1969年リヴァプール生まれ。ギルドホール音楽院でハールに師事し、現在は同校の教授であるハラームは、1997年からロンドン・シンフォニエッタの首席奏者を務めています。以下にご紹介したアルバム以外では、師匠ハールの「Saxophone Songbook」やVirgin Classics の「Minimalist」と題したアルバムにも参加したり、リサイタルやBBCラジオへのレギュラー出演をこなしています。また、ジョン・ハール・バンドのメンバでもあり、ロンドン・サクソフォニックにもメンバとしてクレジットされています。
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Black Boxレーベルのクラシック・カタログの先頭を飾るのがこのアルバム。ジャケットには片目が大きく書かれていて、ぱっと見はポップスのアルバムかと思えますが、これはこのレーベル共通です。アルバムの中ではソナタの切れ味がすばらしいく、またヒース作曲の、アルバムタイトルになっているオン・ファイアやコルトレーンの2曲は現代的な響きはするものの、ジャズなどの影響も感じられて興味深く聴きました。インターフェレンスとバッキングスの2曲はシンセサイザーや電子音を伴奏にしていて、ユニークなサウンドに仕上がっています。どの曲でもハーラムは曲を吹きこなしており、技術的にはほぼ文句なし。強いていえば、音色の面でもう少し魅力がほしかったですが、これは録音のせいかしら?
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Black Boxレーベルからリリースされたアルバム。作曲者を見るとアルヴォ・ペルト、マイケル・ナイマン、ジョン・アダムス、そして デヴィッド・ボウイ&ブライアン・イーノ!!というクレジットが。。マイケル・ナイマン・バンドのメンバが演奏者に連ねているので、ナイマンに似たようなサウンドを想像しましたが、実際にはもう少し耳に優しく聴こえました。具体的には、ビートがきつくなく、響きも協和音がほとんどで、まるで環境音楽のようです。電気楽器や弦楽器の響きも心地よく、クラシックの範疇を超える、よい意味でのイージーリスニング的アルバムといえるでしょう。
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Black Boxレーベルからリリースされたアルバム。私が購入したのは、東京エムプラスによる日本語帯+BlackBoxサンプル・エンハンズドCD付きの特別仕様盤。曲目の中に戦場のメリークリスマスの中の1曲が含まれていることに目が行くことでしょう。いまやジャンルという無意味な枠を超えて、20世紀の音楽をここに総括するというハラームの、そして Black Box レーベルの姿勢がここに表れています。Black Box 社は、このCDかブックレットのら解説を廃止し、CDをパソコンにセットすると 同社のサイトにあるこのCDのページに接続できるというもの。ネタばらしになるのでこれ以上内容には触れませんが、同社のカタログの最初を飾ったのもハラームだったことを考えると、Black Box 社の彼に対する期待は非常に大きいのでしょう。。
演奏ですが、相変わらずの隙のないテクニックに、音を伸ばすときに後半でわずかにかかるヴィヴラートが魅惑的。デューク・クワルテットとの共演になるナイマンの曲のかもし出すビート感はと一抹の退屈さ(誉め言葉)は相変わらず。一方マリンバとの共演の、アルバムタイトルにもなっているフレームを聴いて、サクソフォンとこの楽器との相性の良さをあらためて感じました。もうちょっと攻撃的な演奏を聴きたいな、と思った頃にハードな妖精がガツンと響く。やられました。
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Calaレーベルからリリースされた、ロンドン響主席を中心とした奏者によるドビュッシーとサン=サーンスの管楽器を含んだ室内楽作品集(2枚組)。初録音作品もいくつか含まれており、中でもコーラングレのためのラプソディは聴きもの。これ、ピンときたかもしれませんが、サクソフォンのためのラプソディをコーラングレで演奏したもので、なんでもドビュッシーも意図しながら未完成に終わったものととか。ここではハールが手を加えた楽譜が演奏されており、なるほど、ドビュッシーの東洋趣味はたしかにコーラングレで演奏されたほうがピッタリくるように思いました。ハラームはサクソフォン版を演奏しており、CDの解説によればこれが彼のソロ初録音とのこと。通常聴き慣れた楽譜と一部異なる個所があり(ハールの編曲を使っています)若干違和感を感じるところもありますが、技術的には文句なく仕上がっています。他の曲も、フルートのウィリアム・ベネットをはじめ名手によるすばらしい演奏。もうちょっと茶目っ気も欲しかった気もしますが、これは路線の違いかな。そのせいか(それとも私が期待してしまったためか)ドビュッシーよりサン=サーンスの明快な音楽つくりの方が楽しめました。
プログラムもヴァラエティに富んでいて、特にサン=サーンスの管楽器のためのソナタ3曲がすべて聴けるのは重宝。フランス音楽の好きな方にはオススメのアルバム。
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廉価盤ながらユニークなラインナップを誇る、NAXOS レーベルからリリースされたナイマンの協奏曲集。蜜蜂が躍る場所はイギリスのサクソフォン吹きのお得意ナンバーのようで、ハールやマクリスタルも録音していますが、ハラームの演奏はこれらに比べると音色がちょっと硬く感じます(いや、これは単に録音のせいかもしれません)。湯浅氏指揮のアルスター管も、つややかさに欠けるなぁ。湯浅さん、がんばって! 併録のピアノ協奏曲は、映画「ピアノ・レッスン」の音楽を再構築して作られたもので、なるほど映画のワンシーンにでも使われそうな雰囲気がします。値段が \1,000円(税別)ですし、ナイマンが嫌いでない方は手を出してみてはいかがでしょう?
