1970年生まれのフィンランドのサクソフォン奏者。12歳でサクソフォンを始め、1993年から1999年までシベリウス・アカデミーでペッカ・サヴィヨキに師事しました。現在、ヘルシンキ近辺の大学の講師を務める傍ら、ソロ活動や客演を積極的に行なっています。また、ヘルシンキ大学ウィンド・アンサンブルのサクソフォン・セクションのリーダであり、同団体のメンバで四重奏団も組んでいます。目下、以下にご紹介しているとおり、自主製作のCDを2年に1タイトルリリースを続けており(今後も予定続行とのこと)、フィンランドのサクソフォン・オリジナル曲を網羅すべく旺盛なプログラムに挑戦しています。
以下に続くトゥオミサロの一連の自主製作盤の第1作目。フィンランドの、サクソフォンのためのオリジナル作品が録音されており、当然他には聴くことのできない曲ばかりです。以下のアルバムに比べて、若若しく端正なジャケット写真も印象的。なるほど、この録音当時はまだ26歳、まだ若いわけです。。曲はどれもクラシカルで聴きやすい曲ばかりで、トゥオミサロの演奏にかける思い入れも充分伝わってきますが、それだけに演奏のツメの甘さがやや気になりました。フィンランドのサクソフォンのホープとして活躍を期待したい奏者の意気込みを感じる一枚。
CDのブックレット冒頭に、このアルバムの最初の2曲を初演した「フィンランド最初のクラシカル・サクソフォン奏者マッティ・レユラ(1905-1944)の記憶に捧げる」とあります。レユラの軍服調の写真からすると戦争で命を落としたのでしょうか?
なるほどグナロプロスやベルストレムは古典的な香りが漂う協奏曲。いっぽうで死にゆく蝶の微妙に甘美な香りは、やはり現代的なサクソフォンの美しさというべきでしょう。録音のせいもあると思うのですが、さらに端正で清冽な演奏を聴きたかった、というのが正直な感想。しかし意欲的にフィンランドの作品に取り込んでいこうという真摯な姿勢は、このCDからも感じることができたのが嬉しかったです。
2枚組みでアルバムタイトルは「春の息吹き」。フィンランドの作曲家のオリジナルの小品を中心に録音されています。シベリウス、クラミといった有名な作曲家の名前もあれば、トゥオミサロの委嘱=若手の作曲家の名前もあり、曲風もさまざまで楽しめました。また、一部アルバムElokuisessa Helsingissäと重複した曲もありますが、たとえばノスタルジア=マーチは改定版を使っていたり、と微妙に違いがあります。やはり、古い曲ほど耳にはやさしく響くようで、なかでもグナロプロスの適度にリズミカルなタンゴや、描写のうまいモーターボート・アイドル、それにヤーネフェルトやメリカントの作品が印象に残りました。一方数曲ごとに無伴奏の現代風の曲が入っているのも構成の妙。サックス(Saxes) の無伴奏の挑発的な響きや、適度にエキゾチックなパスケットの曲も魅力的です。
ところで 春の息吹き のタイトルですが、ジャケットの写真は港に半袖でたたずむ、ソプラノを持ったご本人の写真。ちょっと夏っぽいんですが? ちなみに裏ジャケはピアノ奏者ともども上着を着ていて、春っぽいですが。
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3拍子またはワルツに近い雰囲気を持った曲を集めたアルバムですが、これまでのアルバムと異なりフィンランド以外の作曲家の曲も多く収録されています。例えばはかないワルツでは、奏法こそ現代的ですが、見事なタンギングの連続には驚きました。またクライスラーの小品や月の光は、下手をすると薄っぺらなサロンミュージックになってしまう危険のある曲ですが、流されずに正攻法で等身大の音楽作りをしている点、好感を持ちました。もちろん初めて聴く小品も、ワルツ的な雰囲気の曲ということでチャーミングな曲ぞろいです。しかし圧巻は最後のトマジの演奏。収録曲中最も長い曲ですが、最初から最後までピンと筋が通っており、はじめからテンションが上がり気味ですがエンディングに向けて息切れせず熱狂的な色を帯び、聴いているほうまでテンションが上がってきます。ここまで4作のアルバムを聴いてきて、録音の仕上がりは技術を含めて確実にすばらしいものになってきています。今後のアルバムの出来が楽しみです。解説がやや雑なのが(前作の解説が丁寧な作りだっただけに)残念!
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フィンランドのサクソフォン協奏曲を集めたアルバム。第1集が比較的古典的/調性的な作品が多かったのに対して、第2週は典型的な現代曲が集められています。しかし、どの曲もサクソフォンの可能性を駆使し、各作曲家なりの語法で真摯に書かれており、トゥオミサロは体当たりで演奏している様子が十分伝わってきます。けして耳に心地よい音楽ではありませんが、ソロ・オケともにごらないストレートな音響空間を構築し、空間的な広がりが感じられます。中でも室内交響曲第3番では、ソロは2楽章から入り、4楽章はステージから遠ざかって演奏されるというユニークなアイディアを持ち込んでいます(CDだとその効果が充分に伝わってこないのが残念!)。演奏、作品とも若干荒削りな部分もありますが、隅々から感じる気合に圧倒されたアルバムです。
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サブタイトルが「フィンランドのサクソフォン傑作集」となってますが、実際に聴いたことがあったのはカレヴィ・アホの4重奏曲くらいで、ハーパネンとリンティネン以外は作曲者名すら初めて見た曲ばかり。曲の内容も、ソロ、電子音と、異種楽器の4重奏、ピアノ伴奏、サクソフォン4重奏、打楽器・エレキベースと、とすべて編成の異なるもの。アリアでは楽器と同時に発声したり、アヴェニューではピアノと同時に音域を飛び回ったり、4つのカプリスではジャズの要素が大胆に取り入れられていたり、とさまざまな響きを楽しむことができます。曲の内容は多様ですが、一貫しているのはトゥオミサロの、フィンランド(のサクソフォン)音楽に対する熱い情熱。演奏がいっそう熟してきているように感じます。
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