1985年にロイヤル・ノーザン音楽学校のメンバで結成、 日本にも1995年以来何度か来日しているイギリスの団体です。ジョン・ハールの門下生にあたるらしく、初期のCD等のプロデュースはハールによって行なわれています。以下のCDのラインナップをみてもお分かりのとおり、伝統的なサクソフォン4重奏のレパートリとは一切無縁で、現代イギリス作曲家の作品を始め、映画音楽、ミニマルミュージック、民族音楽などをバックグランドにした曲をレパートリに取り入れています。また、メンバのほとんどがロンドン・サクソフォニックにもクレジットされています。
最近では多くの作曲家に作品を委嘱し、積極的にレパートリに取り入れています。2003年にはナイマンのサクソフォン4重奏のための協奏曲を演奏予定です。また楽譜の出版にも手を出しており、教育目的の曲集や、同種4本のアンサンブル曲といったユニークなものも少なくないようです。以下の web によれば、ご紹介したCD以外に自主制作盤を1枚リリースしているようです。
メンバーはこのアンサンブル以外でも個々で活動しており、アルトのバックランドはソロアルバムもリリースしています。
自主製作盤でしょうか? (私は、某国内プロモータから買いました。)アルト4本によって演奏されるカヴァル・スヴィリのサウンドは強烈! ルーマニアの民族音楽らしいのですが、音楽の力強さに圧倒されます。これ1曲を聴いただけでも満足できるのですが、続くナイマンのナンバーも、ほとんとポップスのノリ、というか典型的ナイマン・ビートで、ここまで一気に聴いてしまいます。続くのが、英国国歌をパロったイントロに導かれるスモール・ドリーム・オブ・ア・ダンスという挑発的なナンバー。チルドレンズ・ソングはジャズ・ピアノ奏者チック・コリアのナンバーで、当然もともとピアノ曲なのですが、サクソフォン4重奏による演奏も新鮮に聴こえます。
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ワイド・ディストリビュートとしてはこれがデビュー盤、日本でもリリースされました。前作とダブってる曲もあり、チルドレンズ・ソングは別テイクですが、ボウ・アウトは同テイクのようです。ソングズ・フォー・トニーはアポロSQが初演した曲ですが、4quaterによる演奏やデルタSQの演奏、さらにはアルモSQ比べてみると、全然雰囲気が違ってオモシロイです。どれがよいか、といわれると、、、このアルバムの聴きものは、なんといってもホー・ダウン!! ブリブリいわせるバリトン・サクソフォンがカッコイイ!(でも、実際にはすごい難しいんですよね)、来日の際某所でこの曲を聴いた時、バリトンの Gregory 氏に「Wonderful!」と声をかけたら、テレてました。
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自主制作盤3枚目は、彼らのために書かれた作品を集めたもの。さすがにアポロSQお得意のスタイルの曲ばかりで、ややアバウトに感じるところはあるものの、どの曲でも「わぁ、サクソフォン4重奏でこんな響きがだせるんだ!」というような万華鏡的な楽しさを発見することができるのが、さすがアポロSQ。たとえば、ミンツァーの4重奏曲は私も吹いてみたことがあるのですが、どうしたらあの楽譜からこんなに生き生きとした音楽を紡ぎ出せるのでしょう!? 好きキライは分かれると思いますが、イギリスの"今"のサクソフォン4重奏界をリードするアポロSQの、活動の総括ともいえるアルバムに拍手を送りたいと思います。
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ターナーの絵がジャケットに使われているアルバム。バーバラ・トンプソンは別ページでもコメントしたとおりジャズ畑の奏者ですが、クラシックのアカデミックな教育も受けており、先に弦楽4重奏曲を発表しレコーディングもされています。2001年にアポロSQの委嘱で第1番が初演され、翌2002年から2003年にかけて2番・3番が続けて作曲されました。副題のついていない第1番は、5楽章構成ですがそれぞれの楽章は実質的には連続して大きな曲を構成しているとのこと。闇から光へと題された第2番は各楽章には黒、青などの色の名前が付けられています。第3番の各楽章にも副題がついており、楽章間にはSerenaと題された間奏が挿入されています。それぞれ曲はコンセプチュアルですが、作風はミニマルなどの現代音楽の語法も取り入れていますが、ジャズやロックの要素を強く取り込んだ新古典的な曲想(と書いても、全然イメージできないですよね。スミマセン)。特に、ビッグバンド・ジャズの経験が和音構成に大きな影響を及ぼしているように聴こえました。また特殊奏法を取り入れている部分もありますが、技術的に無茶な要求をせずに楽器の本来の機能を充分に生かした曲になっているのは、トンプソン自身がサクソフォン奏者であるからでしょう(実はアポロSQが上手すぎて難しく聞こえないのかもしれませんが、、)。もちろんアポロSQは完全に手の内におさめた余裕の演奏を繰り広げています。中でも弦楽4重奏を意識したと思われる第1番の変幻自在ぶりが最も印象に残りました。
