1962年ベルリン生まれのサクソフォン奏者。ベルリンの Hochschule der Künste でサクソフォン、電子音楽、作曲を学び、渡米しマンハッタン音楽学校で学びました。また1988年にはオーストラリアの民族楽器ヂジリドゥを演奏・研究を始めました。1990年以来、ベルリンを拠点にフリーランスで即興演奏家、ロックミュージシャン(!)、作曲家などなど多彩な活動を繰り広げています。
自作を含め、すべて現代曲のプログラム。冒頭の街路(Streets)では、肉声を交えたエキサイトな曲想に、ロックのようなグルーヴ感を感じました。他の曲は、アルバムのジャケットの装丁やタイトルから想像できるとおり(?)ややドロドロ気味(失礼)の曲が続き、少々食傷気味でしたが、確実な技術に裏打ちされた真摯な演奏であることには間違いありません。
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現代音楽専門の mode レーベルからリリースされた、ケージがサクソフォンのために書いた作品を集めたアルバム。ケージの作品といえば Four 5 くらいしか知らなかったのですが、けっこう曲があるのですね。しかも、 Volume 1 ということは、続編にさらに期待がかかってしまいます。さて、はじめから最後まですべてケージということで、すみませんが私にとってこのアルバムが技術や表現の面ですばらいいものであるのか、判断に苦しむところです。しかし、おそらくケージが描こうとしていたと思われる立体的な音空間が、スピーカを通してたしかに描かれている点、ケージの「音楽」は充分再現されているのではないか、と直感しました。なかでも龍安寺の響きが一番生理的にしっくりきたのは、やっぱり私はニッポンジンだからでしょうか、、
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ジョン・ケージ全集第35弾にあたる、ケージのサクソフォン作品集2巻。ふう、壮大なプロジェクトですが、クリーゲルがすべての作品およびコンセプトに参加、非常に充実した内容となっています。オリジナル作品のみならず、アトラス・エクリプティカリス、バリトン・サクソフォンのためのソロの2曲は、オーケストラ曲からのスコア抜粋によるものです。収録曲は比較的初期の作品が多く、ケージ=偶然性だけでは片付けられない多様性を垣間見ることができます。ケージの語法そのものを私自身が十分理解できていないので、曲の解釈については論じることは避けますが、オケ曲からのパート抜粋が曲として成立する、というのもケージならではなのでしょう。現代音楽に取り組む機会のある方には一聴をおすすめしたいアルバムです。
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サクソフォンで演奏されるケージの作品といえば、アメリカのコンテンポラリー曲に強いジョン・サンペン氏に捧げられた Four 5 や、ステファン・ヴォルペ氏の追悼のために作曲された Five 4 が有名ですが、ここでは楽器が指定されていないOne 7、Four 6が収録されています。これらの曲は、ケージの作品の中でももっとも抽象的なもので、例えば One 7 は One=1人の奏者のための7番目の作品、という意味になります。ケージは「タイム・ブラケット」という方法論で曲を書いていて、これは音とそれを演奏する時間域(たとえば1分から1分30秒の間とか)を指定し、実際にそれを奏者がいつ演奏するかは奏者自身の判断できめるというものです。あらためてここで様々なナンバーピースの作品群を聴くと、どの曲も音と音(またはノイズ)の間に沈黙と緊張感があります。4'33"は最初から最初まで演奏音を発しないという過激さゆえどんどん曲解されていったフシがあると思っているのですが、そのポリシーをさらに抽象化・純化していったのがこれらのナンバーピースなのかと察してますが、さて。
アルバムから聴こえてくるのはあちらこちらで立ち上がる音ばかりで、例えばスカルプチャー・ミュージックではすべての楽器の音がマイクで拾われ混ぜられ、ホワイトノイズのように迫ってきたかと思えば次に沈黙が続くという繰り返し。でも、けしてケージの音楽が理解できるようになったわけではないのに、抵抗感は薄れて音を聴き込むようになってしまいました(笑)
ちなみに有名な4'33"も、オープンウィンドウバージョンと、スタジオ録音バージョンの2種類が録音されているので、聴き比べてみるのも一興でしょう(笑)
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2003年に亡くなったベリオの没後にリリースされた、セクエンツァ・シリーズの完全版。これ以前に在命中にリリースされたDeutch Grammophon からの作曲者による監修版やNaxos盤などがリリースされていますが、このmode盤は改作または作曲者の了解のもとで編曲された版を(おそらく)すべて加えた上、ソロ楽器のための作品も含んでいます。
もちろんこのCDは資料的価値にとどまりません。サクソフォンは7b番がクリーゲルのほか、9b番がトーマス・ケランドを演奏しており、特にクリーゲルの演奏はテンションの高い圧倒的な世界を繰り広げています他の楽器では、ピアノに高橋アキ、ヴァイオリンにアーヴィン・アルディッティ、アコーディオンにシュテファン・フッソング、、、と、現代音楽を熟知した超豪華な顔ぶれ。鬼気迫る演奏を、すばらしい録音が鮮明に捉えており、私の好みとしてはDG盤よりもこのmode盤の方が好きですね。100ページを超す詳細なブックレット(英語)も資料として秀逸です。
アルバムがおやすみなさい!で終わってるのは、このレーベル一流のジョークなのかしら?
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