アメリカのインディアナ大学を卒業したサクソフォン奏者。ユージン・ルソーに師事し、またジャン=イヴ・フルモーにも学びました。1998年のアドルフ・サックス国際サクソフォン・コンペティションで2位、1996年にジャン=マリー・ロンデックス国際サクソフォン・コンペティションで3位を得たのをはじめ、ここ数年数々の賞を受賞しています。現在はアメリカでヤマハ・パフォーミング・アーティスト&クリニシャンとして、アメリカのいくつかの大学でマスタークラスを担当しています。ちなみに黒人です。
ちなみに下記のアルバムで伴奏を担当している鈴木晴子氏はもちろん日本人で、インディアナ大学でピアノをメナヘム・プレッスラーに師事しました。またアメリカで多くのコンペティションで入賞しています。マーフィー氏とは夫婦で、アドルフ・サックス国際サクソフォン・コンペティションで入賞したときも伴奏をつとめていました。
RIAXレーベルからリリースされたアルバム。マーフィの音色は、師匠のルソー氏同様とてもニュートラルで、どの曲も淀むことなくくっきりと演奏されています。技術的に不安はなく、特に音の跳躍時の安定感はすばらしいです。ただ、私にはマーフィ氏の個性をこのアルバムから聴き取ることができず、その点に不満を感じました。また、もうすこしほっとするような演奏を聴きたいとも感じましたが、これは選曲のせいでしょうね。おそらく、これからも意欲的な活動が期待できそうです。
このアルバム録音当時はマーフィと晴子氏は婚約中だったとのことで、アルバムは晴子氏に捧げられています。日本人だと、照れくさくてなかなかこういうことができないと思うのですが、さすが、アメリカ人はやってくれますね。ちなみに、アルバムタイトルは、2人が参加したアドルフ・サックス国際サクソフォン・コンペティションの開催地、ディナンの想い出にちなんだもので、選曲もすべてこのコンペティションのために用意した曲ということです。
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ソロ2作目はAURレーベルからリリースされたました。マズランカの大曲を中心に据え、比較的耳になじみやすい曲を非常に高いレベルで演奏しています。マーフィの演奏はどこまでも破綻がなく、たとえばトマジのとても細かいパッセージなども鼻歌のように軽く聴こえるほど。細部の仕上がりもたいへんすばらしいのですが、このアルバムの最大の特徴は、演奏のすべてにわたってとても「優しい」気持ちがあふれていることでしょう。白鳥やアリア、浜辺の歌のような曲では、その優しさはすっと心にしみいるようです。マズランカのような起伏の差が激しい曲では、力強い部分も充分コントロールされた節度を感じ、ピアノの部分の繊細さがいっそう際立つ演奏になっています。
このアルバムはピアノの晴子夫人と3人の子供たちに捧げられており、ジャケットを含めた優しさの源はここにあるのではないか、と感じたのは考えすぎでしょうか。もちろん、サクソフォンの演奏にぴったり寄り添ったピアノであることは言うまでもありません。
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マーフィー氏の新譜は、吹奏楽との協奏曲集。しかもクレストン、マズランカという超大作2曲、それにアンコール的なトスカ・ファンタジーという、聴きごたえのある内容です。マーフィー氏の演奏は、どこまでもニュートラルで優しい演奏。マズランカでは、攻撃的な演奏というよりも自らを嘆くような深い響きです。クレストンでもまったく危なげなく、いかにもアメリカらしいニュートラルでのびのびとした響きです。でも、やっぱり私としては、歌心あふれるトスカ・ファンタジーが一番ほっとして聴くことができました。
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