1996年雲井雅人氏氏を中心に、門下生三人とともに結成された団体。2000年に現メンバとなり、同年12月にデビュー・コンサートを行ないました。雲井氏以外のメンバは、テナーの林田氏の主宰するフェロー・サクソフォン4重奏団のメンバでもあり、またそれぞれソロやアンサンブル活動に活躍しています。
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パルティータの最初の1音から自信に満ち溢れたすばらしい演奏。どこをとっても強固で力強いアンサンブルの響きです。アルバムタイトルになっている、全6楽章30分近い大曲マウンテン・ロードは初演者のトランスコンチネンタルSQに優るとも劣らない、気合いたっぷりの取り組みに圧倒されました。技術面はもちろん肉体的・精神的に極めて負荷が大きく、中途半端に取り組めば簡単に玉砕してしまうこと必至のこの曲ですが、まさに渾身の演奏といってよいでしょう。バッハとマズランカの作品を対比させるアルバム構成も、雲井氏らしく考えられたもの。欲を言えばバッハはもう少し等身大であってほしかったのと、マズランカはさらに肉食獣的なヴァイタリティがほしかったとは思いますが、あくまでそれは私の趣味の問題。次のアルバムでは、この団体の抒情的な面を是非聴かせてほしいものです。
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2作目のアルバムも、アメリカの作品に果敢に取り組み、その前後を編曲作品を配置する構成となっています(前のアルバムも似たような構成だ、、)。まずはモーツァルト。軽妙な響きはモダンですが、たしかにそこに息づいているのはモーツァルトの優しい無邪気な音楽です。4本のイントネーションが十分に統一されている雲井Qの長所が活かされています。続くケックレーの飄々とした表情もすてき。ミニマル風の現代音楽ですが、演奏者が完全に曲を掌握し演奏していることが聴き手にも快感をもたらします。アルバムタイトルになっているチェンバー・シンフォニーへの取り組みは凄まじさすら感じます。特に哀歌というべき2楽章は、このアルバム中最も強靭な求心力をもった演奏。さらにプレストの4楽章では終始高速のパッセージがフォルテシモで続きますが、どんなに声高になってもアンサンブルがけして崩れず、説得力はさらに増します。ヴィヴァルディのモテットは曲調こそゆっくりですが、音楽の凝縮度は持続され、聴き手は最後まで惹きつけられずにいられません。
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前のアルバムでも雲井Qらしさを十二分に感じることができましたが、さらに個性を強く発揮したアルバムといえるでしょう。北方寛丈編曲によるバッハは、編曲者と演奏者の創意工夫を織り交ぜつつ、原曲バッハの作品との折り合いが加減が絶妙です。しかし、アルバムの白眉はやはり雲井Q自身が世界初演を果たした、アルバムタイトルにもなっているレシテーション・ブックでしょう。響きの時間的変遷を追求するフランスのオリジナル作品とはベクトルが違うこの曲を、今の日本でここまで徹底して演奏することができるのは雲井Qしかいないでしょう。グラズノフの響きも、聞きなれた華やかな響きとは一味違った、自分自身を徹底的に問い詰めるような、ある意味自虐的な演奏。終楽章では、通常楽譜を修正して演奏するところを、あえて?そのまま演奏しているのもユニーク。
それにしても、このジャケットはカッコイイですね。クラシカル・サックスというよりは、ジャズがソウル系ですね。
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大作に挑んだ前作と対照的に、コンサートでもよく取り上げられる比較的リラックスして聴くことのできる作品を集めたアルバム。軽々吹いているように聴こえても、曲によってはかなりのテクニックを要求される曲が多く、リラックスできるのは演奏者側ではなく、あくまで聴き手、ですね。日本の民謡(「3つの富山県民謡」他)から、フランスの定番曲(「民謡風ロンド・・」)、グリーンスリーブスからギリシャ組曲、アルベニスのスペイン組曲からの抜粋まで、さまざまなスタイルの曲に、気負いなく自然に対応していますが、絶妙のためと歌心、そして厚いのにもたれない響きで、曲の魅力がきちんとプレゼンテーションされている点はクモQならでは。富山県民謡や櫛田氏の万葉、伊藤康英氏の琉球幻想曲、そして彼方の光などの日本の曲も、主観と客観のバランスが絶妙。サクソフォン・ファン以外の方でも、サクソフォン四重奏の魅力に納得してもらえるであろう、実に魅力的なアルバムです。
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