サクソフォンとクラリネットを操るガロドロは1912(1913?)年生まれ。ということはすでに90代の奏者、しかし2007年現在まだ現役で演奏活動しているようです。1927年にはじめてプロとして音楽で仕事をしてから既に80年。しかもクラシックからジャズ、映画音楽まで広い範囲をこなし、トスカニーニ指揮のNBC交響楽団ではクラリネットを担当、ソリストとしてバーンスタイン指揮NBC響との録音を残しています。また、1936年から65年までポール・ホワイトマン楽団(ガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルーを初演したことで有名ですね)のソリストとしても活躍、さらには映画「ゴッドファーザ2」ではストリートミュージシャンとして出演してしまったらしい。うーむ、おそるべし。
自主製作なのか?ガロドロ氏の実質的なベスト盤ともいえる内容。一部モノクロや、クラリネットによる演奏(ショパン、ブラームス)も含まれています。最初のコンチェルト・フォー・ダブルズですが、1楽章をアルト・サクソフォン、2楽章はバス・クラリネット、3楽章でクラリネットを吹き分けるという、まさに持ち替え奏者ならではの協奏曲。これをまた、ガロドロ氏はきっちり吹き分けていて、モノクロ特有の勢いのあるライヴ録音も手伝って、圧倒的な仕上がりになっています。難曲ヴァルス形式のカプリスは、フランス奏者風のエスプリとは無縁ですが、ジョークはわかってくれそうな?誠実・真面目、しかも堅苦しくない音楽。こういうスタイルもいいですね。ジャズ色の濃いスターダストやハーレム・ノクターンこそ真骨頂なのでしょうが、雰囲気を適度に漂わせながらも破目をはずしすぎず、全体に趣味のよさを感じさせる貫禄たっぷりの演奏を楽しむことができました。
このアルバムを聴き終えて、同じアメリカ生んだすばらしいオーボエ奏者であるジョン・デ・ランシー氏の演奏と、フレーズの揃え方などのスタイルがかなり似ていることに気づきました。同時代・職人気質のなせる業でしょうか、古きよきアメリカ(の音楽)って、こういうスタイルのことをいう、のかもしれません。
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1951年コロンビアに録音された「Saxophone Contrasts」と、1958年メリ・レコード?に録音された「For Your Listening Pleasure」の2枚のCD化。共演者の詳細は不明、一部同一曲の収録もありますが、ガロドロの超絶技巧ぶりは充分に伝わってきます。ホラ・スタッカートやジーグでのタンギングはみごと! さすがキング・オブ・サクソフォン&クラリネット・ダブル/トリプル・タンギングという賛辞も頷けます。ヴェニスの謝肉祭のカデンツァでは、目が回るような速いパッセージをつむじ風のごとくさらりと吹きこなしていて、唖然。なかでも黒い瞳のようなジャズ色の強い曲でも、しっかり軽快なノリで演奏してはいますが、クラシックをベースにした奏法には全く無理がありません。既に50年が経ったこれらの演奏は、我々リスナーの耳を圧倒しつづけています。
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グローフェといえばガーシュウィンの曲のオーケストレーションを手がけたことで有名ですが、なるほど、もともとジャズバンド編成の曲をたくさん書いていたのですね。しかし、シンフォニックな演奏を聴きなれているグランド・キャニオン(そもそもこの曲ってアメリカのシンフォニックなクラシック曲の代名詞じゃないですか)やミシシッピ組曲を、小編成、しかもサクソフォンやバンジョーなどが加わった編成で聴くと、どうも居心地が悪いような気がしてきます(笑。が、これがオリジナルだそうで。ガロドロのセレナーデは、タイトルどおりガロドロのために書かれた小曲で、なるほど氏の闊達なパフォーマンスを前提にした、オールドムービーのような上品な甘さを感じさせる作品です。さすがに90代のガロドロ氏、テクニックは全盛とはいきませんが、ツボを押さえた演奏はさすがとしか言いようがありません。この録音が初演に次ぐ2回目の演奏ということで、是非再演の機会があるといいですね。ブックレットに載っている指揮者と2人で映っている写真が、ちょっとコミカルないい表情してます。
このCDをリリースしている Bridge Record からは、1940年代にガロドロがNBC交響楽団をバックにクラリネットのソロをとっている録音もCD化されているようです。また、このハーモニー・アンサンブルには、アルバート・レグニが第一奏者として名前が載っています。