1993年に結成された、ドイツのアンサンブル。以下メンバのプロフィールを記しましたが、ジャズ出身の奏者ばかりで、音色や音楽作りは一般的な団体とはやや異なっています。
ソプラノののホフマンは1967年生まれ。91年から97年までにベルリンのハンス・アイスラー音楽大学でジャズを学びました。卒業後、ジャズのみならずクラシック奏者としても活動しており、サクソフォン・クヮルダット以外にドゥ・サクソフォン、デュオ・クラフォン、アンサンブル・デジベルなどのメンバとして活動しています。
あるとのアーンドゥトは1970年生まれ、90年から96年までベルリンのハンス アイスラー音楽大学でサクソフォンとクラリネットを学びました。96年にはジャズ・クィンテット「ビッグ・アリス」のメンバーとして、ライプツィヒのジャズ・デイに参加しました。ジャズ活動以外に、劇場等での客演活動に注力しています。
テナーのラーケは1960年生まれ、83年から87年までハンス・アイスラー音楽大学でフルートとサクソフォンを学びました。メニー・ハーモニー・ジャズ・オーケストラやジャズ・ステージ98をはじめ、多くのジャズ団体のメンバとして、フェスティヴァルやCD、テレビや映画音楽を担当しています。
バリトンのビーアマンは1958年生まれ。ピアノ、トロンボーン、ヴォーカルなどを通じてジャズに親しみました。プロ奏者として活動の後、91年から96年までハンス・アイスラー音楽大学で学びました。
なお、以下アルバムのほか「JAZZ TANGO ALTE MUSIK」というアルバムをリリースしています。
彼らの2枚目のアルバム。1曲目のキリエから、いわゆる聴きなれたサクソフォン・アンサンブルと異なる響きが展開されます。ジャズ出身の奏者たちゆえか音色は少々ジャジー。まとまった一つの響きを目指すというよりは、4本の楽器のそれぞれの動きを尊重し重層的な綾を織り成すことを目指しているようで、ブラインドマンSQと同じ傾向のように感じました。縦線やアインザッツという点ではやや不満もありますが、異色のチャレンジといえるショスタコーヴィチは、DSCHの動機が弦楽器で演奏されるよりもよりくっきりと執拗に浮かびだし、サクソフォン4重奏の新しい可能性を感じることができました。続いてバッハが奏でられると、アルバムタイトルになっている「対位法」がこれらの曲の中で重要な位置を占めていたことにあらためて気づきます。カノンはチャールス・ミンガスのLP「ミンガス・ムーヴズ」からテーマを借用したもの。続いてテナーのラーケによるチェイサーもバッハとジャズの影響を強く感じます。これらの後ではフガータはおまけ的な存在ですが、しかし古典的な形式によって構成された曲ということでは考えられたプログラムです。伝統的なクラシカル・サクソフォンのスタイルから大きく逸脱しますが、挑発的な内容は一聴に値するでしょう。
オススメ度:
2007年頃録音したと思われるアルバム。カルテットのテナー奏者ラーケ氏の作品2つを含む、コンテンポラリーな曲が続き、最後にピアソラ作品を2曲並べています。前のアルバムではこの団体の長所がよく出てたと思うのですが、こちらのアルバムでは短所のほうが前に出てしまったように感じられて残念。音色、アンサンブルの精度、曲そのものの魅力、それぞれが有機的に結びついてアルバムの魅力を増すはずですが、それがいまひとつ伝わってきませんでした。その中でピアソラの2曲は、曲の持つテンションの高さが演奏のテンションを後押しし、聴き手の心に迫ってくるものを感じました。