サクソフォン奏者、作曲家、音楽療法家の顔を持つ野田燎氏は、現在大阪芸術大学助教授、相愛大学講師、フランス作曲家協会会員の立場にあります。1972年に大阪音楽大学を卒業後、アメリカのノースウェスタン大学、フランス国立ボルドー音楽院に留学し、ボルドー市名誉賞、フランス作曲家協会賞などを受賞しました。1986年に帰国するまでは、活動の拠点をヨーロッパに置き、演奏・作曲両面で活躍しました。1988年にはアジア文化協議会の招きでニューヨークに渡りました。日本の伝統音楽と西洋現代音楽の組み合わせを課題にしており、代表作には「インプロヴィゼーションI〜III」があり、無伴奏サクソフォンの重要なレパートリとなっています。
私の持っている、野田氏唯一のアルバム。1981年ということは、まだ国外で活躍していた時期の録音になります。野田氏の音色は、輪郭がはっきりしていてアーティキュレーションも明快。フランス風の音色ともアメリカのニュートラルな音色とも違う、強い指向性を感じます。心を癒すためには、もう少しホンワカした音色の方がいいような気もしますが、奏でられる音楽は確信に満ちたもので、これはこれで説得力を感じます。収録時間が40分弱というのは、当初LPのための録音だったからでしょうか? 収録曲はクラシック作品の編曲ものばかりなので、次はオリジナル作品、野田氏自身の作品の自作自演を聴いてみたいものです。