デファイエ・サクソフォン4重奏団の解散と前後して、同楽団のバリトン・サクソフォン奏者だったルデューが1987年に結成した団体。つまり、バリトン奏者がリーダという珍しい団体です。ルデューについてはデファイエQのページを、またソプラノのモレティ、テナーのポルテジョワの両氏についてはそれぞれのページをご覧ください。以下に紹介するCDを聴く限り、ミュール−デファイエのフレンチ・サクソフォンの伝統を受け継ぐ演奏スタイルのようです。
なおテナーはヤン・ルマリエに交代し、2002年に最後のコンサートを行ないました。
1991年録音、ルデューSQとしてのファーストアルバムでしょうか? 曲目はご覧のとおり典型的なフランスの流れを汲んだ選曲で、さすがルデューSQの華麗な響きの独壇場、それぞれの曲から万華鏡をのぞくようなきらびやかな響きを紡ぎだしています。この、響きそのものにおぼれる快感、というのは、サクソフォン愛好者の特権でしょう。サンジュレーでは、テンポや強弱など楽譜指示を反映して、丁寧な曲作りになっているのが意外でした。ピエルネやパスカルの夢見心地の厚い響きはさすがとしか言いようがありません。油絵調の響き(褒め言葉のつもりです)はアプシルの朴訥な曲調を血沸き肉踊るパッションあふれる生々しい音楽に仕立て上げています。特に最後の楽章のめまぐるしいパッセージでは、アンサンブルの乱れもお構いなしに(きっと民族舞踏だってオリンピックじゃないんだから一挙一動ぴったりあっているわけじゃないでしょう?)エンディングめがけて突進します。こんなスリリングな演奏、なかなか聴けるものではありません。
余談になりますが、某大手通販サイトでこのCDをオーダするも1年以上待たされて入手NGとなり、以来いろいろ手を尽くしてようやく数年越で入手したときは、本当にうれしかったです。すばらしい内容ですので、もっと流通するといいのですがねぇ、、
オススメ度:
フランスのカリオペ・レーベルからリリースされたCD。最初プログラムをみて、デュボワがこんな曲を書いていたのか、と驚きましたが、実際は有名な4重奏曲に弦楽器とチェレスタ・打楽器のパートを加えたものだったんですね。むしろミヨーやメシアンに学んだというカルメのコンチェルト・グロッソの方が楽しめました。この作品も、初演はミュールの4重奏団だったそうな。フェルドは、アメリカ人サクソフォン奏者のユージン・ルソーが好んで取り上げるチェコの作曲家ですが、この作品はデファイエSQが初演した曲です(つまりルデューも初演に加わっていたことになります)。全体に几帳面な演奏で、もう少しホンワカ柔らかく響いてくれればもっとキモチよいのですが。
オススメ度:
テナーがルマリエ氏に交代して以後で、かつ最後の録音。ブトゥリー、パスカル、リュエフ、プラネルというフランスの香りがプンプンする曲を、ミュール〜デファイエの流れを継ぐオーソドックスなフレンチスタイルで演奏しており、やはりこれらの曲はこうでなくちゃ!と思わず膝を打ちたくなる内容です。パスカル編のフーガの技法という変化球もうむむ〜とうなる内容。しかし個人的にはスケルツェットやバーレスクのような、真面目に取り組むだけではまったく面白くない小品こそ、伝統的なフレンチスタイルによるルデューSQの独壇場だと思うのです。彼らが活動を停止してしまった今、こういうサウンドを実演で接することができないかと思うと、寂しさを覚えずにはいられません。
オススメ度:
ノルウェー作曲家協会が1992年に発足させたレーベル Hemera からリリースされた、トリグヴェ・マドセンのクラリネットとサクソフォンの作品集。演奏者はルデューSQをはじめフランスの奏者で固められており、クラリネット・ソナタでピアノを担当しているのは、作曲家かつギャルド・レピュブリケーヌ楽団の指揮者として有名なロジェ・ブートゥリ。クラリネットのシルヴィー・ユーは次に紹介するジェラール・ガスパリアンの作品集にも登場しています。さて、どの曲も比較的シンプルな和音を使っていますが、その和音の移り変わりが激しいこと。しかしそのユニークな響きは茶目っ気があって、繰り返し聴いても飽きないません。特にルデューSQによるサクソフォン・マーマレードは、タイトルのマーマレードから想像される甘ったるいベタベタした曲ではなく、フランスのクラシカルな曲から脂を洗い流したような(ヘンな表現ですみません)曲調でたいへん楽しめました。自分でも演奏してみたい、、また3つのファクスはサクソフォン4重奏にテナーとバスが加わった編成ですが、響きに厚みは増しても重くならずに曲がスムースに流れていくのが快感。ちなみにテナーとバス奏者はパリSQのメンバということです。
ところでジャケットの至るところに蜂が描かれているのですが、何か理由があるのでしょうか??
オススメ度:
前のアルバムがサクソフォンのオリジナル作品が2曲だったのに対して、こちらのアルバムはすべてサクソフォンのオリジナル作品で、やはりルデューQのメンバーが演奏しています。どの曲も、フランス風の華やかさを湛えながら、北欧風の清潔感も同時に備える聴きやすい曲です(上記のアルバムとほぼ同じ印象です)。テナーやバリトンのためのソナタ形式のオリジナル曲は、録音が少ないだけに貴重で、ここでの演奏は曲の魅力を十二分に引きだしています。
アマゾンでこのCDをチェック! |
こちらはフランスの作曲家ジェラール・ガスパリアンの作品集。声楽から弦楽までさまざまな室内楽曲を含んでおり、1枚で多彩な音色を楽しむことができます。日本人奏者が多く起用されていることにも注目。メロディらしいメロディはあまり登場しないものの、トンがった響きはあまりせず、身構えずに楽しむことができる作品ばかりです。サクソフォンを含んだ5重奏曲ですが、楽器の機能性に着目した作品で、1曲のうちでさまざまな表情が感じられます。響きそのものはなかなかユニークなのですが、いまひとつ印象に残らなかったのが残念。しかし、現代作品にも対応できるルデューSQのすごさを感じることができたのは収穫です。
なお幕間はサクソフォン作品からの改作だそうです。