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ブルガリア出身で、現在イギリスで活動するマリンバ奏者ダニエラ・ガネヴァによる、日本のマリンバ曲を集めたアルバム。このアルバムを含め既に4枚のアルバムをリリースしており、またイギリス内外でマスタークラスを開講するなど、精力的に活動を展開しています。このアルバムは以前 Cala レーベルからリリースされていたデビュー盤で、レーベル移行し2005年に再発売されました。録音されている曲はどこかしら「和」のテイストの感じられる曲ですが、ガネヴァの演奏はあまりその点にはこだわらず、彼女のインターナショナルなセンスを基にした演奏になっています。日本的なコブシは入りませんが、もっと西洋的視点に貫かれています。たとえば桜の幻影は、作曲者自身の演奏を聴いたときは閉じた目に春霞にそよぐ岐阜の薄墨桜(うう、限りなくわかる人にしかわからない比喩ですみません)が浮かびあたったのに対して、ガネヴァの演奏はあくまで実体的、桜を四方から仔細に観察しているよう。ハラームが参加しているディヴェルティメントもその傾向で、ハラームの師匠ハールの演奏と共通するものを感じました。そういえば、ハールの演奏が収められているエヴェリン・グレニーのアルバムも、オール・ジャパン・アルバムだ、、。
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CDジャケットのダニエル・パールという人物、不勉強ながら私もこのアルバムを手にしてから初めて知ったのですが、2002年にパキスタンでイスラム原理主義者に誘拐され殺害されたユダヤ系アメリカ人ジャーナリスト。奥さんの手記をもとにブラッド・ピットが映画化した「マイティ・ハート」の名前なら知っている、という方も多いかもしれません。パールの父親からの委嘱で作曲されたのがエレジー・フォー・ダニエル・パール。悲痛さの漂う曲ですが、そのなかにとても力強い芯が感じられます。ソング・フォー・ダニエル・パールは、エレジーのテーマを使った曲で、映画のエンディングでも使われた曲。このほかにも、デイヴ・ヒースの曲のうち、メッセージ性の強い曲がこのアルバムに集められています。
オーケストラをバックにサイモン・ハーラムのソプラノ・サクソフォンが大活躍するモロッコ・ファンタジー、これ、カッコイイです。特にカスバとタイトルのある後半部は、ロックか民族音楽か?というほどビートが効いていて、聴いているうちに、熱い異国の地でひとり道に迷ってしまったような不思議な感覚に陥ってしまいそうです。ネイマはコルトレーンの名曲をトランペットとオルガンに編曲したもの。コルトレーンに対する傾倒・敬愛ぶりが、クールな響きの中から感じられます。ケルティックは以前Linnレーベルからリリースされていた音源と同一のようです。ロンドン・シンフォニエッタのリーダを務め、現代音楽も得意とするクリオ・グールドのヴァイオリンは、明快な、時に哀愁漂うスコットランド風の響き。実はヴァイオリンやフィドルのアマチュア奏者でもあったダニエル・パールへの追悼にふさわしい曲/演奏ではないでしょうか。
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ロンドン・シンフォニエッタのメンバーによる、コンテンポラリー作品のライヴ録音を集めた2枚組のアルバム。サブタイトルに Musicians & Machines とあるように、音響装置を使った作品がほとんどで、これを延々2時間近く聴くのはちょっとしんどいかも(苦笑)。しかし演奏はきわめてストレートで、音楽、というより音空間にさまよいこんでしまったような"トリップ感"を感じることはできるでしょう。サイモン・ハーラムは、スパイラルのソロと、練習曲第7番でアンサンブルのメンバーとして演奏しています。スパイラルでの全く隙のない=聴き手にとっては油断できない20分にもわたるソロ(とライヴ・エレクトロニクス)は、圧巻のひとこと。個人的には、若干ポップな要素があるヴァイオリン・フェーズや6つのマリンバ、打楽器の表現力の豊かさに驚かされるイオニゼーションの演奏が気に入りました。