イタリア生まれのサクソフォン奏者。イタリアのロッシーニ音楽院でサクソフォンをはじめ声楽、指揮法を学びました。卒業後フランスのボルドー音楽院に留学しジャン=マリー・ロンデックスに師事しました。1982年のワールド・サクソフォン・コングレス以来、たびたび同コングレスに参加し、1990年からは積極的にソロ活動を行なっています。スカラ座のオーケストラ・フィルハーモニアで小澤征爾の指揮でドビュッシーのラプソディのソロをつとめたのを始め、イタリア各地やヨーロッパ・ロシアのオーケストラに招かれています。モンデルチ自身は現代音楽に興味を示していて、以下にご紹介したCDの他、Pentaphon、Edipan などのレーベルにも録音を行なっています。また、1990年以来ロッシーニ音楽院で教鞭を執っており、現在は教授職にあります。
1982年よりイタリア・サクソフォン・アンサンブルを結成し、ソプラノ奏者として活動しています。このメンバはアルトがマルコ・ゲルボッツィ、テナーがマリオ・マルツィ、バリトンがマッシモ・マッツォーニといったいずれもソリストの腕を持つ奏者で、こちらの活動も要注目です。
私が初めてモンデルチの名前を見たのはTHE DEVIL'S RAG (by Jean MATITIA)のスコアで、タイトルの上に「à Federico Monderci et Arno Bornekamp」と書かれているのを見つけて、「ボーンカンプとタメはる奏者か?」と興味をもったのです。実際ボーンカンプとは、年齢や、レパートリの趣向が似てるようで、日本ではまだ知名度は高くないですがこれから紹介されるのを期待したいところです。
なお、2002/3 のChandosレーベルの新譜で、ケクランのサクソフォンとピアノのための作品集がリリースされました。これを機に知名度が上がることは間違いないでしょう。
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下のアルバムを先に聞いてしまっていたので、このアルバムのテンションの高さ、音色の違いは驚きました。残響操作を行なった曲以外はかなりデッドな響きで、サクソフォンの生々しいサウンドが耳に飛び込んできます。
どの曲も無調、おそらく拍子のない曲で、現代音楽がキライという方は抵抗があるかもしれません。特殊奏法を駆使し、曲によってはMIDIサクソフォンも使い、不可思議な音響世界を作り上げています。生理的にこういうサウンドは苦手、という方も少なくないと思いますが、私はなかなか興味深く聴きとおすことができました。アビスよりや吸血鬼などは、他のイタリアのサクソフォン奏者のレパートリ・リストにも入っており、イタリアではわりとメジャーなレパートリなのでしょうか。
生々しいサウンドゆえ、演奏のゴマカシができない不利から、若干技術的に磨き足りないと感じた個所もありますが、前向きな演奏姿勢は充分伝わってきます。現代音楽が苦手でない方にはお勧めできます。
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Delosからリリースされたサクソフォンによるピアソラ作品集ですが、このCDはオケ伴奏による演奏です。モンデルチの音色は明るく端正で、クリアな録音も手伝って耳あたりは快適です。ちょっと綺麗にまとまりすぎていて、もう少し暴力的に響いたり、パッションや陰の感じられる部分があっても良いと思うのですが、期待のしすぎかな。モンデルチ自身による編曲も多く、曲によってはコンチェルト的にサクソフォンが吹きまくるのではなく、弦楽器に主導権を譲る部分が多いのは興味深く聴きました。オルベリアン指揮のモスクワ室内管弦楽団の演奏も、その意図に充分応えているようです。サクソフォンによるピアソラ作品集は少なくありませんが、ヨーヨー・マのピアソラ作品集がお好きな方なら、このアルバムも楽しめると思います。
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今度はイギリスのChandosからリリースされたアルバム。しかも、内容はケクランのサクソフォン/ピアノ作品全集という内容で、レコーディングのニュースを聞いたときから発売が待ち遠しかった1枚。ケクランは、静謐な水彩色の音の重なりの上になりたつ透明度の高い音楽が私のお気に入りなのですが、モンデルチの奏でる音楽は気合の入ったもので、若干私の好みの方向とは異なりますが、微熱的な不思議な音楽に仕上がっています。もちろん、技術的には文句なし。(無茶苦茶な表現ですが)春の日の昼寝時にかけるに相応しいアルバムでした(経験者 ^^;)。
唯一このアルバムで気になったのが、15の練習曲が世界初録音、7つの小品がこのヴァージョンによる初録音という表記。少なくとも前者は彦坂氏の録音(2000/10)が存在するのですが、、、
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Diapason d'Or を受賞した、イタリアの現代作曲家シェルシの作品集。私はこの方面はあまり詳しくないのですが、まずはたいへん楽しめました。
モンデルチは葬送音楽とキャに参加しています(スコアにアルト・サクソフォンの指定があるプラーナム第1にも参加しているかもしれませんが、はっきり聞き取れませんでした)。葬送音楽では、バス・サクソフォンをマウスピースなしで吹くという奏法が使われていて、いわゆるサクソフォンらしい響きはしません。一方、キャはもともとクラリネットと7つの楽器に書かれた作品ですが、ここではサクソフォンと9の楽器のヴァージョンで演奏されています。どちらの曲も、シェルシの曲としか言いようのない独特のテンションの高いサウンドが繰り広げられていて圧倒されます。
ちなみに、ソプラノ奏者として参加している平山美智子氏は、他にも多くのシェルシの作品の録音に参加しているスペシャリストで、このディスクでの演奏も一聴の価値があります。また、最後にシェルシと演奏者の対話が収録されています。
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ヒンデミットの室内楽曲集では、アルトサクソフォン(またはホルン)ソナタはホルンのヴァージョンで録音されていることが多いのですが、Artsレーベルのソナタ集はサクソフォンのヴァージョンで録音されており、しかもソリストはモンデルチ! 廉価盤でもあり、これは見つけたら「買い」でしょう(私は¥680円で購入しました。こんなに安くていいのかしら、、)。安いからといっても演奏はしっかりしています。ヒンデミットといえばもっとドライなユーモア漂う演奏が好きで、このアルバムに流れるアバウトな雰囲気(失礼!)はちょっと違和感を覚えましたが、これは個人的な趣味の問題でしょう。あ、モンデルチの演奏は、多彩な表現がそこかしこに感じられる意欲的で興味深い演奏であることを申し添えておきます。
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1949年生まれ、1997年に亡くなったイタリアの作曲家メンケリーニの作品集。私は現代音楽にあまり詳しくないのですが、メンケリーニはイタリアの現代音楽作曲家として重要な人物であったようで、48歳という早逝は残念な限り。このアルバムで聴く限り、どの作品も抽象性が高く、また演奏者に高度な技術と緊張感を要求している曲ばかりです。サクソフォン2本のための作品では、たとえば高音域でのグリッサンドや、音域の跳躍、スラップタンギングなどのオンパレード。演奏者の発する切り詰められた点描的な音世界の中で、何を感じるのかは聴き手側次第なのかもしれません。ただ、切迫感はあってもヒステリックな音はなく、どこか突き抜けた音楽になっているのが、モンデルチとマッシモ・マッツォーニをはじめとするイタリアの奏者たちの理解と共感かな、と感じました。