トルヴェール・クヮルテットのアルト吹きである彦坂氏は、昭和音大サクソフォン科および埼玉第一高校音楽コースの講師の職にあり、またソロ活動も着実にこなしています。
1982年に東京芸術大学に入学、1985年に安宅賞を受賞し、1986年に管打楽器科を首席で卒業、1989年に同大学院を終了しています。その間に中村均、前沢文敬、故大室勇一の各氏に師事しました。1994年以来たびたびリサイタルを開いており、現在上野学院大学・桐朋学園芸術短期大学の講師を務めています。
アマゾンでこのCDをチェック! |
ソロアルバムの第1作目は、比較的演奏されることの少ない佳曲に、邦人作品を混ぜたプログラムになっています。彦坂氏の音色はものごし柔らかく優しい響きで、それがたとえば風に吹かれた柳のようにやモルゲン!のような柔和な曲にはあってますが、フィル・ウッズのソナタのような曲の場合はちょっと物足りなく思います。そして、なにより録音がボケてるように聞こえてしまい、サクソフォンの音の輪郭がはっきりせず、知人いわく「おフロで演奏してるみたい」。まあ、再生装置を選ぶということなんでしょうけど、、ということで、あまりこのアルバムは聴いてません。すみません。
アマゾンでこのCDをチェック! |
ソロCD2作目は、ジャズ的な要素が含まれている曲が多いのが特徴でしょうか。1作目よりはこちらのほうが楽しんで聴けました。もう少し踏み込んだ解釈や大胆な表現もほしかった気がしますが、フリッソンでみせる軽妙さは、前のアルバムにはなかったものです。また、録音が鮮明になった分、伴奏陣との微妙な呼吸の加減も感じられるようになりました。実力としてはかなりのレベルにある彦坂氏、次なるすばらしいアルバムに期待しています。
オススメ度:
アマゾンでこのCDをチェック! |
すべてフランスの、それも意外と録音に恵まれなかった曲が録音されています。物語はミュール編曲の8曲が、またケクランは全15曲が演奏されており、これまで断片的にしか聴くことのできなかった曲をまとめて聴くことができるようになったのは喜ばしい限りです。演奏、というより録音を聴いて感じたのが、曲ごとの表情がの変化があまり感じられず、淡々としている点が気になりました。いや、意図的に淡々とした演奏なのはわかるのですが、録音のせいか焦点が定まってないようにも聞こえました。個人的な好みとしては、全体に響きを押さえて、サクソフォンもピアノも音の輪郭がある程度感じられる録音が好きなので、特にケクランの静謐な響きには清潔感のある音色がほしいと思いました。
まだ聴きこみ方が足りないので、今後何回か聴いて、感想を改めたいと思います。
オススメ度:
アマゾンでこのCDをチェック! |
サクソフォン2本の録音は、実はあまり多くないのですが、このCDについてはそのなかでも群を抜いてすばらしい内容であることは間違いないでしょう。長年トルヴェールQで一緒に活動している2人ですから、技術的な問題は全くないのはあたりまえ。ピアノすら入っていない2本だけの演奏ですが、流れてくる音楽の内容の濃さはフルオーケストラに匹敵するでしょう。あるときは2本が全く同質化し、あるときは掛け合う様子は、それぞれの音楽観を確立した上で成り立つ成熟した関係であり、その上で音楽のベクトルは寸分も違う方向を向くことはありません。これは2人の間に長年の信頼関係が築かれている証でしょう。さらにすばらしいのは、表現上であざとさを全く感じない点です。編成の制約から音色の多彩さにかけるのはやむをえないですが、楽器の音色の華麗さ・美しさだけに頼らない真摯な音楽を楽しむことができるアルバムです。
オススメ度:
アマゾンでこのCDをチェック! |
曲目はウォルトンやマーラーから、フィル・ウッズにミルトン・ナッシメント、そして日本人の3人による曲まで、およそジャンルを超えたものであることは一目瞭然。そしてすばらしい音楽にはジャンルの垣根がないことを、彦坂氏の演奏はあらためて気づかせてくれました。
ジャケットが物語るように、親と子の絆を強く意識したアルバム(実際、彦坂さんと2人の息子さんの手だそうです)。そのコンセプトどおり、これまでのアルバムに比べて、パーソナリティがストレートにあらわれているように感じます。究極の芸術性や技巧性を追及する音楽というより、日常的で、音の一つ一つに優しさや慈しみがこめられた、いわば晩ごはんの味噌汁的な音楽です(意味不明でスミマセン、最大限の賛辞を贈っているつもりです)。
オススメ度:
アマゾンでこのCDをチェック! |
木下牧子さんは、管楽器の関係者の間では吹奏楽コンクールの課題曲を書いた作曲家として知られているかと思いますが、やはりこの方の本領は合唱曲や声楽曲でしょう。このアルバムは声楽作品は3曲録音されていますが、その中の1曲、バリトンのための父の唄に、彦坂氏がアルトサクソフォンで参加しています。声とサクソフォン(とピアノ)という編成は、サクソフォンの音量が大きいのでバランスが難しいのではないかと思ってましたが、そこは作曲の妙、そして演奏の妙。声とピアノだけの作品よりも、音色が多彩で幅の広い音楽になっています。他の2曲も、一部かなり難しいと思われる箇所も全く不安を感じさず、日本語の歌詞のひとつひとつを大切に歌いこむ様子が伝わってきました。
アマゾンでこのCDをチェック! |
久しぶりで吹奏楽関係のCDを買った気がします。内容はみてのとおり吹奏楽によるサクソフォン協奏曲集で、1曲ごとにソリストが違うというゴージャスな企画。ソリストも、吹奏楽もうますぎます。音楽の方向性を常に見失わず、技術的にもまったく破たんすることなく、多彩な音色と表現でこれらの曲の持っているポテンシャルを描き出しています。どの曲も、実演で聴いてたらさらに盛り上がるだろうなぁ。。
仕上がりのすばらしさに驚くと同時に、最近の吹奏楽のCDのリリースについて考えさせられる面もありました。ここ十数年で、吹奏楽のCDは国内盤だけでも毎月数枚というレベルでリリースされています。これは、製作コストや販売コストが低下した結果、マーケットの需給バランスにコスト的な目途がついてこれだけリリースされるようになったのではないかと考えています。また、同時に演奏の技術的なレベルが格段に上がってきていることも副次的な要因としてあるでしょう。(正確に分析してるわけではないので、あくまで推察)
それだけ製作されるCDは多くなった一方、たとえば数十年時間が経ってもなお「名盤」と言えるような録音というのは、比例して増えてきてるのでしょうか。以前のように、リリース点数は少ないけれども、コンセプトを充分練り上げ、時間と場所を超越する普遍的な内容を持つ録音が、今どれだけリリースされてるのかな?と、気になるのです。冒頭にも書いたとおり、最近の吹奏楽系のCDは買っていないので、あくまで勝手に懸念しているだけなんですが。
CD媒体だけではなく、作品についてもどうなのかなぁ。。そんなことをふと考えてしまったアルバムでした。