Daniel DEFFAYET


1922年生まれ、8歳でヴァイオリンを始め、12歳でサクソフォンを手にしました。16歳でマルセル・ミュールに師事し、17歳で早くもミュールの代役としてパリの一流オーケストラで演奏するようになったというので、早熟ですねー。1942年にパリ国立音楽院にサクソフォン科が開設されると同時に入学、翌年に一等賞をとって卒業し、その後も音楽院でヴァイオリン、和声、室内楽を学びました。1968年にミュールが同音楽院を引退すると、後任として教授に就任しました。

デファイエはソリストとしても有名ですが、デファイエ・サクソフォン4重奏団のリーダとしても知られています。

経歴からおわかりのとおり、デファイエはミュール直伝の後継者です。したがって、ミュールの作り出した世界から一歩も出なかった、という批判もあり、少なからずそれはあたってる部分もあります。しかし、フレンチ・サクソフォンの正統派であり、華麗なサウンドで私たちを魅了したという事実は過小評価すべきではないと思います。

2002年末、10月のミュールの逝去に続いて、デファイエの訃報が飛びこんできました。12月27日、享年80歳。また一つ、サクソフォンの歴史を築きあげた当人が、星となってしまいました。合掌。



主なアルバム


「愛の喜び/魅惑のサクソフォーン」

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Firebird(KING) KICC 64
1977/7/13,14 石橋メモリアル・ホール、東京
  1. 愛の喜び (マルティーニ)
  2. ヴァイオリン・ソナタ第1番より パストラール (ヘンデル)
  3. アダージョ (コレルリ)
  4. タンブラーン (ラモー)
  5. メヌエット (リュリ)
  6. 居酒屋のミュゼット (クープラン)
  7. アリア (ルクレール)
  8. パスピエ (ラモー)
  9. ヴァイオリン・ソナタ第3番より アレグロ (ヘンデル)
  10. 「セルセ」より ラルゴ (ヘンデル)
  11. バディネリ (バッハ)
  12. 春の歌 (メンデルスゾーン)
  13. ガヴォット (モンシニー)
  14. 精霊の踊り (グルック)
  15. グラーヴェ (タルティーニ)
  16. 「レ・プティ・リアン」より ガヴォット (モーツァルト)
  17. 6つのレントラーより 小ワルツ (ベートーヴェン)
  18. 歌曲集「白鳥の歌」より セレナーデ (シューベルト)
  19. 小ワルツとティロリエンヌ (ウェーバー)
  20. トロイメライ (シューマン)

Daniel DEFFAYET (saxophone)/ 山田富士子 (piano)

1977年に来日の際に録音され、当初LPでリリースされたもので、「管楽器のヴィルトゥオーソシリーズ」としてCD化されました(が、現在は既に廃盤のようです)。アルバムの原題は「Les Classiques du Saxophone 」、ちょっと日本語訳に無理があるように思います。曲目をみてお分かりのとおり、クラシックからの小品ばかりで、すべて師ミュールの編曲によるものです。ちょっと意外だったのは、音の立ち上がりがわりと鋭く、いい意味で金属的に聴こえたことです。短い曲の連続で、正直なところデファイエの実力を充分に堪能できるとはいえす、やはり、オリジナル作品で本領発揮してるところを聴いてみたいものです。とはいっても、フレーズの端々に確固とした音楽が流れているのはさすがデファイエ、小品群の演奏でも気品と自信が感じられます。

長らく入手が困難だったこのCDですが、2004/7に再度プレスされました。ここで紹介しているCDと曲順が異なっているようですが、過不足はないようです。カタログから消えないことを切に望みます。

余談ですが、このCDの解説を、故阪口新氏と故大室勇一氏という、日本のサクソフォンの黎明期を支えていた2名が担当していることを特記しておきます。

オススメ度:


「《アルルの女》組曲、《カルメン》組曲」

Grammophon 453 312-2
1970/12/28-29
  1. 「アルルの女」第1組曲 (ビゼー)
  2. 「アルルの女」第2組曲 (ビゼー)
  3. 「カルメン」組曲より (ビゼー)

