期待してCDを聴くと、むしろ謙虚かつ真摯に構えた演奏に肩透かしを食らうかもしれません。しかし、このCDで展開されている栃尾氏の演奏は、派手さを意識的に控え、ソロ楽器としての機能性や独特の音色に必要以上に寄りかかることもなく、その結果シューベルトやシューマンの音楽への愛情を自然に感じさせてくれます。特に詩人の恋や楽に寄すのような物語性が背景にある曲に共感を覚えました。万人ウケするかどうかは微妙な内容とは思いますが、バリトン・サクソフォンへの偏愛がにじみ出ているこの演奏を通して、より多くの人にこの楽器の魅力を感じてもらえればいいですね。
野平氏のピアノも、余計な思い入れを排した純音楽的なアプローチで、栃尾氏の音楽と一体となって音楽の奥行きを深めるすばらしい演奏です。
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ピアノ奏者/作曲家の高橋悠治氏の委嘱作品をアルバムタイトルにした2作目も、プログラムからもわかるとおり、非常に綿密に考えられた跡が感じられる内容です。無伴奏チェロソナタでの考え抜かれたフレーズ(とブレス)の取り方ひとつとっても、その真摯さを感じることができます。聴きなれた小品でもけして手を抜かず/悪ノリせず、原曲の調性まで尊重しながら(移調は白鳥のみ)サクソフォンならではの"音楽的"表現が盛り込まれています。高橋氏の2作品は、楽譜を見る限り(高橋氏のサイトでpdfファイルをみることができます)技術的にむちゃくちゃ難しいというわけではないのですが、どこをどうやったらこんな深い音楽になるんだ?という、音楽的なセンスや思慮深さが必要とされるものです。栃尾氏の演奏は、こういった曲でも力むことなく、作曲者の意図に迫っています。
サクソフォンの録音としては少々地味な響きかもしれませんが、この楽器による純音楽的なアプローチ方向を目指したアルバムとして、多くのクラシック・ファンの方に聞いていただきたいアルバムです。
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フランスの作曲家の小品とソナタを中心に構成されたアルバム。もちろん、すべてバリトン・サクソフォンとピアノによる演奏で、実に朗々とメロディが歌われています。でも、ただのムード音楽にならずクラシック音楽として成立しているのは、栃尾氏と高橋氏が曲の構成をしっかり計算し、卓越したセンスとテクニックに支えられた演奏を繰り広げているからでしょう。…と書いたら、CDのタスキにほとんど同じことが書かれてました(^^; のでもう少し付け加えると、栃尾氏の演奏は、サクソフォンの長所と短所をしっかり見極めた上で、原曲の価値を磨き上げて音楽に昇華させていると思うのです。サクソフォンだからという甘えは一切なく、より広範囲な(クラシックという枠も超えた)音楽を目指しているのではないかと感じました。
私も一バリトンサクソフォン奏者として、音色、表現、テクニック etc. このCDに学ばなければならないところがたくさんあります。
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