1989年にフィショナフ国際室内楽コンクールで受賞をしました。また同年、カナダのレジナ交響楽団と共演して以来、アメリカ各地のオーケストラとの共演も積極的に行なっています。また、下記にご紹介したアルバムに続いて、1999年に Innova レーベルから新しいアルバム「Real Standard Time」を発表しました(未聴)。
プリズム・クヮルテットの特徴は、名前のとおりサクソフォンという楽器に縛られず、積極的に電子楽器(1990年時点でヤマハWX-11)を用いている点、そして自作のレパートリで電子楽器を使用して、既成のサクソフォン4重奏の概念を超えている点です。この点は是非が別れるところだと思いますが、いかにも伝統にしばられないアメリカらしい発想で、新たな可能性の一つを私たちに示していることには違いありません。
ちなみに、セルマー社のバックアップを受けており、同社の楽器を使っているものと思われます。当初ソプラノは Reginald BORIK、バリトンは Timothy MILLER でしたが、現在のメンバは上記のとおりです(バリトン奏者の SULLIVAN 氏から直接ご指摘を受けました。SUILLIVAN 氏はソロ活動も積極的に行なっています)。また、2003年よりソプラノの担当がティモシー・アクアリスターとなりました。
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CDデビュー・アルバムで、一時期 WAVE 扱いで国内でも流通していました。前半は"正統的な"サクソフォン4重奏のレパートリ、間に電子楽器を用いた曲の自作曲をはさんで、後半はアメリカのジャズやブルースなどの要素を取り入れたレパートリ、というおもしろい構成になっていて、某レコード評論誌でも推薦マークがついていました。しかし、音色が薄っぺらに聴こえて魅力を感じず、あまり印象はよくありません。3つのインプロヴィゼーションやドラスティック・メジャーズは、それなりにスウィング感や勢いがあるのですが、勢い余って、という印象がぬぐえず、特に後者はもう少しアンサンブルの妙味を感じさせて欲しかったな、と思います。暴論ですが、このレーベルのサクソフォンものはすべて同じような傾向なので、レーベルの方針が私の気に入らないだけかもしれません。他のレーベルからもアルバムを発表しているようですので、そちらの方が出来がよいのでは、とひそかに期待をしているのです。
アメリカの作曲家ウィリアム・オルブライト(1944-98)によるサクソフォンの作品を集めたアルバム。ピアノとのデュオ、テープとのデュオ、3重奏、4重奏、吹奏楽との協奏曲など編成は様々ですが、さらに多様なのは作曲スタイル。相当にアヴァンギャルドな曲もあれば、ジャズやロック、民族音楽の色合いが濃厚な曲まであって、オルブライトの持つ多面的な音楽観の片鱗を感じさせます。プリズムQの演奏は、上記1作目があまりピンとこなかったのでそれ以後聴かず嫌いでしたが、今回あらためてじっくり聴いて、その確実なテクニックと旺盛なチャレンジ精神に驚きました。けしてとっつきやすい内容でありませんが、ヒーターは共演のロバート・レイノルズ指揮ミシガン大学ウィンド・アンサンブルの見事なアンサンブルと組み合わせられた立体的な音響が楽しめました。
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ヤコブ・テル・フェルドハウスの音楽は"アヴァン・ポップ"と呼ばれるように、ポップな響きが執拗に耳に迫り、ある意味で麻薬的な、脳天中枢を刺激するような音楽です。Pitch Black はジャズ・トランペッターのチェット・ベイカー、Billie はビリー・ホリディ、それぞれの肉声をコラージュしたテープにサクソフォンの響きが重なる、不可思議な音の世界が広がります。唯一テープを伴わない、シリアスな響きのする Postnuclear ... の響きは、タイトルから想像されるように、背筋に冷水を流し込むような雰囲気が。 録音のせいか、エモーショナルに訴えかける面がやや少ないのが残念ですが プリズムQの演奏は原曲の魅力を十二分に感じさせる快演。この録音をきっかけに、JacobTVの作品が広まれば嬉しい限りです。
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アメリカのベテラン作曲家ウィリアム・ボルコムと、最近人気が高いジョン・マッキーの2人の、サクソフォン4重奏とオーケストラのための実質的な協奏曲を録音したアルバム。バッハをモチーフにジャズやブルースを融合させたり、とぼけた響きを効果的に使っているコンチェルト・グロッソは、おそらく実演ではかなり立体的な響きがしておもしろそうです。マッキーの曲は、緩急緩の構成で、1楽章「アニマル」冒頭から獣の咆哮を思わせるキャッチーな響き。随所に出てくるテクニカルな各サクソフォンのソロもバイタリティにあふれています。3楽章「ミネラル」では、16ビートの合奏にサクソフォンが絡み、エンディングに向かってますますエキサイトしていきます。こちらの曲も実演ではさぞ盛り上がりそう。テクニック的には全く不足なし。このアルバム、スケールの大きいアメリカンな響きが楽しめて、オススメです。。
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サクソフォン・クヮルテットと中国楽器による曲を集めたアルバム。Music from China というアンサンブルは、アメリカで活動しており、伝統的な中国音楽とコンテンポラリー作品を中心に活動してるようです。アンサンブルのサイト(http://www.musicfromchina.org/)の写真を見ると、うむむ、独特の楽器の数々。。これ、一度生で見てみたい、否、聴いてみたいかも。作曲者としては譚盾以外は全く知らない名前でしたが、wikipedia にはそれぞれ項目があるくらいなので、かなり活躍されている方々のようです。
このアルバム、あの中国楽器独特のびよよよ〜んというヴィヴラートや、みゆーーーんというポルタメントが多用されていて、はじめのうち西洋音楽を聴きなれた耳にはかなり異質に感じることでしょう。でも、不思議とそれがだんだん慣れてきて、ほんわかした気持になってしまうのは、やっぱり自分も東洋人だからかしら。録音のせいかちょっとデットでアンバランスに聴こえてしまうところもありますが、フランスう風の華やかな響きとも、アメリカのストレートな響きとも違う、なんとも不思議なアンサンブルの響きが聴こえてきます。
ええと、せっかくだから、誰か日本の伝統楽器とサクソフォンを組みあわせたアンサンブル曲とか、書いてくれないでしょうかね。そして、録音もぜひ。。
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どの曲もメロディらしいメロディはなく、不協和音が続く音楽。コロラトゥラではサクソフォンがトリルやダウンなどの様々なテクニックを駆使して不思議な響きを奏でます。アルバムタイトルになっている Breath Beneath(邦訳すると「息の下に」?)は、たしかに音の重心が低いところでひそむように持続され、少しずつ上昇しながらメロディの断片らしきものが現れてきます。しかしけしてメロディとして音列を作ることなく、再び重心は低くなっていき、ひっそりと終わる、、そんな物語を感じ取ることができます。どの曲も、聴き流すことを許さず、徹底的に音と向き合うことを要求しますが、必要以上に聴き手に苦痛を強いないのは、一つ一つの音に意味があって、発せられた音が積み重なって前向きな流れを作っているからでしょう。
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