沖縄生まれ。1976年に国立音楽大学を武岡賞を受賞して卒業、石渡悠二、故大室勇一他に師事しました。その後フランス国立ボルドー音楽院に留学、在学中はフランス国営ラジオやテレビにも出演しました。サクソフォンをロンデックスに師事し、一等賞を得て卒業しました。帰国後は東京佼成ウィンド・オーケストラのアルト・サクソフォン奏者として活躍しました。現在はリサイタル活動や1980年に結成の東京サクソフォン・アンサンブルでの演奏活動も続けています。
個人的には、初めてサクソフォンのリサイタルに行ったのが、下地氏のこまばエミナースでのリサイタルだったり、私が学生の時分に楽器の練習をしてるとふらりと現れて話しかけてきたり(大学の近所にお住まいだったらしい)、という気さくな人柄が印象に残っています。
待望の、下地氏初のソロアルバム。ブックレットによれば録音のクォリティにもこだわったようで、なるほど少しオン・マイク気味ながら息遣いを感じるサウンドになっています。もっとも、スラー奏法やブレスコントロールの難しい個所などで、響きでカバーしたいと感じた個所がありました。また、キーノイズがダイレクトに入ってしまっている点も残念ですが、これは録音のポリシー上仕方がないのかなぁ。下地氏の演奏について客観的にコメントできる立場にないのですが、一つ一つの小品を丁寧に音楽に昇華させようとする姿勢が感じられます。奇抜さを求めず、オーソドックスなものを目指しながら、少々朴訥ですが演奏の根底に流れには確かな愛情が流れていて、下地氏の人柄がしのばれます。曲によってアルトとソプラノを持ち替えていますが、チェロが原曲の白鳥や夢のあとには、アルトで演奏してほしかったなぁ、、やはり、下地氏にはアルトが似合うような気がするのです。
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ジャケットの絵がどことなく懐かしい、ほのぼのとしてすてきなアルバム。無伴奏のファンタジーを含め、全編ソプラノサクソフォンによる演奏で、ヴィヴラートを利かせた演奏が多めの残響で録音されています。どの曲も下地氏の思いがひとつひとつのフレーズにたっぷりこめられていますが、ややもするとその思いが大きすて、受けとめる私としてはちょっともたれてしまったというのが正直なところ。草原の風のような、さわやかな"パストラール"を感じたかったな、と思いました。とはいえ、もちろん技術的には文句なく、下地氏の刻印つきの音楽を楽しむに不足ありません。今度は、アルトによるアルバムを聴いてみたいな、、
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前作から2年ぶりの録音となるアルバムは、20世紀中期のフランスの作曲家によるサクソフォンにとって重要なレパートリーが集められています。これらの曲で開眼し、フランスに留学経験もある下地氏にとっては、これらの曲は数え切れないほど繰り返し演奏してきたレパートリーばかり。もちろんそれは演奏を聴いても明らかで、下地氏はこれらの音楽を、まさに体の一部であるかのように吹ききっています。フランスの正統派の影響(たとえば師匠ロンデックスの)が感じられたり、独特のクセを感じる個所もありますが、それを含めてこれは下地氏自身の存在を詰め込んだ音楽であり、外面的な効果を追わず、信じる音を奏でています。特にデザンクロでその強い確信を感じました。自然で鮮明な優秀録音がその演奏に華を添えています。
CDを聴き終えて、浮かんだ言葉は「不惑」。下地氏、どんな境地でこの録音に臨んだのでしょうか。。
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ある程度以上の世代の吹奏楽ファンにとっては、このアルバムは涙無しには聴けないのではないでしょうか。私自身、小遣いをはたいて手にした2枚組のレコードを擦り切れるほど聴きました。実のところ私はこのアルバムに対して冷静なコメントを書ける立場ではありません。今でこそリード博士は毎年何度も来日しては各地で活躍されていますが、このアルバムはリード氏が初来日した1981年のもので、佼成ウィンドの演奏も新鮮な感動に溢れたものです。中でも、ミュージック・メーカーズ、ロシアのクリスマス音楽、アルメニアン・ダンスは鳥肌もの。日本の吹奏楽史上、エポックメイキングなアルバムのひとつです。
このアルバムで下地氏がバラードのソロを担当しており、癖のない美しい音を堪能することができます。須川氏や田中氏の音色も好きなのですが、下地氏の、じっくり醸され寝かされたワインのような芳醇なオトナの音色に酔いしれるのも、いいですね。
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