Daniel DEFFAYET (saxophone) [a,b]
Herbert von KARAJAN (指揮) ベルリン・フィルハーモニー

デファイエの名前がソリストとしてクレジットされた、オケもののCDから。私の手元のCDは「カラヤン文庫」の1枚で、このほかにグノーのファウストのワルツがカップリングされています。カラヤンは同じ曲を何度も録音しなおす指揮者ですが、アルルの女の第2組曲は4回、第1組曲とカルメンも3回録音しました。この録音は2回目になります。デファイエはミュール派の最高峰奏者としてカラヤンに贔屓にされていたようで、この録音から聴くことのできるサクソフォンの甘い音色は、フランス流のサウンド以外の何者でもありませんが、これがカラヤン-BPOのドイツ流重厚華麗な音色に融合しているのが不思議です。ひねくれ者の私はカラヤンがキライで、農夫のおじいさんが昔を懐かしむ曲のはずのアダージェットが有名政治家の自慢話になってしまったり、素朴で情熱的なファランドールがゴージャスだけど野暮なフラメンコになってしまったり(しかも、Tamburo="プロヴァンス太鼓" ではなく、タンバリンで演奏してる??)しているのが気に入らず、いつもはクリュイタンスパレーの演奏を聴いてます。が、カラヤン盤の魅力はソリストにあり! サクソフォン以外にも、有名なフルートのソロも絶品です(当然か)。

オススメ度:


「BIZET: L'Arlesienne-Suites Nos.1 & 2・Carmen-Suite

Grammophon 415 106-2
1983/9/24, 1984/2/19 (L'Arlesienne)
1982/9 (Carmen)
  1. 「アルルの女」第1組曲 (ビゼー)
  2. 「アルルの女」第2組曲 (ビゼー)
  3. 「カルメン」組曲より (ビゼー)

Daniel DEFFAYET (saxophone) [a,b]
Herbert von KARAJAN (指揮) ベルリン・フィルハーモニー

同じく、これは80年代に入っての録音です。つまり、デジタルによる再録音、という商業上の理由。デファイエはまたしてもソリストとしてクレジットされてます。これらのアルバム以外に「アルルの女」のサクソフォン奏者がソリストとしてクレジットされたアルバムがあるでしょうか?(その後Chandos盤でサクソフォン奏者のクレジットを発見) 前のアルバムが重厚なサウンドながらも強い推進力を持った音楽造りだったのに対して、今回は推進力が後退し、メロディラインに語らせるような造りになっているように思います。ちなみに、1回目の録音は 1959年 EMI にフィルハーモニア管弦楽団との録音ですが、こちらはソリストがクレジットされていません。


「Jean Fournet conducts French Music」

Haydn House (no number)
  1. 交響組曲「寄港地」 (イベール)
  2. サクソフォン室内協奏曲 (イベール)
    Daniel DEFFAYET (saxophone)
  3. 舞曲 (ドビュッシー)
  4. 歌劇「サムソンとデリラ」バッカナール (サン=サーンス)
  5. 歌劇「レーモン」序曲 (トマ)
  6. 歌劇「黒のドミノ」序曲 (オーベール)
  7. 歌劇「青銅の馬」 (オーベール)
  8. 歌劇「フラ・ディオヴォロ」 (オーベール)
  9. 歌劇「ポルティーチの無口な女」 (オーベール)

Jean FOURNET (指揮) ラムルー管弦楽団

アナログ盤のリイシューを行なっているHaydn Houseから、デファイエがジャン・フルネ指揮ラムルー管と共演した復刻されました。1950年代に録音されたモノラル盤で、私自身はあまりこの手の録音を聴いていないので確かなことはいえませんが、観賞にはさしつかえないレベルの音質で、例えばミュールの録音と比較すれば音の鮮明さは明確です。ここで聴くことのできるデファイエのソロは、ミュールのカリスマ的な求心力にかわって、肩の力を少しだけ抜いた余裕からくる艶っぽさ、そして若々しさを感じます。

他に併録されている小品の演奏も絶品。私はフランスものの演奏はクリュイタンスやマルティノン、パレーが好き(というアナクロ趣味)なのですが、フルネの演奏はクリュイタンスの華やかさと上品さ、マルティノンの男気、パレーの朴訥さと推進力、それぞれのよいところをバランスよくとりいれた素敵な演奏。モノラルとはいえ、思わず踊りだしそうなゴキゲンな演奏です。

オススメ度:

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