バルト三国のひとつラトヴィア共和国の首都、リーガで活動する同国唯一のサクソフォン4重奏団。レニングラード音楽院出身で現在リーガ音楽院で教鞭をとる、アルト奏者アルティス・シマニスとその門下生で1992年に結成され、以後メンバの交代はあるものの1997年以後恒常的に演奏活動を続けています。1958年生まれのシマニスはデンマークの王立アカデミー留学しJ.ボーヴに師事しました。その間ニュー・ダニシュSQにも参加するなど繋がりがあります。シマニスは他にもジャン=ピエール・バラグリオリにも師事しており、バラグリオリがラトヴィアのオケをバックに録音していることとも関係があるようです。門下生は1976年〜1978年生まれの若手ばかり、しかし一門のせいかサウンドにまとまりがあるのには驚かされます。
2000年まで(アルバム2作目まで)はテナー奏者は女性の Ilze LEJINA でした。彼女はサクソフォンだけでなくヴァイオリンを弾き、アイリッシュ・パブなどで弾いたりするということなので、もしかしたら現在はそちら方面の仕事がメインなのかもしれません。また、同じ頃までバリトン奏者は Renars LACIS でしたが、交代時期は不明です。。
エストニアの作曲家をはじめ、フランスやアメリカの作曲家の曲を含めた意欲的な内容のアルバム。作用ではアルト奏者シマニスの師匠となるバラグリオリが参加しており、4人と一体となった演奏が繰り広げられます。ジャズの要素を感じる曲が多く、エキサイトで動的な響きが聴き手を魅了しますが、なかでもTsushinchanのエコーのような多層的な響きが、万華鏡を見ているような、迷路に迷い込んだような感覚が一番印象的でした。
ジャズの香りのするナンバーとピアソラの作品を組み合わせたプログラム。個人的にはモウアーの曲を3曲も、さらにジャヌーの組曲を取り上げてくれているのが嬉しい限りです。どの曲も "直線道路安全運転" タイプの演奏で、曲調からすればもっとノリノリでカッとばしてもいいんじゃないかな、と思う個所もありますが、全体に破綻なく確実にまとめられています。この団体もピアソラに力を入れているということで、ラフ・ダンサー・アンド・サイクリカル・ナイトは師匠格のニュー・ダニシュSQの録音にもおとらずどっしり構えた太いサウンドが印象的。
さらにジャズの要素を強く出したアルバム。アメージング・グレースでは、テナーを大胆にフィーチャーして、ジャジーな雰囲気漂う演奏です。カールトン・メイシーの歌と踊りでは、各楽章に「タンゴ」「キャラバン」「スウィング」などの副題がついていて、タイトルどおりストレートパンチの楽しい曲で、演奏も実にノってます。「ピュリズム」「神秘主義」「写実主義」などの副題がついたデドリックのモダン・アート組曲も、なるほど目の前にモダンアートが浮かびそうなユニークな曲。もっと演奏機会があってもよさそうに思いますが。。エンディングはアフロ・キューバン・ジャズの名曲チュニジアの夜。サクソフォン4本にピアノが加わって混戦模様(笑)。ジャズの活動のバックボーンを持ったメンバが多いせいか、こういった曲でのアドリブもなかなか決まってます。