1993年に結成された、フランスで活動する若手の団体。既に以下でご紹介した以外にもアルバムを発表しており、オリジナルから現代曲、編曲ものまで幅広いレパートリを持ち、セルマー/ヴァンドレン・アーティストとして活動しています。最近ではボルドーで行なわれた1996年J.M.ロンデックス国際サクソフォン・コンテストや1997年にデュッセルドルフで行なわれた若手4重奏国際コンテストなどで1等を得るなど、多くのコンクールで優秀な成績をおさめています。2005年にはキャリアの仕上げとして参加した大阪国際室内楽コンテストで、みごと、木管部門の1等を獲得しました。サクソフォン以外の楽器と同じ土俵の上での1等は、快挙といっていいでしょう。
なお、ソプラノのクリスティアン・ヴィルスはドイツ・グラモフォン・レーベルからリリースされているベリオのセクエンツァの録音に参加しており、またテナーのマンクーゾはアドルフ・サックス・国際サクソフォン・コンペティションの実況録音盤に録音が残っています。
2002年秋、来日したハバネラSQの演奏会を聴きましたが、本当に久しぶりの目からウロコなサウンドを体験しました。会場で売られていたプロモーション目的と思われるこのCDが休憩時間中に飛ぶように売れていたのも頷けます(私はモチロン開演前に購入しました ^^;)。さてこのCDには、サクソフォン4重奏の古典的なレパートリから編曲モノ、お得意の現代曲まで、シリアスな響きからノリノリの演奏まで収録されており、彼らの実力を伺うに好適です。大曲は一部楽章のみしか収められていないのが残念ですが、例えばゴドコフスキーの曲では見事としか言いようがないタンギングを聴くことができますし、次のエレジーでの淡々とした唄も印象的。そして演奏会でもアンコール最後にちょっと照明をおとして演奏された子守唄は、衝撃的(一部笑劇的!)とさえ言えたすばらしい演奏会の記憶を何度でも呼びさまします。
ジャケ裏側に初来日の際と思われる写真が使われていますが、ネガを裏返して使ってしまったようで、漢字がさかさまに写っているのはご愛嬌。
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すべて現代曲、初演を含む意欲的なプログラムに注目。どれも無調でメロディのない難解な曲ですが、不思議と私の耳には角がなくすんなり入ってきました。ジャケットの絵のように、不協和音の向こうがわから星の煌きにも似た耀きが感じられたのです。特にミステリアス・モーニングIIやラッシュIIの2曲はお得意のレパートリとみえ、曲の複雑さを感じさせない求心力と押しつけがましくない曲造りに説得力を感じました。サクソフォンの現代音楽に興味のある方は、一聴の価値があるでしょう。ほかのアルバムもますます興味が湧いてきました。
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アルバム2作目では正統派サクソフォン4重奏曲が集められています。個人的にはクラシカル・サクソフォンのレパートリとしては古典的な曲のわりに、録音に恵まれなかったドヴォルザークのアメリカをしっかりした団体の演奏で聴くことができるのが嬉しい限り。ということでいきなり後半のトラックから聴いてしまったのですが(笑)期待にたがわずすばらしい出来。ヴィヴラートこそ抑え目ですが、緻密に計算された、それでいてまったく無理のない目のさめるような演奏に感服しました。来日の演奏会のプログラムでもとりあげられていたグリーグの鮮やかな演奏、それに数々の名演が既に世に出ているグラズノフでも新しい感覚で今ここに曲が/演奏が生きて/活きていることを再認識させてくれる演奏でした。前作の現代音楽も衝撃的でしたが、このアルバムの完成度もすばらしく、録音を聞く限りフランスで今もっともクールなサクソフォン4重奏団といえるのではないでしょうか。
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ルイ・スクラヴィスは、ジャズ・クラリネットの即興演奏の第一人者。そのスクラヴィスが、ハバネラSQとタッグを組んで、いわば場外乱闘戦?が繰り広げられています。作曲された構図を演奏という点では広義のクラシックに他ならないのですが、そもそもが即興演奏を前提としていて、リズムや旋法にジャズや民族音楽が色濃くにじみだしており、これはスクラヴィスとハバネラの音楽という以外にカテゴライズしようがない音世界です。クラリネットからバスクラリネット、サクソフォンを持ち替えて、手を変え品を変え七変化のソロを繰り広げるスクラヴィスはもちろん見事ですが、スクラヴィス(や作曲者)の挑発に応えてクールに共犯を重ねるハバネラもさすが。どの曲もコンセプチュアルですが、コンセプトを一切忘れ、不思議な音楽の洪水に黙っておぼれるのもこのアルバムの楽しみ方のひとつかと思います。
本アルバムには日本語帯と解説がついており、1曲目の題名からとられた歯車のようにというアルバムタイトルは、なるほどこのアルバムのコンセプトを明確にあらわしています。なお、アルファレーベルのほかのアルバムも、日本語仕様のリリース予定があるとのこと。現代的な作品を集めたアルバムの場合、日本語で解説が読めることはたいへんありがたく、助かります。
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2005年、大阪国際室内楽コンクールで、ハバネラQはみごと木管部門で1等賞を受賞しました。この録音は、その予選・本選での演奏です。生演奏での傷は多少あるものの、さすがコンクールの場、すさまじいほどの集中力に驚かされます。といっても音楽そのものは活き活きして表情豊か、一人一人の奏者はきっちり主張しながらもアンサンブルとしてのベクトルはきちんとみごとなまでにひとつの方向を向いており、それが圧倒的な説得力を生み出しています。それが、グラズノフ・デザンクロといったフランスの伝統的な手法による作品でも、ドナトーニ・クセナキス・野平というきわめて現代的な手法による作品でも、安定して(あるいは意図的に安定を崩して)自在に演奏しています。この演奏を聴いていると、この演奏は彼らの可能性の氷山の一角でしかないような気がしてなりません。どの曲も文句なくすばらしい演奏ですが、特にグラズノフの3楽章エンディングではアンサンブルが乱れようがお構いなしのテンポアップ、クセナキスでの筆舌に尽くしがたいテンションの維持(そして昇華)、、、その場で聴いていたらスタンディング・オヴェーションしてたでしょう。サクソフォンによるアンサンブルでありながら、既にサクソフォンを超越して普遍的な音楽としての貫禄を十二分に備えた演奏です。
限定制作部数は頒布終了してしまったようですが、是非11月の日本国内ツアーでこの録音の入手が可能にならないか。。。。
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