サクソフォンの教育者として有名なヘムケは、パリ音楽院でプルミエ・プリを取り、1962年に教職の道に就き、1975年以来ノースウェスタン大学の教授職にあり、パリ音楽院やアムステルダムのスウェリンク音楽院などヨーロッパの大学の客員教授を務める一方、教則本なども数多く記しています。多くの優れた門下生を輩出しており、雲井雅人氏も弟子にあたります。一方、ソリストとしても幅広く活動しており、シカゴ交響楽団をはじめ、ミネソタ交響楽団、セントルイス交響楽団、ストックホルム・フィル、東京交響楽団など数多くの著名なオーケストラと共演しています。特に地元であるシカゴ交響楽団、小澤征爾の「展覧会の絵」、マルティノンの「アルルの女」「ボレロ」、ショルティの「ボレロ」などの録音には度々参加しています。
下記にご紹介するアルバム以外にも、LP時代に多くの録音を残していますが、現在では入手困難です。なお、2005年に以下「Simple Gifts」をリリースしましたが、もう1枚「The American Saxophonist」をリリースしているようです。なんとか入手したい。。
オルガンとの共演の録音。おそらく60歳は超えているヘムケ氏ですが、このCDを聴く限りではブレスコントロールをはじめ、セルマーの楽器を通して響くコントロールの効いた美しい音色はすばらしいとしか言いようがありません。曲は、時に壁画を思わせるようなオルガンの大音響に圧倒される箇所もありますが、全体としてはサクソフォンとオルガンによる散文詩とでもいいたい点描的な印象。ヘムケ氏はこれ見よがしな技術の誇張も虚飾もいっさいなく、丁寧かつ大胆に音楽の核心を磨き上げ、私たちにそっと届けてくれます。氏の、綺麗な年輪の重ね方をうかがわせるすばらしい録音です。
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吹奏楽の伴奏で協奏曲を吹いたものが収録されているCDをご紹介。フィニーの曲は難解な曲が多く、この曲も正直なところよくワカリマセン(苦笑)が、サクソフォンの卓越した機動力が駆使されており、ヘムケのソリストとしての実力が発揮されています。伴奏を担当するノースウェスタン大学も故人となったペインター氏の下ですばらしい演奏を展開しています。録音、技術とも、今となってはさらに優れた録音は可能でしょうが、これだけ密度の濃い吹奏楽演奏はなかなか聴くことができるものではありません。選曲も、なかなかマニアックですぞ。吹奏楽ファン向け推薦盤。
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スウェーデンの孤高のシンフォニスト、アラン・ペッテションの最後の交響曲、第16番。終始アルト・サクソフォンがソロをとり、実質的にサクソフォンの協奏曲では、とも思えてしまうこの曲ですが、とにかく曲が晦渋、わかりづらい、つかみどころがない、暗い(7番のほうはまだとっつきやすいですが、、、五十歩百歩です)。初演者によるこの録音は、その混沌さをそのまま骨太に鳴らしきっています。ヘムケのサクソフォンは、こんな漆黒の音楽世界の中で、一人逆風に向かって遠吠えしている狼ような印象すら受けます。すごいのは、サクソフォン1本でオーケストラと対等に、いやもしかしたらオーケストラよりも声高に主張している点。音量だけでなく、音楽の中身も凝縮しています。
なお、現在ではJ.E.ケリーのソロによる録音も入手可能です。ソロパートがかなり変更されており、聴き較べるのも一興です。