これらの4重奏曲は、楽譜も入手できるようですので、興味ある方々は是非演奏にトライしてみてましょう! 第2番は早速ドイツのテトラフォニックSQもレコーディングをしており、今後レパートリーとして広がりそうです。
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イギリスの作曲家ボックマンの作品に加え、スペイン・ポルトガルの作曲家による曲を集めたアルバム。バロックを下敷きにしたもの、ミニマル風のもの、ソロ主体のもの、ジャズの影響をうけたものなど作風は様々。メロディらしいメロディがほとんどなく、とっつきにくい印象もあるのですが、これはおそらく実演で聴けば曲に内在するエネルギーや躍動感がもっと伝わってくるのだろうなぁ。ショートカット、ループ、喫煙場所の3曲の、織り成される重層的なサウンドが心に残りました。
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1960年イギリスのケント生まれの若手作曲家、ジャンゴ・ベイツの作品集。多少の不協和音はしますが、不快感や緊張感を強いません。街を歩いていてとびこんでくるノイズ、ストリートパフォーマンスなどがそのまま音楽になった、というようなイメージです。非クラシックな知人がこの曲を聴いて「映画音楽みたい」たしかにそうも聞えます。ひとひねりあるタイトルもユニーク。ちなみに、アルバムタイトルの「good evening ... here is the news」というのは、BBCニュースのお決まりのごあいさつ。感動的な曲はありませんが、現代的な響きの中に古き良きイギリスを感じさせる何かもあるのが不思議。アポロSQは1曲のみの参加ですが、曲の持つすっとんきょうさはアポロSQでなければ出せないだろうな。微分音でチューニングされてるのかな?
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こちらは1961年生まれアメリカの作曲家、マイケル・トークの作品集(以前、ここでイギリスの作曲家と紹介しましたが、誤りであることがわかりました。失礼しました)。Priority, Standard, Saturday DeliveryからなるOvernight Mail、The Yellow Pages, The Blue Pages, The White PagesからなるYelephone Book、East 33rd Street, Riverside Drive, Bank Street, West 102nd Street, West 4th Street, West Houston StreetからなるChange of Address、となにやら思わせぶりな表題ばかりですが、曲の中身との関連はあまりないようです。アポロSQは、委嘱作品である7月を含む2曲に参加しています。どの曲も、調性ははっきり持ちつつ、断片的なメロディが執拗に繰り返される曲で、当然「歌い込む」ということはありません。なんだかわからないけれども、繰り返し響いてくる音の形に、ノれるかどうかがトークの曲を楽しめるかどうかのポイントになるように思います。アポロSQは、他の録音よりもやや表現がおとなしい気がしますが、その分緻密にな演奏になっているように感じます。
なお、表題になっているOvernight Mailを演奏しているオランダのオルケスト・デ・ヴォルハルディングには、吹奏楽作曲家として有名なヨハン・デ・メエイがトロンボーン奏者として参加しています。
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1971年、ロンドン近郊のウィンブルドン生まれの作曲家、タルボットの作品集。どの曲も現代的な要素をさまざまに取り入れながらも、メロディラインはしっかりしていて、音量が大小することはあっても極端にノイジーになることはなく、生理的に訴えかけてきます。演奏は作曲者自身も参加しているピアノ・トリオや、この手の現代モノの演奏で定評のあるデューク・カルテット、そしてブルー・セルは委嘱初演者であるアポロSQが参加しています。この曲はworksforusでも録音されていますが、こちらの録音のほうがより表現が細やか。どうも脳天気(大失礼)なサウンドを予想しがちなこの団体がこんなに柔和な演奏をするとは、正直、意外でした。アポロSQの違った一面に触れた気がします。他の曲も、ミニマル風の響きがあったり、あまりシリアスにならずに楽しめるアルバムと思います。