Rudy WIEDOEFT


ミュールより少し前の1920年代、サクソフォン奏者として爆発的人気を得ながら、今やすっかり忘れ去られてしまったヴィードーフ。活躍は1920年代の限られた時間でしたが、彼の生演奏に接した人たち、たとえばジミー・ドーシー、レスター・ヤング(ヴィードーフのピアノ伴奏も務めました)、オスカー・レヴァント、チャーリー・パーカーといったジャズメンたちは、ヴィードーフから少なからず影響を受けました。

ヴィードーフは1893年1月3日、デトロイトの音楽一家の末っ子として生まれます。父のヴァイオリンを中心に姉のピアノ、兄のトランペット・チューバ・ドラムなどで結成されたヴィードーフ・ファミリー・バンドの一員として、10歳でクラリネットを吹き始め、地元のホテルやカフェなどで演奏活動をしていました。ルディは1913年にサンフランシスコに移り、Porter's Catalina Islands Band の主席クラリネットの座につきます。やがてサクソフォンを手にし、1916年にはニューヨークに出て「エリカのワルツ」を Edison レーベルレコーディングしますが、これが大ヒットしてルディは人気者になります。

第一次世界大戦末期にルディは従軍し、ここでポール・ホワイトマンと出会います。これをきっかけに、ルディは劇場や無声映画の仕事を引き受ける一方、ダンスバンドのメンバとして活躍します。1920年代には数多くの録音をこなし、イギリスに渡って楽器商のセルマー(あのセルマーです)に絶賛されるなど数々の活躍をしますが、1928年5月に起こった兄弟の交通事故を機にカリフォルニアに戻ります。その後はスタジオミュージシャンとして希に名前を連ねるだけになり、1940年2月18日に47歳の若さでなくなるまではあまり詳しく知られていません。

ヴィードーフの録音を聴くと、堅苦しいクラシック音楽ではなく、ヴァイオリンのクライスラー同様、親しみやすいメロディラインを太い音色でしっかり歌い上げる演奏が多いことに気づきます。また、サクソフォンという楽器の特徴を上手に使った曲が多いのも、自作自演のなせる技でしょうか。残念ながらヴィドーフ自身も、遺された曲もほとんど忘れ去られてしまいましたが、「はかないワルツ」は今でもアンコールピースとして愛演する奏者がおり、その魅力的なメロディはこれからも演奏され続けるでしょう。



主なアルバム


「Rudy Wiedoeft 'Kreisler of the Saxophone'」

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Clarinet Classics CC-0018 1920年代録音(モノラル)
  1. サックス・セレネ (ヴィードーフ)
  2. サクサレラ (ヴィードーフ)
  3. ザット・モーニング・サクソフォン・ラグ (クック&ブラウン)
  4. はかないワルツ (ヴィードーフ)
  5. 想い出 (ドルドラ)
  6. 東洋風 (ヴィードーフ)
  7. ラ・パロマ (イラディエル)
  8. マツァネッタのワルツ (ヴィードーフ)
  9. ト長調のメヌエット (ベートーヴェン)
  10. メロディ (ダウズ)
  11. セレナーデ (ドリーゴ)
  12. サックス=オ=ファン (ヴィードーフ)
  13. サクソフォン・ファンタジー (ローズブルック)
  14. サクセマ (ヴィードーフ)
  15. エリカのワルツ (ヴィードーフ)
  16. ハンガリア舞曲 (ハーガー/リング)
  17. 金婚式 (マリー)
  18. おどけたセレナード (マリー)
  19. メロディ (チャイコフスキー)
  20. ヴォルガの舟歌 (ロシア民謡)
  21. レウェリンのワルツ (ヴィードーフ)
  22. グロリア (ハーガー/リング)
  23. マリリンのワルツ (ヴィードーフ)
  24. ルベノラ (ヴィードーフ)

ルディ・ヴィードーフ (saxophone)

Clarinet Classicsレーベルから出ているSP復刻の1枚で、サクソフォンのレコーディングで現在まとまってCD化されている、おそらく最古の録音です。ミュールの録音よりもさらに10年ほど古いことになります(ただし、ミュールの録音には1曲だけコンベルの1910年の録音が含まれていますが)。ヴィヴラートに頼らないとても太い音色で、自作曲を中心に軽めのを演奏している点、まさにクライスラーに通じるものがあります。ワルツが多いのが、当時の世相を反映してるのでしょうか。古き良きアメリカ、なんて思ってしまいます。アンコールピースとして今でも通用する曲が多い思うのですが、楽譜、出てないですかねぇ。

オススメ度:

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