浜松楽器博物館は、古今東西の様々な楽器を見ることができる国内唯一の楽器の博物館です。楽器という特性上、その音色を楽しめる工夫も行なわれていて、歴史的な楽器の音色を一流奏者の演奏でCDに収める企画を続けています。これまでにチェンバロ(演奏は中野振一郎氏)、ピアノフォルテ、クリストーフォリ・ピアノ、ワルターピアノ、プレイエル・ピアノ、、、などなどが録音されてきましたが、ついにサクソフォンの録音が実現しました。
アマゾンでこのCDをチェック! |
19世紀後半、サクソフォンの発明者であるアドルフ・サックスの製造によるソプラノ、アルト、テナー、バリトンそしてC管メロディの5種類の楽器の音色は、現代の楽器とはずいぶん趣が違い、少々くぐもった、どちらかといえば落ち着いた響きがします。19世紀後半から20世紀初頭までの曲が演奏されており、おそらく当時はこのような響きだったんでしょうね。4重奏、各楽器のソロをバランスよく愉しむことができますが、この演奏を聴くと、私たちが持っている輝かしい華やかな音色というのは、後天的なのかもしれないとすら感じてしまいます。特に1曲目の昔の歌では、タイトルどおりぬくもりのあるセピア色の風景を思いおこさせます。
大阪音楽大学の教職陣は、現在の楽器と構造や特性の違うじゃじゃ馬的(?)楽器を扱うのに苦労されているようですが、それでもそこから生み出される音楽は時代を超えた不思議な魅力に満ちています。すばらしい企画とそれを実現させた演奏者たちに敬意を表し、忘れてしまったサクソフォンの魅力のひとつを再発見させてくれたことに感謝したいと思います。
記載によると、ソプラノ:1860年、アルト:1859年、テナー:1859年、バリトン:1860年、メロディ:1855年頃の製作、そしてピアノは1874年エラール社製という、すべて19世紀の楽器を使用とのことです。