1964年生まれの、イタリアのサクソフォン奏者。ロッシーニ音楽院で、R.マリエロとF.モンデルチに師事し、1983年にディプロマの称号を得ます。その後フランスのボルドー音楽院でジャン=マリー・ロンデックスに師事しました。その間、ロンデックスの主催するアンサンブル・インターナショナル・ド・サクソフォンにも参加しました。帰国後は、イタリア国内でさまざまな賞を得て、現在はミラノのヴェルディ音楽院、ボジェロの芸術大学で教鞭をとりながら、ソロやオーケストラとの共演などの演奏活動を行なっています。。中でもスカラ座管弦楽団にはしばしば招かれ、今までにムーティ、チョン・ミュンフン、ジュリーニ、サヴァリッシュ、マゼール、アバド、ビシュコフといった指揮者の下で演奏しました。最近では、メータのスペイン公演に同行しています。また、アンサンブル活動にも積極的で、モンデルチやマッツォーニと組んだイタリア・サクソフォン・アンサンブルや、自身が教え子たちと結成したハロー・ミスター・サックスのメンバであるほか、ピアノのザンニーニとのデュオ活動はご紹介するCDでサウンドを確かめることができます。
またまた出ました、サックスによるピアソラ集。イタリアの怪しげなレーベルで、ジャケもなんだかいかがわしげ。ジャケ裏には演奏者2人の写真が載ってますが、どっちがどっちだかわからないぞー。演奏は、攻撃的で晦渋なピアソラなはずが、健全でなんだかやたら元気なピアソラになってしまってます。イタリア人らしい "うた" は感じられるのですが、ちょっと陽気過ぎるような、、たとえばドブレAの悲劇は、ピアソラのライヴがあまりにテンションが高く圧倒的な音楽だったのに比べると、なんだか別の曲に聴こえます。まあ、このように演奏者によってまったく違った印象になるのがピアソラの特徴でもあるのでしょうけどね(苦しい弁護だなぁ)。後半3曲はボーナス・トラックとしてギスモンティの作品が収録されてますが、カラテ KARATÊ って、空手のこと? 曲の雰囲気は、まったく空手っぽくないのですが。ああ、どうしてイタリアのCDって、こうもアヤシイの。。。
マルツィが結成したと思われる室内楽団による、ピアソラのトリビュートアルバム。曲によってマルツィ自身のサクソフォンをはじめ、ヴォーカル、ピアノ、はたまたシタールまでフィーチャされていますが、一部マイクのピックアップのせいか、オーバーブロー気味。演奏のテンションは高いのですが、ピアソラの痛々しいまでの孤独で自虐的とさえいえるようなテンションの高さとはちょっと異なる方向に向いているようで、、少々聴き疲れしてしました。
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新しいアルバムは、一転してフランスの正統派レパートリを集めた録音。とても誠実で真摯な演奏で、ピアソラ・アルバムでの印象を払拭しました。どの曲も技術的に破綻なく(これだけの曲を集めて破綻なく、というのは、当たり前のようでなかなかたいへんなことです)音楽そのものを楽しむことができます。録音のせいかフランス流の華やかさはありませんが、どの音域も音色が安定しており、イベールではアルティッシモをきちんと決めながらもけしてアクロバティックな面が強調されずに好感を持ちました。スカラムーシュやデザンクロなどでも、もっと派手な演奏を予想していたのですが、抑制されつつもドライヴ感を感じさせる演奏になっています。さらに願わくば、惹きつけられる「何か」がほしいところですが、これは今後の活動に期待したいと思います。イタリアのサクソフォン奏者の実力の高さを示すアルバムといえるでしょう。
なお、このアルバムはイタリアの Stradivalius レーベルから STR 33662 として再リリースされているようです。
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タイトルどおりサクソフォンとピアノのための新しい作品が集められていますが、冒頭の曲から、耳にやわらかい音楽が展開されていきます。和音やメロディこそはっきりしない個所もありますが、どことなく歌心にあふれている曲ばかりで、音色の丸さも手伝ってなかなか楽しめるアルバムでした。中でもアルバムタイトルにもなっているブリッツの多彩な響きのバランスや、まさに幾何学模様を見ている/聴いているような感覚に陥る秋の幾何学は楽しめました。技術的にも危ないところがなく、音符を誠実に音楽にしていく職人技に惚れ惚れ。マルツィの実力を伺うに足るアルバムといえるでしょう。
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イタリアのサクソフォンにありがちな、ゆるい楽天的な演奏と思っていると、1曲目からのあまりにパワフルな音楽にひっくり返りますよ!(それは私です。スミマセン。。) 早や弾き/吹きバトルあり、レントの部分はこれでもかと濃密、マジでキッタハッタしてます。火花散ってますよ。テクもすごいですけど、超マジですけど、でもやっぱり楽しい音楽なのがさらにすごいです。たしかに楽天的なスピリッツは根底に流れているようですが、こんな演奏聴いちゃうと、これまでの楽天的アバウトという印象は本当は計算づくの狂気を湛えた笑みだったのかも、なんて思っちゃいます。いや、恐るべし、イタリアのサクソフォン界、イタリアの伊達男たち。
チルドレンズ・ソングでは、インドのパーカッションであるタブラが加わっていて、また独特のいい雰囲気に仕上がっています。
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意外にも、マルツィがオーケストラと共演した最初のアルバム。典型的なフランス系のレパートリーを指揮するのは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽だの首席奏者を20年務めたシュレンベルガー氏。イタリア=ドイツのコンビで、響きの重心の低さやテンポの揺らし方がフランス風とはちょっと違うような気もしますが、それでも最近リリースされたCDの中ではもっともフランスらしい響きになっているかもしれません。(それだけこのような名協奏曲集的アルバムのリリースが少なくなっているということでもありますが。)マルツィの演奏はフラジオ(特殊奏法による超高)音域まで楽々吹きこなし、相変わらずテクニックの限界を感じさせません。ただ、さすがにシュレンベルガーの指揮相手に暴れっぷりは控えめのようで、その意味ではマルツィらしさが少なめともいえるでしょう。
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